「村長、初対面で土下座するの巻」
説明されなかった男、異世界での初対面イベントです。
――いきなり村長が土下座してきました。
いや、俺まだ何もしてないんだけど?
とりあえず、何が起きてるのか分からない。
でも、分かってることもある。
――俺、なんかやばい立ち位置に立たされてる。
村人っぽい人たちに囲まれて、完全に「神の子」扱いされている俺。
誰かが言った「空白の英雄」って単語、たぶんあれが引き金だった。
知らないあいだに、設定が盛られていくスピード感が異常。
「おお……神の子様……」
草をかき分けて出てきたのは、ヒゲもじゃのお爺さん。
見た目で分かる。こいつ、たぶん村長。
その村長が、俺を見るなりいきなり――
「ははああああああああっ!!」
地面に額をガンッて打ちつける勢いで、土下座した。
「このような辺境の地にご降臨くださり、誠にありがとうございます!
どうか、この愚かな我らにも、慈悲と導きを……!」
まてまてまてまて。
俺、何ひとつ降臨してないし、慈悲も導きも知らんし。
むしろ導かれたいのはこっちなんだが?
周囲の村人たちも次々にひざをついて拝みはじめる。
中には感極まって泣いてる人もいる。もう手遅れ感がすごい。
「“説明されなかった者は、上位存在の証”」
「“名も与えられぬ存在こそ、世界の根幹”」
――どこの誰だよ、その意味深な伝承考えたの。
「お名前を……我らに、お名前をいただけますか……?」
ついに来た。自己紹介タイム。
でも俺、名乗ったところでどうせ盛られる。
だったら最初からブレないやつでいこう。
「……俺は、テンペイ。」
「て……テンペイ様……!!」
「天平!? 天命!? 天の命を受けし者ッ!!」
はい、やっぱり盛られたー!!!
※こうして俺は、知らないうちに“神のバグ”として崇められながら、
この世界を勝手に進行させていくことになる。
次回 → 「俺の部屋が神殿扱いされてる件について」
第2話をお読みいただき、ありがとうございました。
「呼ばれてないのに異世界にいる男」が、
いきなり“神の子”扱いされるという流れですが、
今回はさらに初対面の村長がフル土下座してくるという、
設定盛られすぎ展開になってきました。
この作品は、主人公が無自覚のまま世界の中心にされていく
“誤解系・バグ転移ファンタジー”として展開していきます。
次回:「俺の部屋が神殿扱いされてる件について」
お楽しみに。
引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。
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