クミアウ歯車
「…古時計?」
「大きなノッポの古時計かぁ?」
「いや、実際そうなんスけど…チラッと透視した時に中がスカスカだったのを覚えてるッスよ!」
「まぁこの見た目からしてそこに歯車をはめ込むことで間違いねぇな…」
ルイさんはポケットから一つ歯車を取り出すと、手に持ってみんなに見せた
「…ところでケンタ、オメェ、パズルは得意か?」
「はぁ?…いや、人並みにってか得意でも不得意でもないッスけど…」
「…そうか」
「……ルイさんそれってもしかして…」
「あぁ、アイ…おそらくアンタの苦手なパズル要素、入ってくるぜ~」
「えー!またなの!!」
「どういうことスか?姉さん」
「キュー?」
ルイさんは不敵な笑みを浮かべると歯車をボールのように上に投げながら続けた。
「この歯車は大小様々でよく見ると形が一つ一つ違ぇ、おそらくはめ込む順番ってのが存在するはずだ」
「うへぇ~確か20個ぐらいあるスよね!持ちきれないからみんなで分散させて持ってぐらい…それを組み立てるスか!?」
「…それにあんなに苦労して倒したロボットさんも、まだ徘徊してるんでしょ?」
「あぁ…その通り、そこでだ…」
「え?」
「キャッ!」
ルイさんはベットのシーツを取り出すと魔引きを使って私たちから歯車を全て引き寄せた。
集めた歯車をシーツで包むとポイっとケンタくんに渡した。
「囮がロボを引きつけて、その間にパズルを解いていく…この作戦でいく、歯車のパズルを解くのはオメェだ、ケンタ!」
「なっ…まさか姉さんが囮を引き受けるっていうスか!?」
「駄目だよ!また怪我しちゃう!!」
「キュー⁉︎」
「…その通り、アタシが引き受ける…だが、一人じゃねぇ」
「え…」
ルイさんはくるりと私の方を見るとポンと肩を叩いた。
「…アイ、キュー太郎、わりぃが一緒に来てくれるか?」
「…もちろん!ルイさんだけ危険な目に…あわせないよ!」
「キュ!キュー!」
「…ケンタ、か弱い女の子が身体張ってんだ、テメェも気張れよ」
「う、ウッス!手が折れてでも組み立てるッス!!」
「へへっ…よし!」
「キュー!」
私たちは意気込み、それぞれの役割を明確に確認し打ち合わせてから上に向かい始めた。
「…こっちッス!あそこを曲がった所に階段があるッスよ!」
地下に潜ってすぐの時と違い、ケンタ君は張り切って前を歩き、先導してくれていた。
「ケンタくん、少し変わったね…ロボットさんに立ち向かってから何か思うところがあったのかな~」
「…アイ、少しいいか?」
ルイさんが私を引き止める。ケンタ君はそのことに気が付かず、そのまま歩き続けている。
「…変なことを聞く、わからなかったり答えたくなかったら無視していい」
「…うん?」
ルイさんは真剣な表情で続ける。
「前のパズルや今回の歯車のパズル…《以前どこかでやったことあるか》?」
その瞬間私の頭に激痛が走った。
まるで鈍い鈍器で殴られたような痛みだった、
「っ!痛ぁ…」
「あ、アイ!?大丈夫か?」
激痛はすぐに治った…だが、気がつくと私はその場に座り込んでいたようだった。
「すまねぇ、変なこと聞いちまって…忘れてくれ」
ルイさんに抱えられながら身体を起こす。
「ええ…ごめんなさい、もう大丈夫よ、先を急ぎましょう…」
「……あぁ、わかった」
ケンタ君が慌てて戻ってくる、急についてこなくなった私たちを心配したらしい。
私たちは軽く謝ると、ようやく階段を上がり、一階に戻ってきた。
「ササっ!サササササっ!」
「おい、それダセェからやめろ」
「さぁさぁ皆さん!こちらッスよ!」
ケンタ君は変な掛け声と共に壁に張り付きながら、廊下を進む。
「…ここッスよ」
「…着いたか」
「キュー!」
少し大きな扉を潜るとそこにはパソコンやよくわからない大きな機械が並び、その中央にケンタ君が言っていた通り大きな古時計がそびえ立っていた。
「…今のところロボはいねぇ、さっさとやっちまうぞ!」
「おうッス!」
時計を開けるといくつもの突起物があり、そこに歯車が埋め込めるようになっていた。突起物には小さく番号が振ってあり、それをルイさんとケンタ君が確認していた。
「…はめ込む順番ッスかね?」
「たぶんな…っ!?アイ!こっちへ来い!」
「…来たわね」
突然廊下の方からキャタピラの駆動音が聞こえた。
その音は次第に大きくなり、突然ドンっと大きな音ともに扉が吹き飛んだ。
「…よし!いくぜ!!アイ!キュー太郎!!」
「ええ!」
「キュー!」
(ウィーン!)
