第二幕 銀の騎士
内部で謀反が起き帝国に攻め込まれているオーラム王国城内で、僕は王国宰相と対峙している。
「姫をどこへやった、銀っ」
「内通者は、宰相。あなたでしたか」
王国宰相が、帝国兵を引き連れて、銀の騎士と言わしめた僕を囲もうとする。
「そうだ。愚王には心底愛想がつきた。娘っ子の一人を帝国皇太子に献上すれば、平和であったものを」
「貴方の利権を明るみに出そうとした姫を追い払おうと……そうですか」
「やかましい。ヤツは姫付きの騎士だ。殺せ」
王国宰相は帝国兵に命令を出した。
「この程度の兵に、やられる僕では」
しかし、僕は苦戦した。かなりの手練れだ。
「彼らは帝国の精鋭兵だ。貴様とて易々とは倒せん」
自ら戦う者でもなく、政治の椅子取りゲームに長けただけの宰相がエラそうに言い放つ。
「くっ、ここで倒れるわけには。姫と友のところに行かねば……死神よ」
僕は呪文を唱える。
「なんだっコイツ。急に強く」
「手加減されていたことすら気づかないとはな。帝国兵の精鋭といえどもこの程度」
「おのれ……まて」
右に左にと剣を振るい、帝国兵をなぎ倒していく。
自分の馬に向かって王城内を駆けながらも戦っていると、鬨の声が聞こえた。
「オーラム王、討ち取ったり」
姫付きの騎士とはいえ、自分の仕える王が侵入者の凶刃に倒れたようだ。宰相に唆されて王国近衛兵にも反乱者がいたのだろう。
「せめて、姫様だけでも、無事に暮らせるようにしないと」
そうして、王城の出口近くまで移動した。
「みつけたぞ、銀の騎士だ」
既に体は酷使した後だ。しかし、まだ戦わないといけない。
「いま死んでしまっては、元も子もないからな。死神よ」
僕は、再度呪文を唱える。
「くっ、コイツ。強い」
出口付近の帝国兵を蹴散らし、僕は愛馬のところへ駆けつけた。
既に数が少なくなり疲労困憊の王国兵達が、銀の騎士である僕の下に集う。
「守るべき王は既に倒れた。僕は姫様を守りに向かう。お前達は城を捨てて逃げよ。生きていたら、また会おう」
そう、言い放つと。
「銀様を守れ。姫様を生かすのだ」
敵に斬られたのだろう、深手を負っている小隊長が声をあげる。
「姫様を、よろしくお願いします」
少数となった王国兵達が、僕へと向かってきた帝国兵に突撃する。
「僕は、逃げよ。と言ったのに……馬鹿ども。が、感謝する」
白馬に跨り、僕は駆けだした。アエスの街に直接向かってはならない。追手を警戒する必要があるからだ。
「なぁに回り道をしても、半日もあれば追いつくさ。その時間すら、もう僕には貴重なのかもしれないが。ねぇ死神?」
僕は、迂回を繰り返した道順で、姫と友のいる街へ向かった。