「テンペイ様、春を待つ?〜ふわっと咲く日を楽しみに〜」
「テンペイ様、春を待つ?
〜ふわっと咲く日を楽しみに〜」
テンペイ村に、春の気配が近づいてきました。
けれど、花のつぼみはまだ固くて、子どもたちは心配顔。
「咲かない花」に、テンペイはどんな言葉を贈るのでしょうか。
今日もスライムと一緒に、ふわっとやさしい時間を――。
テンペイは、畑の隅でスライムと一緒に腰を下ろしていた。
目の前には、小さな花のつぼみが並んでいる。
「ね〜、スライム。まだ咲かなくても……つぼみって、かわいいよね〜」
スライムが“ぷるん”と優しく跳ねた。
そのとき、子どもたちが駆けてきた。
「テンペイ様〜!」
「これ、おまじないの水あげてもいいかな?」
「早く咲いてほしいんだ……」
テンペイは、つぼみを眺めながら、にこっと笑った。
「おまじないは、やさしい気持ちだね〜」
「でもね、咲かないからって、わるいわけじゃないんだよ〜」
子どもたちは、ちょっと困った顔で言った。
「でも……咲かないと、なんか寂しいんだもん」
テンペイは、スライムをなでながら答えた。
「うんうん、わかるよ〜。
でもね、咲かないときって、“咲く準備”してるだけかも〜」
「つぼみのままでも、“ちゃんとここにいる”って、それだけですごいんだよ〜」
子どもたちは、つぼみを見つめた。
「……そっか。咲かなくても、がんばってるんだね」
「うん。だから“ありがとう”って言ってあげよう〜」
みんなで声をそろえて言った。
「咲かなくても、ありがとう!」
スライムが、うれしそうに“ぷるんっ”と跳ねた。
その光景に、テンペイはほっと息をついた。
「……やさしい空気だねぇ〜」
* * *
夜。
テンペイは焚き火のそばで空を見上げていた。
「ぼくも……つぼみみたいなもんだな〜」
「ずっと咲かないままでも、なんか、それでいいや〜」
スライムがそっと寄り添って、体をあずけた。
テンペイは、やわらかく笑った。
空は今日もふわっと、やさしく広がっていた。
お読みいただき、ありがとうございました。
今回は「咲かない花も、そのままでいい」というお話でした。
人も花も、咲くタイミングはみんな違う。
でも、つぼみのままでも、そこにあるだけで十分すてきなんだと思います。
テンペイは変わりません。
焦らず、無理せず、ただそばにいるだけ。
その姿が、読んでくださるあなたにも、ちいさなやさしさを届けられていたらうれしいです。
「今日もありがとう〜。高評価もブクマも、“ぷるんっ”てよろこんじゃうよ〜」
もし、次回も楽しみにしてくださるなら……
「そ〜っとでいいから。“ふわっ”と、そして“ぷるんっ”とブクマしてくれたら……すっごくしあわせだな〜」
次回は、「テンペイ様、旅の途中で雨宿り?〜ひと休みも悪くない〜」。
のんびり屋根の下で過ごす、ちいさなひとときのお話です。
次回も、どうぞお楽しみに!




