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2.殺し合い

「皆様、あと5分で9時になります。急いで教室に入ってください。」

 私は1番体育館に近かった1-1に入った。

 この小学校は本館であるA棟が3階まで、B棟、C棟がそれぞれ2階まであり、A棟は、1階が理科室や家庭科室、図工室や、職員室、校長室などの先生が出入りする場所。そして特別支援学級だった。2階が1年生から2年生までの教室と多目的室。3階が5,6年生の教室と図書室や多目的室。B棟には3,4年生の教室と多目的室。そして臨時の事務室があり、C棟には音楽室とコンピューター室があるらしい。

 私は1-1の教室で貸与スマートフォン__スマホに送られてきた案内図を凝視していた。

(これって、団体行動したほうが良いのかな……。)

 そんな考えが、ふと頭によぎった。

(いや、でも、固まっている間に死ぬ可能性もあるだろうし__。)

 そもそも話、私はいつも1人だ。普通に過ごしている間も学校では1人になっているのだから、団体行動は、私にはできないものなのだろう。__1学年会長なのに。

 みんなが当たり前にできていることを私ができていないことに胸が詰まる思いだった。

 でも、たった1人、私と仲良くしてくれた人がいた。『鳴鳥なとり 来夢らいむ』。来夢は小学生のときに一緒に遊んでくれた祐逸の友達。クラスのアイドルだった明るい女の子。今は別の中学校で、連絡も取れていない。

「来夢とまた話したいな……。」

私はボソッとつぶやいた。


「9時になりました。少しお待ちください。教室にいない参加者を『本当に殺します』。また、吸血鬼の人は今日の殺害ノルマが課せられていると思うので、後で確認してください。」

 ピコン

 10分後、メッセージが送られてきた。

 1-1には10人ほど人がいたが、その全員分の音が鳴り、教室に響き渡った。

『NO.34が、禁止事項違反により本当に殺害されました。』

 ピコン

 今度は写真が送られてきた。

 きれいだったはずの廊下に赤黒い水たまりのようなものがあり、それは壁にまで付着している。よく見ると、写真の隅には親指が切り離されているのが見えた。

(っっっ!)

「きゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~!」

 甲高い悲鳴が教室中を駆け巡った。私は思わず耳をふさぐ。

 悲鳴が聞こえたほうを振り向くと、1人の女の子がへたり込んでいた。__『姫カット』と呼ばれる髪型をした人形のような女の子。右目の下には『48』という数字が書かれてある。

「では、教室を開きます。皆様、行動を開始してください。」

 教室の鍵が開き、何人ものの人が教室から出て行った。


「あの、大丈夫ですか?」

 私はすぐに48番のところに行った。他にも、高身長で凛々しい顔立ちをしている、右目の下に『19』と書かれた男の子が、私たちをじっと見つめている。

「はい。大丈夫です……。ありがとうございます。」

 いつも言われない言葉を言われて、知らない人なのに少し照れ臭かった。

「3番さん。名前、なんて言うの?」

「青木かりんです。よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。わたしは『渡辺(わたなべ) 由利(ゆり)』。吸血狩りは2回目。改めてよろしく。かりんちゃん。」

 由利は左手を前に出した。

(友達……。)

 まだ完全にそうとは言い切れないと思うけれど、話してくれるだけ、友達になってくれそうで嬉しかった。

 私は手を出そうとする。

 バン!

 そのとき、銃声が響いた。そして私の目の前には__。

「ゆ、由利?」

 由利の体から真っ赤な水たまりが広がる。私の服にも、その色は跳ね返って付いた。

「由利、由利‼」

 ピコン

 1件のメッセージが届いた。

『NO.48が殺害されました。』

(……。)

 涙が出そうになって、必死に堪えた。由利の死を知るのは、私ならまだ割り切れられるかもしれないけど、由利の親は、友達は、知ったら悲しむというのに、そんな簡単に人を殺して__。

「お前、何にも気づいていないのかよ。」

 そいつ__19番は素っ気なく言った。私は銃を構える。

「そんなに俺が怪しいか。48番、ほぼ確実に『吸血鬼』だぞ。」

「え?」

 意味が分からなかった。

「どうして__。」

 そう言い切れるの?

「かりんと言ったな。俺は『高田たかだ だい』。これでゲームは4回目だ。どうしてその__、由利って奴が吸血鬼なのか教えるよ。」

「……お願いします。」

 私は何となく正座をした。大は壁に寄りかかって話を始めた。

「理由は2つ。1つ目は、ゲームは2回目なのにあんなに悲鳴を上げていたことだ。」

「それはまだ吸血狩りに慣れていないからでは?」

「かりん、ゲームは初めてか。」

「……はい。」

「だろうな。俺は過去3回のゲーム、全て『死んでいる』。」

「え?」

「だけど俺は、こうやってまたゲームをやらされた。つまり、48番も死んだ可能性が極めて高い。もし死んでいなくても、ゲームをやっていたら当たり前のように死体を見るはずだ。写真を見ただけで怯えるか。」

「確かに……。」

「2つ目は由利がかりんに手を差し出したことだ。」

「なぜ?ただの握手じゃ。」

「握手は触れているだろうが。」

「あ。」

「わかったならいい……。だから安易に人に触れるな。目立つ行動に寄り添うのがお前の武器だ。だからそれで話して、相手の本性を見極めろ。……実際に、あんな感じで殺害された奴を、俺は見たことがある。」

「……わかりました。」

 大は教室から出ようとしたのか、ドアの方に向かって歩いた。

「あの。」

「なんだ?」

「一緒に行動しませんか?」

「別にいいけど。」

「ありがとうございます。」

「じゃあ、教室から出るか。」

「はい。」


 時刻は9時20分。

 吸血狩りは『殺し合い』であることを教えてくれた彼の本性を、私は見極めなければならない。

 狩人か。吸血鬼か。

 大と共に廊下を歩き続けた。

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