最終話 再び冒険へ
デイジーは泣き止むと、記憶の女神に訊ねました。
「この城に私を戻して下さったのは、人食い竜であることを思い出したゴードンに食べられないようにするためだったんですね?」
「その通りです。あなたを死なせるわけにも、ゴードンを悲しませるわけにも行きませんでしたから」
記憶の女神がうなずきました。
「でもゴードンは、私以外の人を食べてしまったことを思い出してしまったのなら」
「優しいゴードンは、とても悲しんでいました」
デイジーも悲しくなってしまいました。
「あの、人食い竜であることをもう一度忘れさせてあげることはできないのでしょうか?」
「記憶の箱を閉じればできますよ。私もゴードンにそうしましょうと提案しました。でもゴードンは、大切なことを忘れたくないからと言って拒否しました」
「大切なこと?」
「友達になったあなたのことだけは、どうしても忘れたくないのだと」
デイジーの頬を、再び涙が流れ落ちました。
「ゴードンは、今どうしているのですか?」
「人食い竜でなくなる方法を探して、冒険の旅に出ました」
「冒険の旅に?」
「人食い竜でなくなることができれば、友達のデイジーに会い行けるからと言って」
記憶の女神がお城を後にしたときには、デイジーにある決意が芽生えていました。
自分も友達のゴードンに会うための冒険の旅に出掛けようと。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから一年が経ちました。
「ゴードン」
「デイジー」
二人は冒険の旅先で再会することができました。
「ゴードンは人食い竜ではなくなったのね?」
「その通りだよ。友達のデイジーに会うために人間になったんだ」
ゴードンは竜ではなく、人間の少年の姿に変わっていました。
「だけどデイジーも変わったね」
「ええ。友達のゴードンに会うために、竜になったの」
デイジーは人間ではなく、翼を持つ竜の姿に変わっていました。
「何があったんだい?」
「話は冒険をしながらでいいじゃない。さあ。今度はゴードンが私の背中に乗って」
「うん」
デイジーはゴードンを乗せると、翼をはためかせて空高く舞い上がりました。
「どこに行くの?」
「どこでもいいわ。ゴードンと一緒に冒険ができるなら」
「そうだね。僕も同じ気持ちさ」
二人は再び冒険へと旅立ちました。
おしまい
読んで頂いてありがとうございます!
「冬の童話祭2025」のテーマは「冒険にでかけよう」向けに子供が読んでも大丈夫な話を目指して書いてみました。
現在、なろうラジオ6向けの1000文字以下の短編作品に力を入れていて、14作品をアップ済みです。以下で「なろうラジオ大賞6 応募短編集」としてシリーズ設定しています。
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最新は以下です。
「悪役令嬢は「ククク。奴は魔王軍四天王の中でも所詮最弱」を卒業したい」
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こちらはちょっと子供向けでない作品が多めです。
良かったら読んでみて下さい。