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赤ずきんと眠り姫・1

庶民の『精霊の愛娘』を書こうとした結果、いつもと雰囲気の違う話になりました。

サブタイトル通り色んな童話をミックスしてアレンジし、オリジナル要素を加えた感じです。登場キャラの固有名は出てきません。

書き方もいつもと変えているので、読みづらかったらすみません。

「じゃあ赤ずきんちゃん、今日もお願いね」

「はーい。行ってきまーす」


 元気良く返事をし、赤ずきんちゃんはいつものように葡萄酒とパンをバスケットに入れ、いそいそとおばあちゃんたちの住む森の奥へと入っていきました。




「おばあちゃーん、来たよー」

「あらまあ、いらっしゃい、赤ずきんちゃん。よく来てくれたわね」

「うん! だってようやく、おばあちゃんにお話の続きを聞かせてもらえるんだもの!」


 つぶらな瞳をきらきらと輝かせ、赤ずきんちゃんは出迎えてくれたおばあちゃんを見上げます。

 そんな孫娘の様子に、おばあちゃんはついつい苦笑してしまいました。

 とりあえず赤ずきんちゃんを奥に通し、居間のソファに並んで座ります。


「そんなに続きが気になるの? どこまで話したかしら」

「ええと、『眠り姫』の女の子が小さい頃にお母さんが死んで、お父さんと二人っきりになったけど、十歳になってからはお父さんのお店の手伝いをしようと思って、あやしい森の中に薬草やキノコをとりに入っていったところまで!」

「ああ、そうだったわね。でも、貴女が考えているような、ドキドキやわくわくはなかったのよ」

「えー、そうなのー?」

「ええ。だって……」




 ──女の子には、精霊という、生まれた時からの仲良しのお友達がいます。

 彼らは女の子に危ないことが起きそうになれば、すぐに先回りをして彼女を守ります。

 熊を見つければ、女の子がそこを離れるまで眠らせたり。

 毒の空気を出す花畑があれば、彼女を促して回り道させたり。

 人間を狙う魔性の木を見つければ、さりげなく焼き払って消滅させたり、彼女のために忙しく動き回っていました。


 森の中心には、精霊たちにとってとても居心地のいい、澄んだ広い池と、それに囲まれた大きな木があります。

 せめてものお友達へのお礼にと、女の子は森に入る時には、必ずそこに寄るようになりました。




「それ、この家の裏にある池と同じような場所なのかな?……わたし、いつもそこで夏に泳いでるけど、精霊さんたちを怒らせちゃうかも……」

「大丈夫よ。精霊たちはみんな、赤ずきんちゃんが大好きだから」

「そうかなあ。おばあちゃんやおじいちゃんには敵わないと思うけど。この魔除けのずきんだって、おばあちゃんが精霊さんに頼んで作ってもらったんでしょ?──それはそうと、女の子はそんな寄り道してて、キノコとか薬草は大丈夫なの?」




 ──池の周りには、女の子のお目当ての薬草がたくさん自生しているので、目的も果たせて一石二鳥です。


 そんな風にして、毎月のように森に通い続けて五年。女の子は元々とても可愛らしかったけれど、日に日に大人びて、どんどん綺麗になっていきました。

 そんな時です。女の子のお父さんが、新しいお母さんとお姉さんを連れてきたのは。




「? 妹ならわかるけど、お姉さんって新しくできるの?」

「そうね、どう言えばいいかしら。女の子のお母さんはかなり前に亡くなっているから、お父さんは女の子のために、お母さんをやってくれると言う女の人を見つけて家族になったの。その新しいお母さんには娘さんがいて、当然その子も一緒に暮らすことになったわ。その子は女の子よりも年上のお姉さんだから、家族の中でも『お姉さん』になったの。ほら、赤ずきんちゃんが好きなシンデレラにも、同じことがあったでしょう?」

「あ、そうだ!……ん? でも、シンデレラのお姉さんたちって、お母さんと一緒にシンデレラをいじめてたよね。じゃあ、女の子もそのお母さんとお姉さんに……」

「そうとも限らない、と言いたいけれど……」




 ──残念なことに、女の子と新しい家族の二人とは、仲良くなることはできませんでした。

 勿論、仕方がない面もあります。女の子は多くの精霊に愛される代わり、一日の半分以上を眠っていなければならず、そもそも新しいお母さんやお姉さんと、交流する時間がほとんどありません。

