「テンペイ様、王都に着いちゃった?〜笑顔で入れる場所かな〜」
テンペイ様が、ついに――王都へ。
スライムと一緒に“おでかけ”するような気分で、
ふわっとした笑顔のまま大都市へ向かったテンペイ様。
でも、その存在は、
この世界の“仕組み”に少しずつ、波紋を広げはじめています。
今回は、王都でのお出迎えと、
ちょっぴり不思議な反応が始まるお話です。
「門ってさ〜、大きな口みたいでおもしろいね〜」
ふわっと笑うテンペイ様が、
笑顔のまま“世界の核心”へ近づいていく――
どうぞ、ゆっくり読んでいってください。
王都の外れ。石造りの門が、青空の下にそびえ立っていた。
テンペイは、スライムを抱っこしながら空を見上げる。
「わぁ〜……でっかいね〜。あれ、門っていうの〜?」
「そうです。王都の正門です」
ミリアが少し緊張した面持ちで答える。
その横で、カイが短く息を吐いた。
「さて……問題はここからだな」
勇者パーティーとテンペイ様が門に近づくと、
衛兵たちがすぐに警戒態勢を取った。
「入城者はIDの提示を――」
テンペイが、にこにこしながら手をあげる。
「ぼく、IDないよ〜。いつもどおり、なし〜」
衛兵たちの表情が一気に引き締まる。
「……未登録者ですか?」
カイが一歩前に出て、懐から封筒を取り出す。
「王都宛の正式招待状だ。確認してくれ」
衛兵が受け取り、中身を確認して顔をしかめたあと、奥へ走っていった。
しばらくして、騎士団の担当者が現れ、慌ただしく頭を下げる。
「ご案内いたします。テンペイ殿は“迎賓の館”へ」
「やった〜!お泊まりつきのおでかけだ〜!」
テンペイが笑顔でスライムと一緒に跳ねると、
門の兵士たちが思わず吹き出してしまう。
「……なんだ、妙に人懐っこい奴だな」
「いい意味で、王都っぽくないね……」
そのまま一行は、王都の中へと足を踏み入れた。
街の中はにぎやかだった。
石畳の道、立ち並ぶ屋台、空に響く鐘の音。
テンペイは目をきらきらさせてあたりを見回していた。
「わ〜、おまつりみたいだね〜」
市場で焼き果実を買い、スライムにもちょっとだけ味見させる。
道ばたで遊んでいた子どもたちが、スライムを見て集まってくる。
「なにこれ、かわいい〜!」「跳ねた!しゃべった?!」
「ふふ〜、ぷるん族代表のスライムだよ〜。よろしくね〜」
テンペイの周囲に、笑い声が広がっていく。
ミリアが、そんな光景を見ながらぽつり。
「……なんだか、みんな笑ってますね」
カイは小さくため息をついてつぶやいた。
「ここまでなじむ奴、いるか普通……」
その頃、王都の中心部――
高い塔にそびえる“魔術研究棟”の最上階で、
一つの水晶球が静かに赤く光り始めていた。
「……空白ID、王都に侵入。反応レベルCを超えました」
その声に応じて、奥から杖をついた老魔術師が現れる。
「動いたか。……数十年ぶりだな」
レメルと呼ばれるその老人は、過去に“空白ID”の記録を一度だけ見たことがあるという。
「王城の魔導装置が、まさか反応するとは。
これはただの“旅人”では済まないかもしれん」
一方その頃――
テンペイたちは迎賓の館へ案内されていた。
広く整った部屋。柔らかな寝具。ふかふかの絨毯。
だがテンペイは、部屋をぐるりと見渡して首をかしげた。
「広すぎるね〜。床でも、スライムと寝れたら十分なんだけど〜」
ミリアが苦笑しながら枕を整える。
夜になり、静けさの中。
テンペイは窓辺に座り、夜の王都を見下ろしていた。
その背中で、スライムが“ぷるんっ”と跳ねる。
「ん? どうしたの〜?」
スライムは、遠く王城の方角を見て揺れていた。
まるで――そこに、
“気づいた誰か”がいるかのように。
テンペイは、空を見上げながらつぶやいた。
「王都ってさ〜……ちょっとだけ、なつかしい気がするんだよね〜」
スライムは“ぷるんっ”と、小さく頷くように揺れた。
――テンペイという風が、
静かに、王都に届いた夜だった。
王都に入っても、テンペイ様はやっぱり――ふわっとしてました。
警戒されていたはずなのに、
気づけば街の子どもたちの人気者に。
でもその笑顔の裏で、
王都の“何か”が、確かに動き始めています。
光った水晶、魔導装置、動き出した老人。
テンペイ様がただ笑っているだけで、
この世界の仕組みが、少しずつ“ざわめき”始めているのかもしれません。
次回――
王都での“最初の問いかけ”が、テンペイ様に届きます。
「読んでくれてありがと〜!
ブクマも評価も、“ぷるんっ”と大よろこび〜」
次回予告:
「テンペイ様、お城でお話しちゃう?〜知らない人から、じーっと見られてる〜」




