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君が、僕の光だ  作者: Ryu
2/2

第一話 小さな約束


「ねえねえ、りゅうくん! これ、つくったの!」


 


沙耶が両手を広げて見せたのは、折り紙で作った指輪だった。

キラキラの銀色。たぶん、お菓子の包み紙を切って貼ったもの。


 


「これね、けっこんゆびわだよ。おとうさんとおかあさんがしてたの、まねしたの」


 


「あ、じゃあ、沙耶もだれかとけっこんするの?」


 


「うん! りゅうくんと!」

沙耶はにっこり笑った。


 


ぽかんとする龍。

まだ“けっこん”の意味なんて、ちゃんとはわからない。

でも沙耶が笑ってると、なんだかうれしい。

だから、深く考えずに、うん、と頷いた。


 


「じゃあ、これ、あげる。やくそくのしるし!」


 


沙耶は自分の小さな指から、そっとその指輪を外して、龍の左手にはめた。

ちょっとだけサイズが大きくて、くるくる回った。

でも、龍はそのままにして、ずっと見つめていた。


 


「やくそくだよ、りゅうくん。おおきくなったら、けっこんするの」


「……うん。ぜったいする」


 


 


その日から、2人はいつも一緒だった。

お昼寝の時間は隣で寝て、朝の自由遊びは2人で絵本を読んで。

おままごとのときは、沙耶がママで、龍はパパだった。


 


ある日、お友達にからかわれても、沙耶は胸を張った。


 


「いいの、沙耶たちは、ほんとうにけっこんするもん」


 


そのときの龍の顔は、すこしだけ赤かったけど、

しっかりとうなずいていた。



ふたりだけの、ひみつのやくそく。

それは、まだ小さすぎて、まだ何も知らなかった頃の、

何よりもまっすぐな気持ちだった。




秋のある日、保育園では運動会が開かれていた。

園庭には色とりどりの万国旗が揺れ、お父さんお母さんたちの声援が響いている。


 


龍と沙耶は「かけっこ」に出ることになっていた。


 


「よーい……どん!」


 


スタートの笛が鳴ると、園児たちは一斉に走り出した。

龍は足が速く、いつも運動は得意だった。

沙耶はというと……ちょっとどんくさくて、いつも最後のほう。


 


この日も、沙耶は他の子たちに少し遅れをとっていた。

必死に腕を振って走っているけれど、なかなか追いつけない。


 


そんな中、一番を走っていた龍が、ゴール寸前で立ち止まった。


 


「……?」


先生たちや保護者がざわつく。


 


龍は後ろを振り返って、笑った。

そして、小さくて懸命に走る沙耶の姿を見つけると、まっすぐ彼女のもとへ駆け戻った。


 


「え……りゅうくん、なんで戻ってきたの!?」


「いっしょにゴールしよ?」


 


沙耶は目を丸くしていたけれど、すぐに顔をほころばせた。


 


龍はそっと沙耶の手を握る。

「せーのっ」で2人は並んで走り出し、笑顔のままゴールテープをくぐった。


 


順位なんて関係なかった。

2人にとっては、それが“いちばん”のゴールだった。


 


 


その日の夕方、龍のお母さんが写真を見せてくれた。

並んで手をつないで走る2人の写真。

笑って、目を細めて、うれしそうなその姿に、大人たちも思わず笑っていた。


 


「ほんとに、仲良しさんねぇ」

「うん、だって沙耶と結婚するもん」

龍がそう言うと、沙耶は照れながら、でも誇らしそうにうなずいた。


 


まっすぐで、まっすぐで、どこまでも純粋な気持ち。

それは誰の嘘も傷も知らない、小さな心の中に、確かに灯っていた。


 


──このときの龍には、

“永遠”がこのまま続くと、信じて疑わなかった。

素人なりに、頑張って描いていきます。

宜しくお願いします。

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