「テンペイ様、迷子をひろう?〜よりそうという奇跡〜」
テンペイが村の外れで草花を眺めていた、ある春の日。
草むらからひょっこり現れたのは、一人の小さな女の子でした。
言葉少なで、不安げな少女。
テンペイは彼女をどう迎え、何を伝えるのでしょうか。
スライムと一緒に、今日も“ぷるん”とやさしく――。
テンペイは、村のはずれでスライムと一緒に草花を眺めていた。
春の風がふわりと吹き、スライムが気持ちよさそうにぷるんと跳ねる。
「ね〜、スライム。今日の風、やわらかいねぇ」
そんな中、草むらがガサガサと揺れた。
「あれ?」
ひょこっと顔を出したのは、ひとりの小さな女の子だった。
7歳くらい。服は少し汚れていて、表情は不安そうだった。
「こんにちは〜。……迷子?」
テンペイが声をかけると、少女は無言のまま、彼の服の裾をきゅっと掴んだ。
スライムが、彼女の足元で優しく“ぷるん”と跳ねる。
すると――少女は、ほんの少しだけ笑った。
* * *
テンペイはそのまま少女を連れて村に戻った。
「誰か、この子に心当たりないかな〜?」
けれど、村の誰も少女のことを知らなかった。
村人のひとりが言った。
「昨日、旅の一団がこのあたりを通って行ったよ。たぶん、その子の家族かも」
少女は依然として口数が少なかったが、
スライムをなでる手は、だんだんと安心したように動いていた。
夜になり、テンペイと少女は焚き火を囲んでいた。
少女はぽつりとつぶやく。
「……ここ、やさしい。やさしいの、はじめてかも」
テンペイは、焚き火の火を見つめながら言った。
「そうだね〜。帰れるのが一番だけどさ。
“帰れないときに、安心して座れる場所”があったら、それってけっこう奇跡じゃない?」
少女はテンペイの肩に頭をちょこんと乗せた。
スライムも隣で、ぴたっとくっついていた。
* * *
翌朝。
旅人の一団が村に立ち寄った。
少女を見た母親が、泣きながら彼女を抱きしめた。
「ごめんね、ごめんね……!」
テンペイは少し離れて、その様子を見ていた。
母親がテンペイのもとに駆け寄って、頭を下げる。
「あなたが……娘を? あの、どこかの神様ですか?」
テンペイは、のんびり笑った。
「ん〜、たまたま、そこに“ふわっ”といた人〜」
スライムが、少女の足元でやさしく跳ねた。
少女は振り返って、テンペイに笑顔を向けた。
テンペイは空を見上げる。
今日の空も、ちゃんと“ふわっと”していた。
お読みいただき、ありがとうございました。
今回は、「一時の居場所が持つ奇跡」と「そばにいるということの意味」を描きました。
テンペイは何かを“解決”するわけではありません。
でも彼のそばには、“安心して座っていられる空気”があります。
迷って、泣いて、それでもまた歩き出せる。
そんな小さな場所を、テンペイはふわっと差し出すのです。
次回は、「テンペイ村に“試練”を持ち込む少年」が現れます。
「がんばらなきゃ、意味がないんだ!」
――そう言い張る少年に、テンペイは何を返すのでしょうか?
「がんばらなくても、今日が“ちゃんとある”って、すごいことだよ」
次回も、どうぞお楽しみに。




