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2・我に返った二人

 お爺さんとお婆さんはある時ふと気が付きました。


「そういえば婆さんや、腹が減ってはおらんか?」


「お爺さん、私は全く。でも、どうやら外は暗くなってきているようですね」


 お爺さんとお婆さんは朝からヒャッハーしていて気が付いたらすでに夕方でした。


 お爺さんは空腹と共に大事なことを思い出しました。


「そうじゃ、炭焼きをせんといかん」


「そうですね。私も炭を入れる袋を編まないと」


 二人はヒャッハーしていて自分たちがやるべきことを忘れかけていたのでした。

 しかし、二人は我に返り、それぞれの仕事を始める事にしました。



 それからしばらくは炭を焼いては数日ヒャッハーをする日々を送りましたが、どうにもそれだけではつまらなくなってきました。


「ワシの炭が高く売れるのは良いが、若返って焼く量が増えたら忙しくなりすぎた。いっそ、頭に浮かんだ知恵を使ってみるかの」


 お爺さんは若返った後もそれまで同様炭を焼き続けましたが、若い分、これまでよりも広範囲に木を伐りに行ける上に、焼こうと思えば体の無理もきくため、調子に乗って焼き続けていました。するとどうでしょう。評判が評判を呼び、さすがに若さだけでは捌ききれない注文が来るようになってしまったのです。


 これではまずいと思ったお爺さんは知恵の実を食べて以降、頭に浮かんでくるギルドなるものを作ると楽になると思いいたりました。


「婆さんや、ワシは炭焼きぎるどを作ろうと思う」


「それはいいですね。お爺さん。私たち二人では捌ききれないですから仲間を募って協力しましょう。そうすれば皆が幸せになれますよ」


 次の日からお爺さんは周りの炭焼き達を廻ってギルドの話をしましたがなかなか協力しようという人はいませんでした。


「お前があの山の爺さんの何なのか知らんが、俺たち束ねて何をしようってんだ?上客かっさらいやがって、その落とし前つけやがれ!!」


 会いに行くだけで皆にその様に追い返されてしまいます。


 このままではギルドを作るどころではありません。


「仲間を集めなければぎるどが作れない。はて、困った」


 お爺さんは困り果てていました。


「お爺さんや。ぎるどというのは職人を育てるところではないんですか?皆はお爺さんのような炭を焼けないんです。皆がお爺さんの炭を焼けるように教えれば仲間になってくれるかもしれませんよ」


 お爺さんはその言葉にハッとし、駆け出していきました。


 それからしばらく後、お爺さんの指導を受けて同じような炭が焼けるようになった炭焼き達がギルドに参加するようになったのでした。


 ただ、お爺さんはギルドが何を指すのか、実際のところは詳しく知りません。お爺さんの頭に浮かんだのは、妖怪を退治する人々が集うところという、イマイチ理解できないものでした。しかし、そこには仲間と助け合ったりギルドが問屋と商いをするという知識があったので、ギルドを作ったのでした。

 そして、その知識を使い、束ねた炭焼き達の炭を一括して商人との商いを行うようになっていきました。


「炭は順調にいくようになった。もう、あいつらだけでも回していけそうじゃ。炭が出来たら今度は鍛冶屋を呼んで鍛冶屋町を作りたいのぉ」


 お爺さんはまた新たなことを思い立ちました。そして、若さを生かして山の向こうまで出かけて鍛冶屋を呼んでくることになりました。


 お爺さんには鍛冶は出来ませんがいろいろな知識が頭に浮かんできます。その中には鍛冶に関するものもあり、それを聞いた鍛冶屋が幾人か興味をもって里へやってきてくれました。

 鍛冶に使える良質な炭があるので鍛冶屋は大喜び、そして、お爺さんの知識を実践してみると面白いように良質の道具が作れるのです。


「あんたすげぇや、こいつは良い。まだ何か知ってることがあったら教えてくれ」


 鍛冶屋たちはお爺さんに感謝し、そのまま里で暮らすことになりました。


 ただ、それが長く続くと山の木がどんどんなくなっていきます。それを見てお爺さんは思いました。


「これではいかん、木こりを呼んで山を育ててもらわねば」


 お爺さんは山に入り木こりたちと話をしました。木を切るのが仕事の木こりはお爺さんをうさん臭く思っていましたが、木を切るだけでなく自分で山を育てるという斬新な考えに興味を持った数人がお爺さんについていくことになりました。


「山を育てるのは二代三代かかる大仕事じゃ。その分、誇れる仕事になるじゃろうて」


 そう言って、お爺さんは植林という知識を木こりたちに教え、はげ山に新たな苗木が植えられていくようになりました。


 お爺さんはそうやってどんどんいろいろな人たちを里に呼び、いつしか麓の町まで吸収して大きま街が出来上がるまでになっていきました。



 そのころお婆さんも知恵の実によって得られた知識を使っていました。


 お婆さんがまず始めたのは畑仕事についてでした。

 木の鍬を鉄先の鍬に変えること。それだけで効率は良くなりました。草や落ち葉を肥料としてすきこむことも忘れません。そうすることで作物の育ちが違います。


 お爺さんが炭焼き達を束ねると、お婆さんもそれに伴って周辺のお百姓さんたちに鉄先の鍬や肥料のすきこみ方を教えて回ります。

 それは、炭焼きギルドが大きくなれば人が集まり、食料がたくさん必要になることを見越していたからです。

 

 そうすると、鉄先の鍬が足りなくなります。鍛冶屋たちを多く集めないといけません。

 良質な炭ができた事でお爺さんが鍛冶屋を呼び、お婆さんが必要な農具を彼らに注文する事で、鍛冶屋たちにも仕事が増えました。


 こうして大きくなった街は豊かに発展を続けていくのでした。


めでたしめでたし

 

 


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