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8/23

女子会



「・・・・・・。」



 その日、翔蓮寺朔夜は少し不機嫌だった。



「あ〜、朔ちゃん?話聞いてる?」



「え?ああ、うん…。」



(絶対聞いてないな〜、これ。)



 この日、朔夜は数週間ぶりに親友である明星瑞稀(みょうじょうみずき)望月栞(もちずきしおり)と共に帰り道の途中にあるファミレスに寄っていた。



 軽く紹介をするならば、



 ぱっちりした大きな瞳に目を引く整った顔立ちで、綺麗な金髪の髪をシュシュでポニーテールにし、学校指定のブレザーをお洒落に着崩し、周りの目を引くような大きな胸部装甲が特徴的なギャルが明星瑞稀。



 そして、



 つり目がちな瞳に鼻筋の通った綺麗な顔で、黒髪のセミロングにピンクのインナーカラーを入れ、学校指定のブレザーをお洒落に着崩し、控えめな胸部装甲を補うスタイルの良さが目立つギャルが望月栞だ。



「朔ちゃん、間違ってたらゴメンだけど…、なんかちょっと不機嫌?」



 栞がダルそうにしているのはいつもの事だが、朔夜がこんな風に心ここにあらずなのはかなり珍しい。



 そう感じた瑞稀は、少し心配そうにそう訊ねる。



「え、そう見える?ごめん、私なんか変だった?」



「いや、変って言うか・・・、ねぇ?しおりん。」



「ん〜、なんか心ここにあらずって感じ…。」



「そう・・・、だったか・・・。ごめん、話なんだっけ?」



 朔夜は、誤魔化すようにそう笑うと瑞稀に向き直る。



「いや、ウチの話より朔ちゃんのこの状態の方が気になるんだけど!?なんかあった?話聞かせてよ!」



「ん〜、そう言われてもなぁ・・・。そんな特別話すような事でもないんだよねぇ〜。」



「えぇ〜、じゃあさ!ぶっちゃけ、聞くけど。最近、私達とあんまり帰ってないのと関係ある?」



 瑞稀は興味深々といった感じで身を乗り出している。



「ん〜・・・・・・。」



 朔夜は朔夜でこれは話すべきかと悩んでいるようにも見える。



「話したくないなら、ないでいいんじゃない?誰にだって秘密の一つや二つ持ってるものでしょ?」



 二人の様子を黙って見ていた栞は、朔夜のフォローをする様にそう言った。



 普段はダルそうにしている栞だが、結構頼りになる世話焼きタイプでもあるのだ。



「そうだけど・・・、親友としては悩みがあるなら頼って欲しいって言う気持ちもあるし・・・。」



「気持ちは分かるけど・・・、ねぇ?」



 栞は「話しにくいことだってあるよねぇ?」とでも言う風に朔夜を見る。



「でも・・・、でも〜。朔ちゃんのことなら全部知りたいもん!いざって時に頼られる存在で居たいんだよぉ〜。」



 何故か瑞稀の涙のダムが結界し、ボロボロと涙を流し始める。



 瑞稀は普段からポジティブでめちゃくちゃ明るいギャルなのだが、感情のジェットコースターな部分もあり、たまにこうして感情が昂ると涙が溢れてしまうことがあるのだ。



「あ〜、もう!泣かないの!ねぇ、朔夜、瑞稀泣いちゃったよ?」(どうしても話せない感じ?)



 栞は横に座っている瑞稀を自分に寄り掛からせるようにして、ポンポンと肩を叩いてあげている。



「瑞稀も我が儘言わない!朔夜にだって私らに話したくないことぐらいあるよ。」



 瑞稀を慰めつつ、朔夜をフォローする。

 栞は、こういう時にとても頼れる姉御肌なのだ。



「ああ、もう!分かった分かったから!ちゃんと、話すから泣かないで、瑞稀!」



「グスッ、ホント?」



「いいの?朔夜?」



「うん、全然大丈夫!そもそも、そんな頑なに喋りたくないような事でもなかっんたんだ・・・、ちょっと…、恥ずかしかっただけで・・・。」



「ありがとう・・・。ごめんね、朔ちゃん。泣くつもりはなかったんだけど、勝手に涙が・・・。」



「いいよ。こっちこそごめん、なんか勿体ぶっちゃって。そんな重大な話でもないから、ホントに!」



 3人はその場を仕切り直す為に、ドリンクバーでそれぞれ好きな飲み物をとってくると、再び席に着いた。



「で?で?一体何があった訳?」



 瑞稀は先程の涙が嘘であったかのように、いつも通りに戻っていて、早く話を聞きたそうにしている。



 さすがは感情のジェットコースターだ。



「まず、何で最近二人と帰ってないかって言うと・・・、」



「言うと?」



「ん〜、ちょっと気なる人って言うの?がいて・・・。」



「え、嘘・・・!?あの、朔夜が!?」



 栞は信じられないとでも言うように、口をあんぐりさせている。



「キャー!!!やっぱり?実はウチもそうなんじゃないかって思ってたんだよね!!」



 瑞稀はほっぺに手を当てて、キャーキャー騒いでいる。



「それって、男の子だよね!誰!誰!どんな子?」



「それは私も気になるわ・・・。」



 珍しく、栞までもが興味深々だ。



「いや、気になるって言っても、ホントにただ気になるだけって言うか!興味本位っていうか・・・。」



「え〜、誰だろう?あっ!2組の霧島雄大とか!?サッカー部の!この前、朔ちゃん告白されてたよね?」



「あ〜、あのイケメンくん?」



 もはや、瑞稀と栞だけで盛り上がってしまっている。



「違う!それは断ったって言ったよね?」



「じゃ、じゃあ!誰なの?」



「うんうん。」



 瑞稀と栞がものすごく目を輝かせて身を乗り出して来る。



「えと・・・、同じクラスの朝日源之助って子なんだけど・・・。」



「朝日・・・?」



「源之助・・・?」



 あまりの予想外すぎる回答に、瑞稀と栞はキョトンっとした顔になっている。



 それもそのはず、あの朔夜が気になるくらいの男なら、かなりの高スペック男子だろうと思い込んでいた二人の頭には、朝日源之助の「あ」の字すら思い浮かんではいなかったのだから・・・。



