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「テンペイ様、勇者パーティーに疑われる?〜IDがないって、やっぱり変?〜」

テンペイ様の“ふわっ”とした日常に、

ついに異変が忍び寄る――。


「IDが存在しない」という

世界の“異常”に気づいた者たちが、

少しずつ動き出します。


でもテンペイ様は、

いつものようにのんびりと……?


そんな中、勇者一行の“あの人物”が、

テンペイ様に接触しようとしていて――?


森の奥で、スライムと遊んでいたテンペイは、

どこか空の向こうを見上げていた。


 


「今日も、いい天気だね〜」


 


スライムが“ぷるんっ”と跳ねて同意する。


 


そこへ、数人の騎士たちが姿を現した。


 


「テンペイ様……ですね?」


 


「うん、こんにちは〜。ぼくになにか〜?」


 


騎士たちは戸惑いながらも、手にした書類を広げた。


 


「……申し訳ありません。

身分確認のため、IDの提示をお願いできますか?」


 


テンペイは、きょとんとした顔をする。


 


「ID? あー、それって……なかったんだよね〜」


 


騎士たちが顔を見合わせ、空気がぴりりと張り詰める。


 


「確認しますが……本当に“未登録”なんですね?」


 


「うん。そうだった気がするよ〜。

この前も、ミリアちゃんに言われたし〜」


 


「ミリア……あの僧侶ですか?」


 


騎士の一人がつぶやき、なにやら記録を取る。


 


(……やっぱり、勇者パーティーからの報告だ)


 


「テンペイ様。

現在、未登録IDの存在は王都でも問題視されています。

一度、調査官による聴取を受けていただきたい」


 


「えー、やだな〜。めんどくさそうだよ〜」


 


騎士たちは一瞬、言葉を失う。


 


だが、テンペイの表情はおだやかで、どこまでも自然体だった。


 


「でも……それで、みんなが安心するなら、

少しくらい話してもいいかな〜」


 


その言葉に、騎士たちは一瞬だけ表情を緩めた。


 


「では、後日あらためてご連絡いたします。

どうか、そのままお待ちください」


 


テンペイは“ふわっ”と笑った。


 


「うん、ここにいるから〜。

スライムと遊びながら、待ってるね〜」


 


騎士たちは去っていった。

森の静けさが戻る中、テンペイはぽつりとつぶやく。


 


「IDがないって、そんなにおかしいのかな〜?」


 


スライムが“ぷるんっ”と跳ねて、草の上を転がった。


 


「まぁ、いっか〜。今日もスライムはごきげんだし〜」


 


テンペイの笑顔は、少しだけ――

いつもより遠くを見ていた。





それから数日後――


 


森のはずれにある、テンペイが住む小さな村に、

ふたたび足音が響いた。


 


先頭に立つ金髪の青年が、ちらりとミリアを振り返る。


 


「……この先にいる“未登録者”、あのときの奴なんだな?」


 


ミリアがうなずく。


 


「はい。テンペイさん、です」


 


その名前を聞いたカイは、眉をひそめた。


 


「テンペイ……そういやそんな名、聞いた気もするな」


 


そして、一行は村の広場へと現れる。


 


テンペイは、スライムの横でごろりと寝そべったまま、のんびりと手を振った。


 


「こんにちは〜。

またおさんぽ〜?」


 


するとカイが、やや怒気を含んだ声で言い放つ。


 


「てめぇがテンペイってやつか……!」


 


テンペイは、のんびりと体を起こす。



 


「うん、たぶんそうだよ〜。

よく言われる〜」




 


「……ふざけてんのか?」


 


横にいたローブの少女――魔法使いのシエラが、前に出た。


 


「IDの提示をお願いします。

あなたの“存在情報”に、重大な異常が確認されています」


 


「ないよ〜」


 


テンペイが笑顔で答えると、スライムが“ぷるんっ”と跳ねて同意した。


 


