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3話 一緒にお風呂って……

 裏門を出て一本道を通り右折してちょっと歩いたところにある家が凛さんの家だった。ちなみにここから2分ほどでこないだの横断歩道、ちょっと歩いて私の家だった。もし私が今の高校の中等部から入っていれば凛さんともっと早いうちから知り合っていたのかもしれない。

「ちょっと玄関で待っててね!」


 家のドアをくぐった私はそこで凛さんを待つことになった。思いのほか凛さんはどたどたと音を立てながら廊下の奥へと小走りし、タオル片手にすぐ戻ってきた。

「足首までは拭いたけど足は拭けなかったから…… それじゃあ、まずは右足から脱いでこのタオルの上にのせてくれる??」

「靴下ぐらい自分で脱げます……」


靴を脱いでジトっと足に張り付いた靴下を引っ張った。おもらし遊びなんてよく一人でやるから知っていたがこの張り付いた靴下というものは少し脱ぎにくい。なかなか足がぬききれずふらりと少しバランスが崩れる。

「おっと、ほら、私の肩に手を当てて」

よろけた私の手を取り、自身の肩に置かせる。濡れた靴下を触っていたんだから私の手は濡れてるっていうのに……

調子狂うなぁ……


 まるでおもらししちゃった子供のように、何から何まで凛さんにされた。靴下を脱がされて足を拭かれた。すると私の家でもよく聞く音が家中に響いた。そのメロディの後にお風呂がわきましたとメッセージが入る。どうなってるのだろう、凛さん、いろいろと用意周到過ぎる……

「ちょうど沸いたよ。いつも帰ってきてからお風呂にはいれるように予約しているんだ。ねっ、葵ちゃん。私が洗ってあげようか!」

「だ、大丈夫です」


 この人に対して遠慮しても何の意味もなさないのはすでに分かっているはずだった。

「でも、ほら、私の肩、葵ちゃんの……」

途中で予測ができたから私は言葉を遮り謝る。

「ごめんなさい…… クリーニング代払いますので……」

「うそうそうそ! ごめん……葵ちゃんかわいくてちょっといたずらしちゃった。私が肩に葵ちゃんのおてて乗せさせたんだから気にしなくていいよ! でも葵ちゃん、なんだか妹みたいだから一緒にお風呂入ってみたくて」


――――――――――――――――――――


 意地悪だともおもったし、やっぱりお節介すぎるとも思った。私も凛さんも一人っ子で姉妹なんていたことがなかった。だからこの人は私にとって少しお姉ちゃんのように感じられてしまった。誰かと一緒だとおそらくすかすかなお風呂も二人だときつかった。はじめは誰かとお風呂に入るなんてと思っていた私でさえこのひと時は楽しかった。凛さんの体を洗ってあげて、今度は私が洗われる番。


 誰かに神触られたり体触られたりするのってほんといつぶりなんだろうか。あれ、えっ……

ふいにまたおしっこがしたくなってきた。わざとおもらしをしようとして大量のお茶を短時間で飲んだことがあるような人にしかわからないが、一度限界のおもらしをしても飲んだお茶はまたすぐにおしっこに変換されてすぐに膀胱が満たされるのだ。凛さんが後ろにいることをいいことに、私はこっそりと前をぎゅっと抑えた。


 「葵ちゃん…… もしかしてまたおしっこしたかったりする??」

「えっ、えっ、あっ!」

しゅうぅぅぅと音を立てながら急におしっこが出てしまう。驚いたせいというか不意を突かれて気が抜けたせいというか。

「ごめんなさい、ごめんなさい…… 人のお家で……」


 ぴちゃぴちゃと音を立てながら出たおしっこは排水溝に流れていく。

「いいよいいよ、さっき私が葵ちゃんにおしっこ全部出せたか確認してし、そのままお風呂に連れ込んじゃったから… それに、私もシャワーの音とか聞いてたらしたくなっちゃうときあるし?? って、私の話は忘れて。 さ、全部出たかな?」

なんというか人生で一番の羞恥心を味わっている気がした。でも凛さんも少し恥ずかしそうにしていた。私はこくりとうなずいた。

すると凛さんはシャワーの蛇口をひねり、まずはお風呂の床を流し、今度は私の股、そして体にお湯をかけてくれた。


 なんというか、凛さんに出会ってから私のペースがずっと崩されっぱなしな気がする。私も普通に高校1年生なはずなのに。でも別に嫌という感情が私の中にあるわけではなかった。むしろすこし心地よかった、お姉ちゃんができたみたいで。ただ、それでも納得できないほどお節介すぎると思うけれど。


「はい、しっかり乾いたよ葵ちゃんの髪」

お風呂を上がり、体を拭かれて髪を乾かされた。凛さん、なんでこんなに…… 学級委員長だから?それとも私が子供っぽいから?

「ねえ葵ちゃん、ごめんね、まだ葵ちゃんの服、乾いてないんだ。だからさ、一緒にそこのウェルシーまでいかない? 着替えは私の貸すからさ!」

「う、うん」

私の家すぐ近くなんですがとは言えなかった。なんというか圧に押されてしまった。

ちなみにウェルシーというのは家の近くにあるスーパーみたいに食料品もおいてあれば薬も置いてあるようなお店のことだ。


 「ばんざーいっ」

なんだか拒否するのもばかばかしくなってきて私はショーツをはかされ、服を着せられ凛さんにされるがままだった。

「うん! ピッタリ! その服中学生になって初めて友達と買いに行った服で、かわいくて好きだったんだけど背が伸びちゃったせいで着れなくなっちゃったんだよね。でも葵ちゃんに着てもらえてうれしいなぁ」


普通なら、いや、いつもの私ならこんな言葉を聞けば、私はあおられているのではないかと身構えていたかもしれないが、凛さんのこの笑顔を見れば悪意がないのは一目瞭然だった。少し癪に障るけれど、このちょっとした青いラインが入った白いワンピース。私に着せられた清楚な見た目のお洋服。私の好みにはあっていた。

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