 女の子が眠っている間、お母さんとお姉さんはお店に出て、積極的にお客さんの相手をしたり、自分をモデルに綺麗な服や化粧品を売り込んでみせたりと、仕事面でどんどんと存在感を増していきました。

 商売人であるお父さんは、そんな妻と娘をとても大切にするようになり、女の子のことは忘れたりこそしないものの、以前のように最優先で考えることはほとんどなくなってしまいました。




「うーん……シビアだねえ」

「あらあら、赤ずきんちゃんはずいぶんと難しい言葉を知っているのね」

「うん。お父さんや、薬草を買ってくれるお客さんたちが時々使うんだよ。それで、女の子はそれからどうなったの?」




 ──新しい家族ができて一年が経った頃、女の子は精霊たちからこんなことを聞かされました。


《大変大変! あの継母とその娘が、君を追い出そうとしてる!》


 いきなりそんなことを言われても、急には信じられません。

 けれど、嘘というものには縁がない精霊たちです。まして友達である女の子相手に、でたらめを教えるはずもありません。


 それでも確認のため、軽く寝溜めをしてから、二人の内緒話を盗み聞きしてみました。




「盗み聞きってほとんどの場合、聞きたくないことを聞いちゃうんだよ、ってお兄ちゃんが言ってたなあ」

「あらまあ。お兄ちゃんは何を聞いちゃったのかしらね」

「ええとね、お兄ちゃんが好きな子の好きな子だったかな? お兄ちゃんじゃなかったみたい」

「あらら……」




 ──精霊たちの言うとおり、家族であるはずの二人は、女の子を追い出す計画を立てていました。

 彼女に精霊の守りがあることは誰でも知っているはずだけれど、二人はエイザールの外から来た人たちなので、『精霊の愛娘』のことはよく知らないようです。

 だからと言って何もせずにいるわけにもいかず、女の子は自分から家を出ることにしました。本当の家族のようにはなれなかった二人でも、お父さんやお店にとっては大事な存在になっているので、さほど役には立っていない自分がいなくなる方がいいだろうと思ったからです。


 そうして女の子は、精霊たちとともに、この六年間ずっと通い続けた森の中へ入っていったのでした。




「ただいま。……おや。よく来てくれたね、赤ずきんちゃん」

「お帰りなさい、あなた」

「お帰りなさい、おじいちゃん。今ね、おばあちゃんに『眠り姫』の女の子のお話をしてもらってたの!」

「ほう。それはどの『眠り姫』のことだい?」

「あのね、商人のおうちに生まれた子のこと! 新しいお母さんとお姉さんから逃げて、森に入っちゃったところまで聞いたよ!……おじいちゃんは、その子がどうなったか知ってる? おばあちゃんは『ちゃんと幸せになるよ』って教えてくれたけど」

「ああ、勿論。でも、全部話すには時間がかかるな」

「私は夕食の支度をするから、その間に続きを教えてあげてちょうだいな。キノコと燻製肉のシチューにするわね」

「お、いいな。ありがとう」

「わーい、楽しみー!」

「それはお話が? それともシチューの方かい?」

「両方!」

「あらあら、赤ずきんちゃんは正直ね」


 そして、語り手をおじいちゃんに替えて、赤ずきんちゃんへの物語は続くのでした。


キャラの年齢設定は、赤ずきんちゃん(10くらい)、おじいちゃん(50代半ば)、おばあちゃん(50そこそこ)です。まだ若い祖父母。ちらっと話に出たお兄ちゃんは、妹より二歳年上です。

おじいちゃんは、原作で言えば猟師ポジです。他にも色々やってますけど。


ちなみに、赤ずきん=魔除けのずきんは、おばあちゃんたちの住む森はそれなりに猛獣やら何やらが生息するので、そこを安全に歩いてお使いをするために作られた特製アイテムです。さてはて、そんなものを調達できるおばあちゃんとは一体。

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