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1・桃を食べた二人

 昔々、ある処にお爺さんとお婆さんが住んでおりました。

 お爺さんは山へ入り、お婆さんは川の方へ出かけていきました。


 二人はどこへ行ったのでしょうか?まず、お爺さんを置きかけてみましょう。


 お爺さんを追いかけるとそこは林の中でした。


「これとこれは良さそうだ」


 お爺さんは木を吟味しては切っています。どれもあまり大きくはありません。お爺さんは木こりではないようです。

 お爺さんはそうやって木を切って行き、担いで家へ戻るようです。

 さて、お婆さんはどこへ行ったのでしょうか?


 お婆さんを追いかけて川の方へ向かいましたが、お婆さんは居ません。洗濯ではなかったようです。道が続いているので川沿いを下ってみることにしましょう。

 しばらく下ると開けた場所に出ました。どうやら街道のようです。更に街道を下っていくとそこにはずいぶん栄えた街が見えてきました。この辺りの宿場町なのでしょうか。

 町中を進んでいくと、居ました、お婆さんです。


「このわら束を貰おうか」


 お婆さんはいくつかのわら束を買っている様です。


「次の荷は何時できるんだい?」


「今、お爺さんが山に入ってるから七日もしたら卸せるんでなかろうか。これもかえって編まんといかんで」


 そんな会話をしております。どうやらこの二人は何かを宿場町に卸している様です。


「七日後かい、待ってるよ。あんたん所のは出来が良いから好評でね、あればあるだけ欲しいんだ」


 相手の言葉に「まいど」と声をかけてお婆さんはわらを背負って帰るようです。

 お婆さんは街道から川沿いの道へと入り歩いて行きます。川はさらさらと流れており、この辺りはちょうど歩きやすい場所になっているようです。


「あれ?珍しいもんが流れてるでないかい」

 

 お婆さんが何かに気づきました。何かが川を流れています。しかし、よく見付けましたね。それは何かの実のようです。

 川に近づいたお婆さんはそれが何かを確かめている様です。


「桃かの?桃が川を流れるとは珍しい」


 お婆さんは川に入り桃を拾いました。見た感じ、触った感じ、不思議な事に潰れたりはしていないようです。ニオイを嗅いでみたところ、腐っているという事も無いようでした。


「食べられそうな桃じゃ、持って帰ろう」


 川を流れていた珍しい桃をお婆さんは持って帰るようです。


 家へ帰ると家の裏を覗きます。そこには家より一回り小さな雨よけがされたものがあります。その中へお爺さんは長さを切りそろえた木を立て掛けているところでした。


「お爺さん、帰ってきましたよ。町の衆が心待ちにしていると言っとりました」


「おお、そうか、明日には火も入るから五日もすれば出来るじゃろう。町へ持って行くんは七日後かの」


「ええ、その様に言っておきましたよ」


 お婆さんがそういうとお爺さんも分かったというように手を挙げて作業に戻っていきました。


 お婆さんは家へ入り、お爺さんは黙々と木を建屋の中に並べています。

 しばらくしてお爺さんは木を並べ終えて家へ入っていくようです。あれは炭窯でしょうかね?


「あ~、終わった。もう寒くもないというのにそんなに急かす事も無かろうに」


「お爺さんの焼く炭は町でも評判らしいで、みんな待ってるんですよ」


 お婆さんはそう言ってお膳を並べていきます。


「ん?これは桃か?」


 お婆さんの出したお膳に見慣れない白いモノを見つけたお爺さんがそう尋ねました。


「ええ、帰りがけに川を流れていたんですよ。秋にお爺さんが山で拾ってきた赤い実よりもおいしそうじゃろう?」


「ああ、あのシャリシャリした実のお。あれを食ってなんだか知らんが色んなものが頭の中にわいてくるようになったのお」


「ええ、そういえば、炭窯で竹を焼いたら、ふぃらめんとが出来るんじゃないんですか?がらすをどこで手に入れるのか、がらす玉の中の空気を抜く道具やらが見当も付きませんがね」


「ああ、焼くのは良いが、そのあとがなぁ。硫黄と硝石というのがあれば火が付けられるというのもあるの。鍛冶やら何やようわからんモンまで浮かんでくるが、材料がどこで手に入るのか皆目見当もつかんのぅ」


 どうやら二人は知恵の実に似た変な果実も食してしまっている様です。

 でも、そうですよね。知識があるからと言って、材料が容易に手に入るなんてことはありませんよね。


「あの実を食べてすもおくってモンが出来る様になったし、白炭黒炭の焼き分けまで出来る様になったんは良かったの。おかげで大助かりじゃ」


 どうやら生活に必要な知識は使えている様です。山で獲った獣や川で獲った魚を燻製にする知識を生かして生活が向上している様です。


「この桃はあまいのぉ」


「ええ、甘いですねぇ」


 二人は桃を満喫している様でした。


 次の日の朝、お爺さんは目を覚ましてびっくりしました。目の前に居たのは若い女だったのです。


「お前は誰だ?」


「あんたこそ、どこの男じゃ?」


 女はお爺さんに対して同じようなセリフを口にしました。そして、お爺さんは思い出したのです。


「婆さんか?まるで夫婦になる前みたいでないか」


「お爺さんですか?まるで・・・」


 そして二人は自分の体を見ます。するとどうでしょう。自分が若返っているではないですか。


「婆さん」


「お爺さん」


 朝だというのに二人はヒャッハーしてしまいます。


「なん十年ぶりかの、たまらん。たまらんぞ!溜まったものを全部~」


「ああ、久しぶり。イイですよ、お爺さん」


 二人は我を忘れて一日中ヒャッハーしていたそうです。


 めでたしめでたし





 

不定期更新です。次は何時になるかわかりません。

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