「ついに“テンペイ像”が建てられた件について」
呼ばれてない。説明もない。
でもついに、俺の銅像が建てられてしまいました。
――いや、ホントに誰が作ったんだよこれ。
「テンペイ様、ついに……この地に、聖なるお姿を……!」
村の広場。そこには今朝から、謎の幕で覆われた巨大な何かが立っていた。
で、号令とともに、村人たちがその布を一気に引っぺがす。
バサァッ!
現れたのは――俺だった。
いや正確には、俺“っぽい”何かだった。
ポーズはあぐらをかいて、悟りを開いた風な表情。
背中に謎の羽。手には杖。そして足元には……スライム。
「いや、これ完全に盛ってるやろ!!!」
どこから見ても“超越した何か”感バリバリのテンペイ像。
しかもスライムが神獣ポジションで足元に鎮座してる。芸が細かい。
「この御像には、神の加護が宿ると言われており……」
「本日より、祈願の対象として開放されます……!」
……何それ、こわっ。
「テンペイ様の功績を後世に伝えるため、村人総出で造りました!」
「素材は魔鉱石、風化しにくく、祈りが籠もる聖石でございます!」
無駄にクオリティ高いし、素材がガチやし。
しかも台座には謎の銘文が刻まれていた。
《存在そのものが祝福である》
《沈黙の中に、答えが宿る》
「……これ誰が考えたの?」
すると、村長が誇らしげに紹介してきた。
「この詩は、我が村の書記ポルンが記しました」
「テンペイ様の“沈黙の教え”を元に、詩文としてまとめさせていただきました!」
いやいやいや、俺何も教えてないから!
誰だよポルン!どこのタイミングでそんな仕事してたんだよ!
「……テンペイ様? ご感想を」
村長がにこにこしながら訊いてくる。
「いや、俺、何もしてないんですけど」
「おおお……やはり、“何もせずに与える存在”……!!」
言葉がバグって信仰が加速してる。
その日の夕方には、テンペイ像の前に賽銭箱(誰が作った)と、
花や供物(誰が置いた)が次々と積まれ、
子どもが「テンペイ様~」と像に話しかけ、
老婆が「また腰が楽になりました」などと感謝を告げる姿まで。
……もう、止まらない。
俺、ホントにただ転がり込んだだけなんですけど。
※こうして、俺の知らないところで
“宗教施設”がひとつ完成した。
次回 → 「テンペイ教、ついに“祝日”を制定する」
第7話「ついに“テンペイ像”が建てられた件について」
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
村の書記ポルン、勝手に神の詩を刻んでくれてありがとう。
でも俺、ホントに何も教えてないからな……!