17.本当の「敵」
13時半を過ぎていた。
残り3時間30分。
「仕留めた?」
来夢は首を横に振った。
「それって……!」
49番を殺したのは2番だった。
そして吸血狩りが終わらないことから、吸血鬼は来夢か2番だったとわかる。
可能性としては2番のほうが高い。
来夢は友達だから、疑えていないのかもしれない。
でも、もし彼女が吸血鬼なら、トイレで49番を捜しているときに私に触れてもいいはず__私だったら間違いなくそうする。吸血鬼にとっては絶好の時間だったはずだ。
それなのに、来夢は私に触れなかった。
私は2番が怪しいと思った。
「私は2番が吸血鬼だと思うよ。」
(⁉)
来夢のことだから、てっきり私を疑っているのかと思ったが違った。
「そもそも、かりんが吸血鬼だと思っていたら今頃かりんを仕留めてるよ。」
来夢はいつもの調子で告げた。
私を仕留めるという言葉が聞こえ、全身の毛が逆立つ。
「……わたしって最低だね。」
とても小さな独り言だったが、私にはそれが響いて聞こえた。
「じゃあ、2番を捜そう。」
切り替えよう、という思いは伝えられなかった。
「うん。」
しんみりとした空気は元に戻らなかった。
2番の姿は見たことがない。
だから、どこに隠れているのか見当がつかない。
男子なのか、女子なのか。身長は高いのか、低いのか。
体格や性別の他にも、性格によって隠れている場所が違うイメージがある。
もちろん、情報が何もない状態では見つからなかった。
時刻は15時半。
残り1時間30分。
手当たり次第捜し続けたが2番を見つけられなかった私たちは多目的室に行った。
今日で2回目だ。
私は飲み物だけ取って1番近くにあった椅子に座った。
「「ねぇ。」」
私と来夢の声がそろう。
先にどうぞ、と手を動かした。
「確認しない?」
「何を?」
「わたしとかりんが吸血鬼なのかどうか。」
「……⁉」
私も同じことを考えていた。
「あ、反対?」
そう思うだろう。なぜなら私は机を叩いていたから。
「いや、私と同じことを考えていて、驚いちゃった。」
「そうなんだね。……じゃあ、いい?」
「もちろん。」
スマホの時計の数字が1増えたとき、お互いの手を握った。
あたりが静かに感じられる。
緊張で目を閉じる。今更だが、少し怖い。来夢が吸血鬼だったら__、と考えてしまう。
「大丈夫だよ。」
来夢の一言で目を開けた。時計の数字がまた増えている。
__私は殺されなかった。
つまり、2番が吸血鬼だ。
「よかっ……た……。」
私は椅子から崩れ落ちた。
親友が仲間だとわかって安心したのかもしれない。
一気に疲れが私を襲った。
椅子に座ると、来夢が「何落ちてるの。」と言ってきた。
来夢も緊張が解けたのかもしれない。
来夢の小学生のときの顔が重なった。
「2番を見つけよう。」
「そうだね。」
2番を見つけることは、吸血狩りが終わることと同じだから。
3人しかいない学校を再び歩き出した。
「見つからないよー。」
「え⁉ じゃあ、どこにいるの?」
時刻は16時30分を過ぎた。
あと30分で終わってしまう。
1時間ほど時間をかけた2番の大捜索は失敗に終わった。
学校のどこを捜してもいなかったからだ。
今日で3回目の多目的室に行って話しあった。
料理は全く減っていない。
「わからないよ。でも、学校にはいるんだよ。」
当たり前だ。
学校に居なければ、34番のように禁止事項違反として連絡が来るはずだから。
「どこ捜そうか。」
「もう一周行く?」
「それだと……。」
「どうしましたか? NO.3、NO.30。」
突然聞こえた声の方向に顔を向ける。
人形のような姿をした、右目の下に『02』と書かれている女の子。
「2号? なんでここにいるの?」
来夢は怪しげに彼女__2号のことを見た。
「NO.30。わたくしは暇なのです。残りの参加者は3人ですので、あまりほかの参加者とも会えないので、1人探索をしていたのですよ。」
「ふーん。」
「2号。2番って、本当に学校にいるんだよね?」
私はちょうどきた2号に確認した。
「はい。NO.3。2番は存在しますよ。もし2番が学校から逃亡した場合、禁止事項違反として処分します。」
2号は笑っていた。
そこには涙が浮かんでいた。
「2号。どうかした__?」
「NO.30。これは何事でもございません。ご迷惑をかけてすみませんでした。何かわかったことが増えたのなら幸いです。……では、わたくしはここで失礼いたします。」
2号は軽い足取りで多目的室を出た。
私はずっと不思議に思っていたことがあった。
体育館のステージ裏にあったダンボールだ。
何が書かれているのかは読み取れなかった。
ただ、自室のように囲われているのだから、何かあるのではないだろうか。
自室には数字が振り分けられていて、右目下に書かれている参加者の番号と一致している__。
(もしかして!)
私は体育館に向かった。
「かりん⁉」
「一緒に来て‼ 確認したい‼」
もしそうなら、吸血鬼はあいつだ。