「ご利益待ちの長蛇の列ができてた件」
呼ばれてない。説明もない。
でも今日は……俺の“物置”の前に長蛇の列ができてました。
いや、誰がこの信仰イベント開催したの!?
なんかもう、止められる気がしないんだけど……。
朝起きたら、物置の外に人が並んでいた。
いや、物置っていうか“ご聖域”であり、俺の神の座である場所なんだけど。
ただし本体(俺)は、相変わらず何もしていない。
なのに――
「本日、ご利益は先着三十名様までですー!」
「おひとり様、一願限定でお願いしますー!」
「テンペイ様に祈る際は、正座のうえ深呼吸三回でーす!」
誰が決めたそのルール!?
しかも整理券とか配ってるし、完全にテーマパーク。
俺が戸を開けた瞬間、前列の村人たちがざわっと動く。
「テンペイ様がお目覚めに……!」
「視線が合いました! これはもう今日中に願いが叶う……!」
え、俺まだ寝起きでまばたきしただけなんだけど!?
列の中には、近隣の村から来たと思われる見知らぬ人も混じっていた。
スライム(神獣)を連れてきて祈ってるやつもいる。
なにその**“ダブルご利益狙い”**みたいな戦法。
そして問題はその列の最後尾だった。
「テンペイ様! この膝の痛みをなんとか……」
「うちの畑が、どうか豊作になりますように!」
「婚活うまくいきますように……!」
もはや信仰というより、神頼みの総合窓口。
「……って、俺マジで何もしてねえんだけど?」
これで列に並んでる人全員が、たまたま運よく何かしら叶った日には――
もう完全に“万能神”認定される流れだろ、これ。
案の定、その日の夕方。
村に歓喜の声があふれていた。
「テンペイ様のご加護で、うちの牛が子を産みましたー!」
「井戸が少し深くなって水が冷たくなりましたー!」
「親戚がたまたま帰ってきましたー!」
それ偶然だし、あと最後のは完全に関係ないだろ。
※世界がどんどん盛ってくる。
俺の存在、もはや現象扱い。
次回 → 「ついに“テンペイ像”が建てられた件について」
第6話をお読みいただき、ありがとうございました!
今回は、テンペイ様の前に「ご利益待ちの行列」ができるという、
もはや宗教というよりテーマパーク的信仰フェーズに入りました。
ただの物置が神殿となり、並ぶ人たちは整理券を受け取り、
祈る前には深呼吸の儀式……もう完全に仕上がってます。
しかも“何もしていない”のに、勝手に願いが叶ったことにされる恐怖。
次回:「ついに“テンペイ像”が建てられた件について」
さらに盛られるテンペイ様の伝説、ぜひお楽しみに!
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