シエラは小さくため息をつき、後ろを振り返る。


 


「鑑定士、お願いします」


 


控えていた鑑定士が、一歩前へ出た。


 


「では、対象の存在を視認……解析開始」


 


彼が手をかざすと、テンペイの全身が淡く光る。


 


が――その直後、鑑定士の顔が強張った。


 


「……ッ!?」


 


「ど、どうした!?」とカイが叫ぶ。


 


鑑定士は、言葉を詰まらせながら呟く。


 


「ス、ステータス、ゼロ……いえ、正確には――

“読み取れません”。まるで空気のような……」


 


村に重たい空気が流れた。


 


カイは、顔を真っ赤にして吠える。


 


「ふざけんな!

てめぇ、魔王軍のスパイか!?」


 


テンペイは、まったく動じることなく、首をかしげた。


 


「え〜……ぼく、そんな“ぐん”とか、知らないな〜」


 


カイが剣に手をかけようとした、そのとき――


 


「待って!」


 


前に出たのはミリアだった。


 


「テンペイさんは、そんな人じゃありません!」


 


村人たちも、次々と集まり始める。


 


「テンペイ様は、毎日スライムと遊んで、

子どもたちにごはんを分けてくれる、やさしいお方です!」


 


「争いなんて、一度も見たことない!」


 


カイが睨みつける。


 


「だが、“空白ID”なんて、

普通じゃねぇんだよ!」


 


テンペイは、ふんわりと笑う。


 


「ぼく、普通じゃないのかもね〜」


 


シエラが冷静に言葉を挟む。


 


「記録されていない存在は、

この世界の“常識”を根本から揺るがす」


 


その言葉に、ミリアの表情が曇った。


 


(……テンペイさんは、たしかにおかしい。

でも、それでも……この人は――)


 


テンペイがやさしく笑う。


 


「……役に立てることがあれば、言ってね〜。

怒られちゃうのは苦手だけど、話すのは好きだから〜」


 


その言葉に、誰かがふっと笑った。


 


それは、パーティーの一番後ろにいた賢者の少女――リューシャだった。


 


彼女は、テンペイの後ろ姿をじっと見つめていた。


 


(……読み取れない。

でも“なにもない”とは、思えない)


 


小さく、彼女は心の中でつぶやいた。


 


「この人……“何か”を隠してるわけじゃない。

“何か”が、欠けてるだけ……?」


 


テンペイの笑顔は、変わらず穏やかだった。


 


そして、スライムが“ぷるんっ”と、

いつものように跳ねていた。



……けれどその時、森の奥――

誰にも気づかれない場所で、

“別の何か”が、静かに目を開いた。


 


テンペイという“空白の存在”を巡り、

世界は少しずつ、動き始めていた。



今回もお読みいただき、ありがとうございました。


 


第33話は――

「テンペイ様、疑いの目にさらされる?

〜IDがないって、やっぱりへん?〜」 をテーマにお届けしました。


 


テンペイ様の“存在”が、

ついに世界の「枠組み」に触れ始めます。


 


ただのんびりと笑っているように見えるその背中に、

少しずつ――けれど確かに、

重たい空気が忍び寄ってきました。


 


それでもテンペイ様は、変わらず、

ふわっと自然体で、優しくそこにいる。


 


怒らず、争わず、疑いさえも笑顔で受け止めるテンペイ様に、

人々は戸惑い、そして、少しだけ心を動かされていきます。


 


でも、それだけでは終わらない。

この“空白”の存在が、

今、世界そのものに問われようとしています。


 


――次回、ついに“王都”が動き出す。


テンペイ様は、笑顔のまま、

その渦の中心へと踏み出すことになります。


 


「次回も、ぜひ読みにきてね〜。

ブクマや評価も、“ぷるんっ”と大よろこび〜!」


 


次回――

『テンペイ様、勇者に呼び出される?

〜笑顔のままで話せるかな〜』


どうぞ、お楽しみに!


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