3.過去の「し」
『NO.42が殺害されました。』
『NO.1が殺害されました。』
『NO.12が殺害されました。』
時刻は10時。A棟3回の廊下で殺害メッセージを見た私は、スマホを閉じて大を見た。この廊下には私と大以外に人はおらず、不気味な雰囲気が漂っていた。
「どうした? かりん。」
「いや、なんでもないです。」
私は何となく右の方を見ると、そこには誰かが倒れこんでいた。
「っ。」
そこには真っ赤な水たまりが広がっていて、その上で倒れこんでいる人は足掻いていたのか、手を前に出している。
「変なの見たか。でも気にするな。あれはお前の知り合いでもなんでもないだろ。」
(いや、気にするなって……無理に決まってるでしょ。)
私は溜め息をついた。
「まぁ、あれは気にするよな。でも、慣れるしか方法がないんだよな……。」
大は顔を下に向けた。
「いえ、問題ありません。慣れるしか方法がないのも、自分ではわかっているんです。」
「……、行きましょう。」
そう言って学校を回り始めた。
「大さん。」
「なんだ?」
「これ、吸血鬼の殺害ノルマを考えたほうがいいのではないでしょうか?」
「そうだな。推測したほうが気を付けられる気がする。」
「参考になれてよかったです。」
私が言い終えると、大がスマホを見た。
「今回のゲームは4日ほどか……? 教室に入って考えるか。」
大の一言で私たちは5-3に入った。
「少なくても1つ、今回のノルマ数で違う数字がある。」
「それは?」
「『1』。」
大は指で表して言った。
「1つクイズを出す。参加した以上、また巻き込まれるかもしれないからな。」
「はい。お願いします。」
「なんで俺が1はないと考えたと思う。」
「えっと……。」
現在状況としては、今はまだ吸血狩りが始まってから少ししかたっていない。なのにもう、3人も殺害されている。
それで?
それが何を指すのだろうか?
何が、何が、______。
「1分たった。答えを言え。」
「は、早すぎます!」
「それぐらい頭を回転させないと、このゲームに狩人は勝てない。俺が出た3回、狩人が勝ったのは1回だけだ。」
「それってどんなゲームだったんですか?」
「かりん、そう言って制限時間を延ばす手もあるから、あとで答えることにする。」
「‼‼」
気づかれていた。
漢字の小テストで質問攻めをして、その間に勉強する、という方法を使って5分もテスト時間が遅れたのを思い出してやってみたが、大は吸血狩り4回目。私の本当の目的をすぐに見抜いた。
「わかりません……。」
結果、私は何も分からずに断念した。
「答えは『殺害された人数が多いから』だ。」
「?」
たまにある、複雑に考えてわからず、答えはほぼ問題文に書いてあるようなタイプ。それもあってか、まったく答えの意味が分からなかった。
「制限時間は8時間。お前が吸血鬼の場合、ノルマがなかったらどうする?」
ノルマとは殺害ノルマのことだろう。私は自分の意見を告げた。
「……、殺害しませんね。」
「じゃあ、1人だったら?」
「隙を見てって感じです。」
「2人以上。」
「2人の場合で言いますが、早めに1人を殺害して、もう1人は隙を見て殺害します。」
「そういうことだ。」
「???」
大の言っている意味が、何一つ分からなかった。
「吸血鬼はあまり正体をバレたくないだろう。それにノルマが多いと早めに残り1人になるまで殺害しようと思う。安心を得るためにな。まぁ、今までの経験なだけで、そうとは限らないがな。」
「はい。分かりました。注意します。私も考えてみますね。」
「あぁ、よろしく。」
そこで一度この話が終わり、5-3を出て歩き出した。
『NO.22が殺害されました。』
時刻は10時30分。B棟2階の廊下を歩いているときだった。
「また殺害されましたね……。」
「そうだな……。30分で4人。多すぎないか?」
「そうですね……。」
そう言ったあと、私は聞けていなかった話が合ったことを思い出した。
「あの。」
「なんだ?」
「前の3回の吸血狩り、どんなものだったんですか?」
「あ、そうだな。話すって言ったもんな。」
「……、1回目のゲームは、俺が中1のときだった。」
大は思い出すように上を向いて話し出した。
「あのときの進行人は2号じゃなくて『0号』だった。」
「0号?」
「そうだ。0号は2号と違って、服装は同じだったんだけどな。活発で参加者に対してタメ口で話していた。そのときは狩人が勝った。」
大はそのまま話を続けた。
「そして2回目が始まった。高1のときだ。そのときには進行人が2号に代わっていた。このゲームは参加者が100人ほどで、過去最高だったのを覚えてる。」
(過去最高って、そのときはまだ1回しかやってないでしょ……。)
私はつい言いたくなったが、どうでもいいことな気がしたので放っておいた。それよりも、聞かなきゃいけないことがある。
「100人?それって、毎回参加者の人数が違うということですか?」
「たぶんそうだ。あと、このゲームで銃を乱射した奴がいたんだ。」
「乱射って、もしかして5発制度ができたっていうのは……。」
「そうだろうな。それもあって、大体の人が死んだんだよな……。勝ったのは吸血鬼だった。あいつが吸血鬼だったと思うんだよな……。」
「思う、とは?」
「最後にだれが吸血鬼だったか明かされないんだよ。そしてゲームの勝敗を教えられるのは次のゲームに参加したときだ。」
(敵が知らされない?普通だったら答え合わせとして出すはず……。出せない理由があるの?)
「……、3回目は2回目のゲームから半年後だ。5発制度ができていた。あと、2号が2回目のときは悲壮感? があった気がしたんだが、3回目ではもう感じられなかったな。勝ったのは吸血鬼だ。今日知った。」
「じゃあ、大さんは……。」
「あぁ、前にも言ったけど全ゲーム死んでいる。」
「そうだったんですね……。」
「そうだな。ってか敬体やめろ。タメ口でいい……。このゲームに年齢とか関係ないからな。」
「あ、はい。」
「じゃなくて。」
「……。わかった。」
そうこうしていると5分が経過していた。
「1回教室入るか。」
「__、うん。」
私たちは3-2に入り、吸血鬼対策を考えあった。
「みんな、何人グループで行動しているんだろう……。」
ふと思ったことを大に伝えた。
「さぁ?経験者だったら仲間を集めようとするだろうし、初参加だったら身の安全を考えて単独行動するんじゃないか?あよ、吸血鬼はグループ行動が多いだろうな。」
「つまりバラバラと……。」
ガラガラガラ。
そこに、敵かもしれない1人の男の子が教室に入ってきた。