「俺の部屋が神殿扱いされてる件について」
呼ばれてない。説明もない。
でも異世界では、なぜか俺の部屋が神殿扱いされてました。
……え、物置なんだけど?
村人に囲まれ、神の子扱いされて、村長には土下座された。
そして案内されたのが、村の一番高い丘に建ってるボロい木造の小屋。
「こちらが、テンペイ様のご聖域でございます……!」
聖域、とは。
扉はギシギシ鳴るし、窓はないし、屋根からは葉っぱが生えてる。
どう見ても昔は物置だったろ……これ。
でも村人たちは涙を浮かべながら神妙な顔で言う。
「この聖域の空間だけは、いつも風が穏やかで……!」
「草木が枯れず、鳥が集い、癒しが溢れる……!」
いやそれたぶん、単に日当たりがいいからじゃない?
部屋の中に案内されると、床の真ん中に畳一枚分くらいの布が敷かれていて、
その上に座れと勧められる。俺は静かに座った。
……たぶん、ここが“神の座”ってやつなんだろう。
すぐに、どこからか太鼓がドンドコ鳴り始めた。
窓もないのに、村人が順番に外で祈り始めてる声が聞こえてくる。
「テンペイ様、どうか、我らにご加護を……!」
「テンペイ様、あの、風の強い日も、雨が降った日も……我々は信じておりました……!」
外ではもう信仰儀式フェス状態。なんか鐘も鳴ってる。
完全にテンペイ教の開祖として崇められてるんだが……。
「……すみません、俺、ただの迷子なんですけど?」
そうつぶやいたけど、誰にも聞こえるはずもなく。
今この瞬間も、村人たちは俺の部屋(=物置)を見上げて、
心の中で何かしらの奇跡を受け取っているらしい。
俺が何もしていないことで、信仰が深まっていく。
※沈黙は金、バグは神。俺のせいじゃないけど、世界が盛ってくる。
次回 → 「スライムがひれ伏した日」
第3話をお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、いよいよ俺の部屋(という名の物置)が
「ごせいいき」として崇められてしまう回でした。
誰も説明してくれないけど、村人たちは勝手に盛り上がり、
俺は黙って座ってるだけで信仰を集めていくという不思議展開に。
「沈黙は金、バグは神」──そんな気配がしてきました。
次回:「スライムがひれ伏した日」
お楽しみに!
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