16.犯人を見つけ出せ!
警告:今回の小説は殺される以外で社会的にOUTなシーンが入っております。
隣を見ると、来夢が教室から出てきたところだった。
「来夢⁉」
「かりんは1-3を見てきて! 私は茅の様子を見てくる‼」
「わかった‼」
隣の教室なのにも関わらず、私は全力で走った。
49番はいない。
(これって……!)
49番は吸血鬼だった。
なんで今まで気づかなかったのだろう。
ただ、それよりも怒りの気持ちの方が勝った。
多くの参加者を一気に殺したのはこいつだからだ。
教室を出ると、また来夢の顔が見えた。
「どうだった……?」
私は横に首を振った。
「じゃあ……。」
来夢は何者かに追い出されたかのように走り出す。
「来夢⁉」
「かりんは細かいところを探して! わたしは走り回るから‼」
「わ、わかった‼」
すぐに来夢の姿は見えなくなった。
(探してって言われてもな……。)
私は今、体育館を見て回っている。ルールには、「別の参加者の部屋に入ってはいけない」というのはなかったから、1つ1つの部屋を確認していた。
用具倉庫にも行ったが、49番は見つからなかった。
(次に行くか……。)
理科室、図工室、家庭科室。
教室、多目的室。
どこに行っても見つからない。
(来夢はうまくいっているといいけど……。)
49番を探し回っている間に、12時が過ぎた。
私はそのまま多目的室で食事を取る。
そこはとても静かで、量は最初にここに来たときと違って大量に入っていた。
(49番はどこにいるんだ?)
ここは小学校だ。私は、今までの小学校生活を思い出す。
男子たちのうるさい声。
女子同士の愚痴。
思い返すと、良くない思い出ばかりだ。
それでも、私は記憶を掘り返す。
「かくれんぼしよーぜー! もちろん、かりんと来夢は強制参加な。」
「おお‼ いいね!」
「ナイスー‼」
「こいつら、何回やったら気が済むのかね。」
来夢は「ばかばかしい。」と言いながらも笑っていた。
来夢は私に呟きながらも了解をする。
「うん。いいよ。」
私も了解をした。
「じゃあ、鬼はかりんと来夢で。」
「「はーい。」。」
私と来夢はあきれた様子で言った。
(かくれんぼ……?)
そうだ、これはかくれんぼと同じ状況だ。
もし私が49番の立場だったら、どこに隠れるだろうか。
また、私はあの声を思い出した。
「あー、もう! またここじゃん‼ さすがにやめてよねー。」
来夢はあの男子たちに怒鳴る。
「何言ってるんだって。オレたちのかくれんぼ最強スポットといえばここだろー?」
そのかくれんぼ最強スポットというのは、私たちは絶対に入れず、もし入ったら社会的に終わる場所だった。
その名も男子トイレ。
いつもその男子たちはそこに隠れていた。
(……っ!)
そうだ。男子トイレだ。
2番はわからないけれど、少なくとも私たちには仕留められることがない安全地帯。
(卑怯なことして……‼)
私はすぐに来夢に伝えようとした。
ただ、来夢の場所がわからない。
(あーー、もう!)
食べていた物を片付けもせず、多目的室を出て廊下を走った。
来夢はどこにいるのだろうか。
彼女の姿がまったく見つからない。
「来夢ーー!」
私は大声を出した。
返事はない。
次は、放送室に行った。
機材の使い方はわからないが、頑張ればいずれかは流せるだろう。
ピンポンパンポーン
5分ほどたった後、放送が開始したとすぐにわかるような音が流れた。どうやら成功したようだ。
「来夢! 自室に一番近いかくれんぼ最強スポット近くに来て‼」
私は放送を終わらせると、すぐに待ち合わせ場所に行った。
__A棟の体育館近くの男子トイレ。
体育館にはトイレがある。
それが暗号の答えだ。
来夢はこの意味を考えているに違いない。だが、それは49番も、下手したら2番も同じだ。
(来夢、早く来て……!)
私はもう、祈ることしかできなかった。
「かりんー‼」
来夢の声が体育館に響き渡る。
「来夢!」
私は胸をなでおろした。
「よかった、来てくれて__。」
「当たり前じゃん。で、どうしたの?」
「49番の隠れ場所がわかった。」
「はぁ⁉」
来夢は舌を出して、「言い過ぎた?」とでも言いたげのように苦笑いを浮かべた。
私は首を横にする。
これが私の知っている来夢だったからだ。
来夢が最後に会ったときと変わっていないことを知り、少しホッとしていた。
「かりん、場所は?」
私は目の前にある男子トイレを指す。
「噓でしょ。」
「本当だよ、たぶん。どこのなのかはわからないけど。」
「じゃあ……、探すよ‼」
「え⁉」
来夢の予想外な言葉に衝撃を受ける。
「来夢、それ。」
社会的に終わるのでは? と思うが、来夢は全く気にしていなさそうだ。
「このゲームで2回も人を仕留めたわたしは、もう社会的に終わっているから気にしなくていいよ。かりん! てことで行ってきます!」
「えぇ~~~~~~~~‼」
私は一歩後ろに下がった。
さすがにありえない。
でもそれよりも前にやらなければならないことを思い出した。
「__、来夢はまだ大丈夫だよ!」
「じゃあ、かりんも一緒に行く?」
誘われた。
もちろん断った。
「かりんは見守りよろしく頼むよ。わたしは探してくるから。」
「わかった!」
1つ目、2つ目が終わり、3つ目のトイレを探していると、ピコン、というあの不気味な音が鳴った。
『__________。』
「来夢!」
ゲームが終わ______らない?
私の体から、血の気が引いていく。
ゲーム終了のアナウンスがないということは、彼が白だったことを意味していたから。
殺されたのは49番だった。