(ウィーン!)
(ウィーン!)
(ウィーン!)
(ウィーン!)
(ウィーン!)
((((((ウィーン!))))))
「……」
「……」
「………あれ?多くない?団体さん?」
(ドカーン‼︎)
突然現れたロボットは私たちの予想を上回る程多かった。
「わわわっ!大変なことになってるッス!!」
「ケンタ!!なるはやで頼む!!てか超速で頼むぅ!!!」
「ケンタ君!!急いで!!」
「キュー‼︎」
「は、はいッス!!」
「仕方ねぇ!!魔引き!!全力全開!!」
ルイさんの超能力でロボットが一斉に引き寄せられる、ロボット同士がガツンとぶつかり合いギチギチになった。
「アイ!!」
「任せて!!光手の蜘蛛糸!!」
私は光の縄を出すとぐるりとロボット達を縛り、拘束した。
「おらぁ!飯食ったから超能力の出力上がってんぞぉ!!」
「キュー‼︎」
「姉さん流石ッスね!…んじゃ俺も出し惜しみ無しッス!!不可侵の開示!!」
私たちに続いてコウタ君も超能力発動し、パズルを見つめ解析を始めた。
「あ…あぁ…ぐっ…」
初めてインサイトを使った時と同じようにコウタ君は辛そう顔を見せた。鼻血が出たと思うと、突然ハッとしてパズルを掴んだ。
「…これ、内部に番号が振り分けられてるッス!めっちゃ小さいけど、俺ならわかるッスよぉ!!」
そういうと素早い手捌きでどんどん歯車を入れていく。
「あ、やべぇ、限界だ…」
「え?」
ルイさんがそう言うと急に蜘蛛糸に力が掛かる、どうやらルイさんの超能力の効力がなくなったようだ。
「うぅ…千切れちゃう……」
「キュー‼︎」
キューちゃんがポコポコとロボットを蹴るがびくともしない。
「くっ…ケンタ君…まだぁ…?」
「もうちょいッス!!」
心なしか焦っているようにも見える、何度か歯車を落としたり、入れ間違いたりする様子が見られる。
「アイ!!踏ん張れぇ!!」
「うぅ…もう…駄目ぇ…!!!」
「ラストぉっス!!!」
(カチッ)
ケンタ君がそう叫ぶとどこからか何かが起動する音が聞こえた。同時に
(ブチッ)
「キャッ!!」
私の蜘蛛糸が千切れる音が聞こえた。
「やべぇ、こいつら襲って来るぞ…」
「キュ…!」
私たちがロボット達に意識を向けたその瞬間だった。
(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)
地響きが起こりそして
「あ?あああぁ!?」
「な、なに!?」
「うわぁ!!」
「キュー‼︎」
突然下から何本もの巨大な樹木が生えてきて、そして…
「ルイさん!!みんな!!」
「アイ!!」
私たちは分断された