「目覚めたら、説明なかった」
召喚されてないのに、異世界にいました。
「勇者」じゃない。「選ばれし者」でもない。
ただのバグ転移者(自称)です。
でもなぜか、世界が俺を放っておいてくれない――
無自覚最強 × 誤解 × バグ補正、ゆるっと開幕!
――目が覚めたら、草の上だった。
空は青くて広くて、風は爽やかで。なんか、めちゃくちゃ異世界っぽい。
でも、何かが足りない。
説明が、ない。
俺の目の前に天使もいなければ、女神もいない。
よくある「異世界へようこそ!」的なアナウンスも皆無。
お決まりの“謎のステータス画面”も出てこない。
いや、そもそも俺、呼ばれた覚えないんだけど?
……なのに、なぜか最初から異世界にいる。
ポケットをまさぐってみると、スマホも財布もない。
靴だけ、履いてる。あと、地味にシャツが部屋着だった。
異世界召喚ってもっとこう、イベント感あるだろ普通。
少なくとも、「あれ、俺いつ来たの?」って始まりは違うと思う。
とりあえず立ち上がって、周囲を見回す。
見渡す限りの草原、森、遠くに見える城っぽいシルエット――
……うん、ファンタジー世界確定だな。
俺は深くため息をついた。
「……で、誰が俺に説明してくれるんですか?」
その瞬間、草むらの奥から村人らしき男が走ってきた。
「いたぞーっ! 神の子が降臨されたぞーーっ!!」
いや、誰だよ俺。
今のを“俺の登場シーン”として扱われるの、ちょっと無理あるんだけど?
気づけば周囲には人だかりができていて、
次々と俺に向かって手を合わせたり、拝んだりし始めた。
「……神の加護の気配がする」
「この地に現れると伝えられていた、“空白の英雄”では……!?」
まてまてまて。
俺、本当に何にもしてない。いやマジで。
でも、このとき俺はまだ知らなかった。
この世界において、“説明されない存在”は――
神のミスか、運命の意思か。
どちらにせよ、崇拝の対象になるらしい。
次回 → 「村長、初対面で土下座するの巻」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
第1話では「呼ばれてないのに異世界にいた男」の
はじまりの一歩をお届けしました。
説明がない。ステータスもない。
でもなぜか、世界が勝手に盛り上がってくる。
そんな“誤解され系・無自覚最強”コメディとして、
笑って読める物語を目指しています。
次回:「村長、初対面で土下座するの巻」
よければ引き続きお付き合いください!
※感想・ブクマ・評価なども励みになります。