プロローグ
真っ暗だった。何も見えずただ自分が横になっていることを自覚した。
冷たい地面が私の体温を奪っていく様子がわかり、震えながら身体を起こす。
「…ここは?」
起き上がって立って見たがやはり真っ暗…まるで目を瞑っているかのような暗さだった、目を開く、閉じるそれぞれの行為を交互に幾度かしたが変わらないレベルだった。
こんなとき暗所恐怖症の人だったらきっとパニックになっていただろう、自分がそうじゃ無いことが救いだと思った。そもそも私は…ワタシは…
「あれ?…嘘…なん…で…」
そう気がついた。気がついて気づいてしまった…《何も思い出せない》、自分の年齢、今まで何をしていたのか、直前までの記憶どころでは無い《生まれてから今まで何をしてきたのか、どうやって生きてきたのか》、それすらも思い出せない。
いわゆる記憶喪失、まるで漫画やドラマのような出来事に私の心拍数は少しずつ上がっていく。
「ちょっと嘘でしょ…なんで、てかそもそもここはどこなのよ!!」
少しずつ荒くなる息、暗闇に記憶の損失…私の情緒を奪うには十分すぎるほどの要素
おそらくあと少しで大声をあげて発狂してたであろうその時、それは起きた。
(…ビィー、ビビビビビ)
「え?きゃっ‼︎」
突然目に飛び込む光に思わず手で顔を覆った。
急に明るくなった。ゆっくり目を開けると広い空間が目に飛び込む、コンクリートで固められた床、壁、天井体育館ぐらいだろうか広大な空間のど真ん中に自分がいることがわかり、ますます意味がわからないことがわかった。
「えー…なにこれ…ほんとどこなのここ?何も思い出せないし…ほんと最悪だわ…」
愚痴をこぼしながら上を見上げると照明が無い、無いのにも関わらず部屋は明るくまるで天井そのものが発光しているように見えた。
「…はぁ…もうキャパオーバーよ、いきなりこんなてんこ盛りの展開…もうどうだっていいわ…」
暗闇の部屋での目覚め、唐突の記憶障害、謎の大空間、不思議発行の天井
それが非日常とわかる知識は持っていることはわかった。とりあえずなくなっているのは自分自身の《記憶》のみ、一般常識の記憶は残っているようだ。
途方に暮れながらあらためて両手で目を覆うとあることが浮かんできた。
「…あれ?…あい…私は…アイ…」
どうやらかろうじて名前は思い出せたようだ。だがしかしその前が漢字なのかどうかすら思い出せない。
「ひらがなかしら…それとも…う~ん…ん?ん?」
ふと目の前の壁に薄ら扉のような切れ目が見えた。近づいてみるとはっきりとそれが内開きの扉ということが理解できた。ただ理解できないのはその扉に《取っ手》が無いということ、これでは引くことができない。
「まるで牢獄ね、私誘拐でもされちゃったのかしら?それにしては広すぎる部屋だし…うーん…」
悩みながら何気なく扉に手が触れると一瞬扉が光ったように見えた。
「ん?気のせいかしら?」
目の錯覚だったのかもう一度触れようとしたその瞬間。
(ゴゴゴゴゴ…)
重い音を出しながらゆっくりと扉が開いていく、少しずつ開かられる扉に周りの埃が舞い少し咽せそうになる。
扉の先は薄暗い廊下が続いていた。明かりもなく薄ら見える先はふたたび真っ暗闇が待っていた。
「…はぁ、行くしか無いわよね…私自身のことは何も思い出せないけど、とりあえず引っ込み思案じゃないわね…」
こういう時かよわい女の子ならじっとしてたりするんでしょうけど、どうやら自分には性に合わないらしい。
「何かわかればいいけど…はぁ…」
気が進まないがここに居ても仕方がないことぐらい少し考えればわかる。
私はゆっくりと廊下に足を踏み入れた。
…しばらくはため息が癖になりそうね
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