ブシは食わねど高楊枝
「はぁ…はぁ…追ってこない…ルイさん達大丈夫かしら…」
ロボットの襲撃から逃げ切り、私は床下の通路を四つん這いで進んでいる。
「キューちゃんは気を失ってたし、ルイさんも体力を消耗してたみたい…、すぐに追いかけるって言ってたけど大丈夫かなぁ」
二人(うちは一匹?)の心配をするもひとまずは自分の身を守らないといけない、あらためて周りをよく見ると通路の出口らしき物が見えた。
「…はぁ…久しぶりにまた独りね…ちょっと心細いけど頑張らないと」
意を決して私は進み続けた。
「そういえばさっきの声…いったい誰だったのかしら?」
「いや~危なかったッスね~、ここ、ああいう危険なロボットが徘徊してるッスよ」
「おう、さっきは助かったぜ、てか手離せよ」
「いいスけど、姉さんこの《暗闇》で歩けるんスか?」
ルイは男に連れられて別の穴から地下通路に入っていた
アイが入った通路と違い、十分な高さの天井がある道を歩いていた
「…オメェは歩けてるなぁ…見えてんのかよ?この通路…超能力か?」
「そうッス!俺は不可侵の目視っていう超能力を持ってるッス、暗闇でも《壁の向こう》でもいろんな所を見ることができるッスよ!」
「通路をあらかじめわかっていたのもその超能力で見えてたからか…」
「ご明察ッス!」
暗闇で見えないが男は指を鳴らし、ルイに向けて指をさしているようだった
「ひとまずいろいろ聞きたいが、それはアイと合流してからだな、アタシは榊瑠衣、アンタは?」
「眞子柴謙太ッス!よろしくッスよ!榊姉さん!」
簡単な自己紹介を終えながら二人はどんどん奥へ進んで行く、しばらく歩くとケンタは元気よく呟いた
「お、相方のお嬢ちゃんが見えたッスよ!あと少しッス!」
「そうか…なら少し待て」
「え?なんスか?」
ルイは立ち止まるとグイッとケンタの腕を引っ張った
「あいつはアイっていうアタシのダチだ!変なことしようとすんじゃねぇぞ!?」
「ちょ、そんなことしないッスよ~」
「間違っても服とか透視すんじゃねぇぞ?したらどうなるかわかってるだろうなぁ!?」
「ししししないッスよ!!そもそも服は密着率が変動して見るの難しいし!!」
「…てめぇ、やったことあんな?」
「すんません…ここでは絶対やらないです…」
ルイはギリギリとケンタの腕を握るとミシミシと音を立てながら変な方向へ手首を曲げていく
「いてててて!!せっかく人に会えたのにこりゃあんまりッスよ!!」
「うるせぇ!…あともう一つ言っておくことがある」
ルイはそういうとパッと手を離し、懐からタバコを取り出し吸い始める
ライターの火は消さずにケンタの顔に近づけ顔を確認しながら呟く
「……《アイの口調に違和感を感じても無視しろ》」
「…えっ?それってどういう…」
「いいから…」
ルイは吸った煙をふーっと吹き出すと、少しムスッとした表情で続けた
「……アタシの勘は昔から悪い方に当たんだよ、いいから従っておけ」
「…わかったッス」
ケンタは納得のいかない様子だったが、ルイの勢いに押され了承した
「…あれ?ライターの火?」
私は地下の通路を抜けて一本道を歩いていると程なくして小さな灯りを見つけることができた。
それはルイさんのライターの火だということはすぐにわかった。
「ルイさーん!!無事でしたか!!」
「おう!そっちも平気そうだな、何よりだ」
「………」
「あ、あの、こちらの方は?」
「あぁさっきアタシ達に道を教えてくれた奴さ、不可侵の目視っつ超能力の覗き魔な」
「ちょっ!!姉さん!!」
「のぞき…」
「違うッス!!誤解ッス!!」
男の人はバタバタと大きな手振りでバツを作りアピールした。
「俺は眞子柴謙太っていうッス!お嬢ちゃんは、確かアイちゃんスよね?榊姉さんに聞いたッス!」
「うん、よろしくねケンタくん!さっきはありがとう、助かったわ」
「いや~あのロボットから隠れる為にロッカーに入ってたんスけど、まさか人が来るなんて思わなかったッス!…ちなみに俺を助けに来た訳じゃないス…よね?」
「あはは…残念ながら…」
「アタシ達もこのよくわかんねー場所から脱出する為に動いてんだ、あとアイの記憶も取り戻しにな!」
「記憶…どういうことッスか?」
私たちはこれまでの経緯を話した。話している途中にキューちゃんも目を覚まし、ケンタ君は逐一驚きながらも聞いてくれていた。
「ほぇ~記憶喪失って実際あるんスね~、まぁ超能力があるぐらいだし不思議でもないか~」
「ケンタ君は何故ここに?」
「大体アイちゃんや姉さん達と一緒ッス!俺も定期検診で《治療》を受けてたんスけど、《何か大きな力に引っ張られて》気がついたらここに…」
「そう…皆同じね…同じようにここに連れてこられた、超能力を持った人が閉じ込められているのかしら?」
「…!?」
ケンタはふとルイの方へ目線をやった
が、ルイはとくに反応もせずタバコをふかしていた
「と、とりあえず脱出する為にこの部屋を探索するッスよ!姉さん達が前の部屋を突破したのならここにも絶対出口があるはずッス!」
「うん…はぁ…ロボットから逃げながら探索…ほんとにお化け屋敷に来たみたい…」
「あははっ、まぁ腹も減ってきたし早いとこ出口見つけて飯でも行こうや!」
「姉さん…そんなちょこっと郵便局に行くみたいなノリで終わんないスよ、きっと」
「うるせぇ!こっちは空腹をタバコで満たしてんだ!早くしねぇとヤニカスになっちまう!!」
「いや、それもうなってるでしょ」
「んだとぉ?」
「ひぃ~すいませんッス!!」
二人のやりとりを見て私はふふっと笑みを溢した。
この状況下でまた仲間が増えた。
眞子柴謙太くん、少し頼りない所もあるけど、私の光が十分に発揮できないこの部屋で彼の超能力は頼もしい。
それにしても
「やっぱり…」
二人のやりとりを見ながら私はお腹をさすった。
その様子を見てたのは多分キューちゃんだけだった。
「…キュ」
ルイさんの言葉を聞いて違和感を持ち、今確信に変わった。
私、お腹が空いてない
こんなに時間が経って、いっぱい歩いたのに?
ただ疲れていて空腹感がないのならそれでいい、だけどもし違ったら?
…私はあまり考えないようにした。
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