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ココロの声

耳を塞いでも、声は止まらなかった

廃れた孤児院の廊下


薄暗い電灯がちらつくたび、霧島鏡真(きりしまきょうま)の頭に他人の心が流れ込む


 “腹が立つ”

 “気持ち悪い”

 “あいつの目が嫌いだ”


頭蓋の内側を爪で引っかかれるような感覚


この世界の“音”は、どれも醜かった


幼い頃から彼には他人の思考が聞こえた

だがそのせいで、誰にも近づけなかった


他人を知れば知るほど、信じることができなくなる



「…どうしてみんな、こんなにも汚いんだ」



吐き出した呟きは、夜の闇に溶けた


そんな彼の前に男が現れた現れた


 白いコートに身を包み、冷えた廊下に立つその男は、どこか静謐で、

 周囲の“雑音”が嘘のように消える。

 霧島は初めて、心を読むまでもなく理解できる男に出会った。


「……ああ、君か、噂の“読心の子”」


男の声は静かで、無駄がなかった

だが、その奥には確かな芯があった


「世界を見てどう思う?」


「……汚いさ…皆、自分のことしか考えてない」


男は小さく頷いた

「正しい認識だ、だが……それを変えられるとしたら?」


霧島は一瞬、息を呑んだ

この男は、他人の偽善を否定せず、真正面から肯定する


「私の計画は単純だよ、“ギフト”という異能を利用し、人間の進化を科学で加速させる」


「……そんな奴らが増えたら、自己中心的な我儘な奴が増えるだけだ」


「その通り……だが、その力を《選ばれたごく一部の者が制する》とどうなる?」


「世界征服が目的か?貴方が世界の王にでもなって世界を良くしたいとでも!?」


「その通りだ」


男の声……または心には迷いがなかった

まるでそうすることが自分の使命かのように


霧島はこんなにも純粋で凶悪で眩しくてドス黒い心を初めて見た


ブラックホールかのようなその異形な彼の内側にどこか神々しさを感じるようであった



「その為には誰かが犠牲になる?……構わない、私はその“犠牲”を背負う覚悟がある」



男の声は、静かな炎のようだった


そして霧島の心が、はじめて“他人の思考”に共鳴した瞬間だった



 「……あなたの心は、汚くない」



男はわずかに笑った。


「いや、私は十分に汚れている。だが、目的のために清らかである必要はない」



その言葉が、霧島の心に深く刻まれる



 「君の力が必要だ、霧島君、人の心を覗けるということは、《神にも悪魔にも》なれる才能だ。」


 「俺を……必要と?」


 「そうだ、君はもう“孤独な観測者”ではない、私と共に、“世界の形”を変えよう」


男がが差し出した手に、霧島は迷いなく膝をついた



「……俺は、あなたの目になります……この腐った世界の、心の底を覗き尽くしましょう」



「いいだろう。だが、ひとつだけ約束を」


男は霧島の肩に手を置き、静かに告げた


 「君は君らしく生きろ


  “悪”を恐れるな


  私が責任を取る」


霧島は笑った

心から、安堵したように


 ――その日から、彼の瞳は誰の心も恐れなくなった

他人の悲鳴さえ、世界の“真実”として美しいと感じるようになった


そして彼は信じる


自分を救ったあの男こそが、“唯一心の汚れを知らぬ存在”だと




〜病院外敷地内〜



「……てめぇ、わかるぜアタシには…《見えてんだろ?》アタシの心を!!」


「流石経験者…心を読まれるのは慣れていますか」


銀髪の青年はやれやれといった様子で肩で息を吐く


「一応自己紹介を……私は霧島と申します。貴女が察しているように私も貴女と同じ超能力(ギフト)の持ち主…その能力が…」



「《テレパシー》、だろ?クソッタレ、よりにもよって…」



「「アタシのダンナと同じ能力かよ」ですか…ならもう少し仲良くして頂いても良いのですがね…」



互いに台詞を被せるように言い合う

互いに睨み合い、ヒリヒリした空気が周りを覆う



「……テメェのことはどうでもいい、今はアイ達の所に戻らねぇといけねぇ」



「でしょうね、ですが少々お時間頂きますよ」



「あ"?邪魔するのかよ?」



ルイは腰を落とし臨戦体制をとる



「えぇ…テストをしなくてはならないので…でもそれよりも私…すみません…ふふっ…その、楽しみで…」



霧島はニヤッと気味の悪い笑みを浮かべる



「だって貴女の苦しむ姿を見れるのですから!!」




月が浮かび、人気のない夜の闇に、甲高い悲鳴が響いた




ここまで読んで下さりありがとうございます。

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