「紅き共鳴――祠が告げる宿命」
王都に広がる噂。
「魔物被害が減った」と人々は囁き、テンペイ様はますます人気者に。
けれど――
子どもたちから届いた小さな声は、
魔物の“涙”と“痛み”を伝えていました。
そして遠く離れた祠は、確かに脈動を始めます。
ゆるやかに流れる日常の中で、
確実に動き出す“不穏な気配”。
どうぞ、ゆっくりお楽しみください。
夜の森。
たいまつの炎が揺れ、黒い影が幾重にも踊っていた。
「グルルルル……ッ!」
「ガアアアアアッ!」
牙角獣人たちの咆哮が、夜空を震わせる。
地を踏み鳴らす音はドドドと響き、
怒りの鼓動が森そのものを震わせていた。
「人間どもを――許すな!」
「奪われた子を取り戻せ!」
「血と牙で、償わせるまでだ!」
低く重なる怒声が、まるで地鳴りのように広がる。
たいまつの火は炎となり、燃え上がる憎悪が夜を覆った。
――その瞬間。
遠く離れた“古い祠”が、脈動し始めた。
森の奥で刻まれた鼓動は、空を越えて王都へと届き――
王都の魔術研究棟に置かれた水晶球が、まるで祠と共鳴するように赤く染まった。
二つの場所がひとつの心臓のように脈打ち、
紋章の光を鮮烈に浮かび上がらせていく。
「……この色……まさか……」
老魔術師レメルは杖を握りしめ、目を見開いた。
古き文献でしか語られてこなかった伝承――
古き時代に描かれた書物の紋章と同じ“形”。
――だが、その“色”は、誰も知らぬ異質なものだった。
「……この色……これほどの変化を、この目で見ることになるとは……」
老魔術師レメルは震える声で呟いた。
“祠が脈動し、水晶が色を変えるとき、眷属が目覚める”――。
幼き日に父と共に、一度だけ淡く揺らぐ水晶を見た。
だが、それは儚い兆しにすぎず、誰も深くは信じなかった。
しかし、今。
目の前の水晶は――
深紅に染まり、溢れる金色の光を四方へと放っていた。
その輝きは塔の石壁を突き抜け、
まるで王都全体を包み込むかのように脈打っている。
そして“あの紋章“を鮮烈に浮かび上がらせていた。
それは文献にも残されていない、“特別な色”。
「……あの祠が告げる明日。
ならば――この者こそ……」
夜風に呟きは溶けた。
しかし、胸に刻まれた確信は揺るがなかった。
――祠の眷属が、真に目覚めたのだ。
その脈動と光は、森と王都の境界すら越えて共鳴した。
同じ響きが王都の片隅に届き、
テンペイの胸元に、ふわりと古代語の紋章を浮かび上がらせる。
スライムが“ぷるんっ”と震え、怯えたように身を寄せた。
「え〜……なんか、くすぐったいな〜」
のほほんと呟くテンペイ。
その胸に刻まれた紋章――。
それは、人も魔も知らぬ祠の“真なる眷属”の証だった。
同じ時。
森の奥にひっそりと眠る“古い祠”もまた、
王都の水晶と共鳴するかのように心臓の鼓動を刻み、
空を切り裂く金色の閃光を天へと放った。
金色の閃光は夜空を貫き、
一瞬だけ、星々の瞬きをかき消す。
――それは、人も魔も知らぬ、
“最強の眷属”が目覚めを告げる光――
やがて世界を揺るがす宿命の幕開けだった。
今回も読んでくださり、ありがとうございました。
牙角獣人の怒りと、祠の脈動。
そしてテンペイ様の胸に刻まれた“紋章”。
物語は、ほんわかとした日常の裏で、
少しずつ“世界の深部”に触れはじめています。
次回、テンペイとスライム、そしてレオネルは――
「争いはいけない」という信念を胸に。
祠の脈動と牙角獣人の怒り。
二つの波が交わる時、世界は大きく揺らぎ始める。
その瞬間、テンペイたちは――どう動くのか。
どうぞ、次回もお楽しみに。




