「テンペイ様、王都へ招待される?〜旅の途中で、なにか見つかるかな〜」
空白IDを持つテンペイ様に、
ついに――王都からの“招待状”が届きました。
「おでかけだ〜」と笑顔で旅立つテンペイ様。
でも、その旅路には、
この世界に隠された“何か”が待っていたのです。
古びた石碑。
精霊のささやき。
光る古代文字。
テンペイ様が無意識のまま触れた“遺跡の記憶”が、
仲間たちの心に、静かに波紋を広げていきます。
今回も、癒しと不思議が交差する“ふわっと”旅物語。
どうぞゆっくり、お楽しみください。
ある朝のこと。
テンペイがいつものようにスライムと一緒にごろごろしていると、
村の入り口に立つ数人の騎士の姿が見えた。
「テンペイ様宛の、王都からの“招待状”をお持ちしました」
使者はそう言って、
立派な封筒をそっとテンペイに差し出した。
テンペイは、それを受け取って、しばらく見つめたあと――
「わぁ〜、おでかけの予感だね〜」
と、いつもの調子でにっこりと笑った。
その日のうちに、テンペイ様は出発の準備を整えた。
スライムも背中のポシェットに“ぷるんっ”とおさまって、やる気まんまん。
ミリアは不安そうにテンペイの隣を歩き、
リューシャとシエラ、そしてカイが護衛として同行する形で、王都へ向かう旅が始まった。
道中は、とても穏やかだった。
テンペイ様は道端の花に話しかけたり、
小鳥と並んで歩いたり、スライムと草に寝転がって空を見たり――
「ふぁ〜、この雲……ひつじに見えるね〜」
カイはその様子を見て、
「こいつ、本当に連れてっていいのか……?」と小声でつぶやく。
だが、そのあとリューシャがふと立ち止まった。
「……ここの遺跡、地図に載ってない。古い祠……?」
山道の途中、ぽつんと残された石碑のような建物。
何の装飾もない、ただの石の塊――
……のはずだった。
テンペイが、その前を通り過ぎようとしたとき。
風が、“ふわっ”と揺れた。
――誰にも聞こえないはずの“声”が、テンペイにだけ届く。
(……ようこそ、還る者よ)
テンペイは、きょろきょろとあたりを見回した。
「ん〜? 今、誰か呼んだ〜?」
誰も返事をしない。
だがテンペイは、石碑に引き寄せられるように近づき、
そっと、手をかざした。
その瞬間――
古びた石碑の表面が、やわらかく発光した。
ぼんやりと浮かぶ古代文字。
だが誰にも読めないはずのそれが、まるでテンペイにだけ語りかけてくるようだった。
《世界意思:断片同調》
《記録領域:一時解放》
光はすぐに消えた。
テンペイは「うわ〜、なんかピカッてした〜」と笑って、スライムに話しかけた。
スライムも“ぷるんっ”と興奮気味に跳ねる。
ミリアが恐る恐る聞いた。
「テンペイさん……あれ、読めたんですか?」
テンペイは首をかしげる。
「ん〜? なにか書いてあったの〜?」
シエラが険しい顔で、石碑を調べながらつぶやいた。
「読めない……私にも、鑑定魔法にも反応しない。
でも、彼が触れた瞬間だけ――文字が浮かんだ……」
カイは腕を組み、黙ってテンペイの背中を見つめていた。
「お前、やっぱり……ただの変な奴じゃねぇな」
テンペイは笑顔で振り返る。
「ありがと〜。
でも、ぼくは変じゃないと思うんだけどな〜」
リューシャは静かに心の中でつぶやいた。
(……彼が反応したのは、古代精霊文明の石碑。
普通の人間なら、存在にすら気づけないはず……)
やがて一行は再び歩き出す。
王都まで、もうすぐ。
テンペイは、街の輪郭が見えたそのとき――
ふと、ぽつりとつぶやいた。
「……ここって、なんか……ちょっと、なつかしい気がするんだよね〜」
スライムが、“ぷるんっ”と揺れて応える。
誰にも気づかれないまま、
“何か”が、確かに動き出していた。
「テンペイ様、王都へ招待される?〜旅の途中で、なにか見つかるかな〜」
お楽しみいただけましたでしょうか?
王都へ向かう途中、
テンペイ様が見せたのは――
ただのんびり屋ではない、
世界の“深い部分”にふれるような、ふしぎな一面でした。
彼が手をかざすだけで、光る石碑。
誰にも読めないはずの古代文字が、一瞬だけ語りかける。
でもテンペイは、それでも変わらず、
ふわっと笑って、スライムと遊んでいるだけ。
だからこそ、勇者たちは“気づき始めた”のです。
テンペイは――
何かを“持っている”者。
そしてきっと、
“選ばれている”存在なのだと。
次回、テンペイ様はいよいよ――王都へ。
常識と秩序の中で、
彼の“ふわっ”とした存在は、どう受け止められるのか。
次回もどうぞお楽しみに!
「読んでくれてありがとう〜!
ブクマも評価も、“ぷるんっ”と大よろこび〜!」




