表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/56

「“テンペイ様は、花を咲かせる”という噂が広まり始めた件」

ほんの少し、世界がざわめく。

テンペイ様の周囲に、変化の気配。


王都の奥深くで交わされる、ひそやかな対話と、

子どもたちの心の動き。


大切なものは、きっと、静かに広がっていく。



「花……?」


 


その子は、はにかむようにうつむいて、ぽつりと呟いた。


王都の庭園に咲いた、一輪の花を見つめながら。


 


「これ、前にも、見たことある気がするんだ」


 


テンペイは、ゆっくりとその隣に座った。


地面に手をつき、膝を折り、視線を花に合わせて。


 


「うん、そうだね。よく思い出してみて。

もしかしたら、大事なことだったかもしれない」


 


子どもは目を細めて、かすかにうなずいた。


記憶の奥のどこかで、何かがかすかに揺れている。


 


……雨の日、誰かの手のひら。

……小さな声で話してくれた、物語。


 


「忘れたくなかったのに、忘れちゃったのかな」


 


そう言ったその声は、どこか苦しげで、どこか優しかった。


テンペイは、少しだけ肩を寄せるようにして、言葉を重ねた。


 


「花ってね、風に吹かれても、踏まれても、

いつかまた咲こうとするんだ。

だからきっと、大丈夫」


 


その子は、花に触れないように手を伸ばし、

そっと、空をなぞった。


 


「あのときの空も……こんな色だった気がする」


 


庭園の空気は、静かに、やわらかく流れていた。


風に揺れる草の音。


鳥の羽ばたき。


 


テンペイは、ただそこにいた。


怒ることも、説くこともなく。


 


子どもは、小さく笑った。


ほんの一瞬でも、きっとそれは「種」になる。


 


やがて芽を出し、いつかまた咲く花のように――



「思い出すこと」って、

とてもあたたかくて、

とてもこわくて、

それでも、大切なことだと私は思っています。

テンペイ様は、言葉よりも空気で寄り添う人。


そのやさしさが、誰かの中で、ふっと息を吹き返す。


 


――そんな場面を描きたくて、書きました。


 


ここまで読んでくれて、ありがとうございます。


ブクマや評価、静かに“舞い上がるほど喜んでます”。

また次回も、どうぞよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