「スライムがひれ伏した日」
呼ばれてない。説明もない。
でも今日は……スライムが、俺にひれ伏しました。
え、マジでなんで?
俺、ただ座ってただけなんだけど……?
それは、俺が神の座(=物置の床)で、ただ座っていた日のことだった。
外では今日も信仰儀式が行われ、太鼓は鳴り、鐘も鳴り、
村人たちは順番にお祈りを捧げ、なかには“ありがたい石”を捧げて帰る者まで現れ始めた。
俺が何もしていない間に、テンペイ教は加速していた。
そんな中。
ギィ……と扉が勝手に開いた。
いや、今誰か入ってきたのか? と思った瞬間――
ぷるんっ。
「……は?」
目の前にいたのは、青くて半透明で、ぷるぷるした……
そう、スライムだった。
「いやいやいやいや、なんでお前が……!?」
スライムはのたのたと這ってきて、俺の“神の座”の前でぴたりと止まる。
そして――
ぺたん。
地面に潰れるように伏せた。
しかもぷるぷる震えながら、まるで祈るような動作を繰り返している。
「ま、まさか……」
誰かの声が外から聞こえた。
「テンペイ様の神性が、ついに魔物にも通じたのか……!」
「神は種族を選ばない……まさに伝承通り!!」
あー、やっぱり盛られたーーーーーーー!!
スライムは俺の足元にぐにぐに寄ってきて、
身体の一部をぴとっと俺の足にくっつけた。
「ぎゃあ!?」
ひんやりしてビビったけど、スライムは穏やかに震えているだけ。
まるで「忠誠の証」を示しているようだった。
そして次の瞬間――
俺の頭の中に“謎の通知音”が響いた。
《魔物:スライムと魂の同調が成立しました》
「えっ、何それ、聞いてない!」
ステータスとかスキルとか、今まで一切出てこなかったのに、
急に通知くるの怖いから!
《ユニークスキル:魔物共鳴》
《説明:テンペイ教信仰対象による、無意識の契約効果》
いや、俺知らんし!そんなつもりないし!!
スライムが満足そうにぷるんと震え、俺の隣にぺたっと落ち着いた。
完全に“神の使い”ポジションで鎮座している。
村人たちはそれを見て――
「テンペイ様……今、祝福を与えられましたね……!」
「スライムは初の神獣だったのか……!!」
「さすがテンペイ様……選ばれし者……!!」
俺の足元にいるのは、ただのスライム。
でも、この瞬間から――“神獣スライム”としての伝説が始まった。
※バグってるのは俺じゃない、世界の方だ。
次回 → 「聖水(井戸水)が売れ始めた件について」
第4話をお読みいただき、ありがとうございました!
今回は、テンペイ教がついに“異種族”にまで広がってしまいました。
まさかのスライムが信者入り → 神獣扱いされる展開に。
本人が何もしていないのに、信仰と伝説だけがどんどん積み上がっていく……
まさにバグ存在 × 無自覚最強 × 世界が勝手に盛ってくるコメディの真骨頂です。
次回:「聖水(井戸水)が売れ始めた件について」
どうぞお楽しみに!
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