「朝日源之助って、あの背が高い感じの?」



「あんまり、目立たない感じの子だよね?」



「そうだけど・・・。」 



「へ〜、そっかそっか・・・。」



「これまた以外な・・・。」



 瑞稀と栞は、二人して何やら考え込んだ後、再び朔夜に向き直る。


「じゃあ、今日はなんで不機嫌だったの?」



「喧嘩したとか?」



「あ〜、それは・・・。」



 朔夜の話を要約するならこうだ。



 最初は興味本位で話しかけていたものの、それが段々と楽しくなってきたので、毎日のように揶揄っていたのだが、今日いつものように話かけようとすると、まんまと逃げられてしまったのだと言う。



「いつも筋トレ、筋トレばっかり。どうせ暇なくせにさ・・・。」



 朔夜は、そう言いながら不満そうな顔をしている。



「そう・・・なんだ。じゃあ、なんで朔ちゃんは朝日くんが気になった訳?」



「ん〜、なんでだろ?自分でもよく分かんないんだよね。」



「じゃあ、揶揄ってて楽しいってのは?」



「ああ、面白いんだよね、源之助くんのリアクション!大袈裟って言うか。」



「それで?それで?」



「あとは、なんか可愛くて。すぐ照れちゃったりしてさ。イジりたくなるっていうか。」



朔夜は、何かを思い出すように穏やかな顔でそう言う。



「朔ちゃん、それって・・・。ねぇ?しおりん?」



「うん。」



「何?二人して?」



 二人が目くばせし合うのを、朔夜は不思議そうに見つめる。



「朔ちゃん!それってばつまり、こ!もががががッ!」



 瑞稀が何か言いかけたのを、栞が口を押さえ込んで止める。



「もがッ!ちょっと!何すんの、しおりん!」



「アホ。朔夜が気になるだけって言ってんだから、まだ決めつけるには早いでしょ?」



「そうだけど!」



「ちょっと何?なんの話?」



 朔夜の質問に栞は呆れたような顔をする。



「朔夜はいつも怖いくらい勘が鋭いのに、こういうのには鈍いんだね。」



「だから、何のこと?」



「あ〜、いいのいいの!朔ちゃん!それよりもっと朝日くんについて教えてよ!」



瑞稀は誤魔化すように、朔夜の質問を遮ると、朔夜にそう訊ねる。



「ん〜、でもそのくらいかなぁ?だから、一緒にいて楽しいんだよね。」



「へ〜、それにしてもあの朔夜がねぇ〜。」



 栞が感慨深そうにそう言う。



「ホントだよねぇ〜、いっそのこと朔ちゃんのそのエッロい体で誘惑でもしちゃえば〜?」



「ちょっと?そんな話じゃなかったよね!」



「そうだぞ〜、瑞稀。まぁ、でも実際エロいけどね。朔夜が誘惑したら落ちない男なんて居ないでしょ。」



「栞まで何言い出してんの?そんなこと言うなら瑞稀のその胸の方がよっぽどでしょ。」



「あ!今、ウチの胸バカにしたな!」



 瑞稀は自らの胸を抱えるように腕で隠し、顔を赤くしている。



「そんなこと言うなら、しおりんのスタイルの方がなんかエロいじゃん!」



「アンタ、私の胸バカにしたら許さないよ?」



 瑞稀と栞が誰のどこがエロいだのと、ヤイヤイ言い争いを始める。



「こら。恥ずかしいからやめな。」



「ぶ〜、でも、朔ちゃんが結局一番エッロいってのは譲らないから!」



「私も〜。」



「アンタらしつこいよ。てか、間にちっちゃい「ツ」入れるのやめてくんない?」



 その後も、いくらかしょうもない言い合いをしたのち、結局また朔夜の気になる人の話に戻ってきた。



 3人の会話はいつもこのように本題から逸れに逸れまくるのが常なので、このようなことは日常茶飯事なのだ。



「ちなみに、朔ちゃん。朝日くんの反応的にはどうなの?」



「う〜ん、やっぱりまだ警戒されてる感じ?あの子優しいから、構ってはくれるけど、向こうから話しかけられたこと一回もないんだよね。」



「え!?そんな男いるんだ・・・。」



 栞は信じられないという、顔をしている。



「あと、ちょっと気になることがあって・・・。」



「その心は?」



「多分だけど、源之助くん、女の子が苦手なんじゃないかな。」



「なんでそう思ったの?」



「何となく怖がられてる感じがするし、触るといつも微妙に震えてるんだよねぇ。」



「まぁ、朔夜が言うならそうなんだろうね…。」



「でも、なんでなんだろう・・・?過去になんかあったのかな?トラウマ的な?」



 瑞稀の言葉に、2人はう〜んと頭を巡らせる。



「源之助くんに、トラウマねぇ・・・。」



 結局その後、色々話していく内に全く関係のない話に逸れていき、普通に2〜3時間談笑した3人は、ファミレスを出た後で解散した。



 


今回はギャルの女子会のお話でした…。


話逸れまくって、結局本題話さないやつあるある!と思った方は評価・コメント等よろしくお願いします!

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