表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/56

「祠の脈動と怒りの波――牙角獣人たちの進軍」

牙角獣人たちが動き出す――。

その怒りは、夜の森を燃やし、王都を震わせる。


一方その頃、テンペイ様の胸に刻まれた紋章が、

再び淡く光を放ちはじめていた。


“祠の脈動”と“怒りの波”。

世界が静かに揺れはじめる中で、

テンペイ様は――ただ、微笑んでいた。


どうぞ、ゆっくりお楽しみください。


夜の森。


ドドドドド……ッ!


地を揺らす轟音が、森全体を震わせていた。

たいまつの炎が乱れ、闇にうごめく黒い影が幾重にも踊る。


「グルルルルル……ッ!」


「ガアアアアアアッ!」


牙角獣人がかくじゅうじんたちの咆哮が重なり合い、

夜空を切り裂いた。


その叫びは、ただの怒号ではない。


血に刻まれた誓い――戦歌のごとき響きだった。



「奪われた子らのために!」


「人間どもを――許すな!」


「血と牙で償わせろ!」


たいまつが燃え上がり、赤々とした炎が夜を覆う。



ドドドドド……ッ!



地鳴りのような足音は止まらず、

森を抜け、村と町を目指して進む。



怒りの波は、もはや止められなかった――。


その咆哮が森を震わせた瞬間、

遠く離れた“古い祠”が――静かに脈動した。


金色の光が空を切り裂き、

王都の魔術研究棟に置かれた水晶球が、

森と“共鳴”するかのように赤く染まっていく。


二つの場所が、ひとつの心臓のように脈打っていた。



老魔術師レメルは、水晶をじっと見つめていた。


「……あの祠が……告げたのか」



同じ頃。


王都の広場では、人々の声がざわめいていた。


「牙角獣人が……進軍を始めたぞ!」


「村や町が襲われる……!」


恐怖に駆られた住民たちが逃げ惑い、

兵士たちは慌ただしく武具を手に取っていた。


その様子を、広場の片隅で子どもたちが見つめていた。


不安そうに唇をかみしめ、目には涙を浮かべながら――。


「魔物さん……あんなことされたから……」


小さな声が震え、悲しげな視線が兵士たちへと注がれた。


その視線に気づいた若い兵士が、一瞬だけ手を止めた。

握った槍の先が、わずかに震える。



その報せは、すぐにレオネルの耳にも届いた。


「……テンペイ様、事態は深刻です。

牙角獣人たちが動き出しました」


レオネルの表情は険しい。

しかし、テンペイはのほほんとした声で返した。


「争いごとは……よくないよ〜」


ふわっとした笑顔。

だが、その胸に浮かぶ古代の紋章が――

ほんのりと光を帯びていた。


レオネルは目を細めた。


(……彼の本心は……?)



テンペイ自身も、胸の奥に小さな葛藤を抱えていた。


“怒り”と“優しさ”が揺れるその心。



祠の脈動と牙角獣人の怒り――


二つの波が、静かに、しかし確実に王都をのみ込み始めていた。


今回も読んでくださり、ありがとうございました。


牙角獣人の怒り、王都の混乱、

そしてテンペイ様の胸に光る古代の紋章――。


争いを望まぬテンペイ様の“優しさ”と、

世界を揺るがす“眷属の力”が、

少しずつ交わりはじめています。


次回、テンペイとスライム、そしてレオネルは――

「争いはいけない」という信念を胸に、

迫りくる“怒りの波”へと立ち向かいます。


どうぞ、次回もお楽しみに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