何かようかい?
「色は覚えていますか?」
北条が訊ねる。
「色……?」
「犯人グループが着ていた、服の色です」
彼女は少し考えたあとに答えた。
「そういえば、全員、黒い服を着ていたような気がします……」
「他に覚えていることは?」
「黒いワンボックスカーから降りてきた、と言うことぐらいでしょうか」
「他には?」
北条の畳み掛けるような問いかけに、看護師はやや気分を害したらしい。
次第に返答が少なくなってきた。
やがて。
「どうぜあなた達刑事さんは、あれこれ憶測してるんでしょ? 何か医療ミスでもあったんじゃないかとか、被害にあった人間の共通点とか……」
「その通りですよ」北条が答える。
聡介としては、ここはお茶を濁しておこうと思っていたのに……。
「我々は、警戒しているんです」
「警戒……?」
「犯人グループは恐らく未成年です。その内、死者が出るかもしれません。いえ、1人既に亡くなっています」
北条の言うことに、その場にいた全員が青くなった。
「子供なので、段々と調子に乗って抑制がきかなくなるでしょう」
「そうかもしれません。けど……あなた達にだって守秘義務があるように、私達にもあるんです。絶対に口にできない事情が……」
しばらく誰も口を開かなかった。
しかし、
「ねぇ、刑事さん! ママを助けて!! このままじゃパパだって狙われるかもしれないわ!!」
看護師の娘が叫んだ。
「……あなたのパパも、安芸総合病院に勤めているの?」
「い、いいえ。パパは……中国医大の教授で……」
マリちゃん、と富澤祥子は娘を止めた。
「とにかく、もうこれ以上お話できることはありませんから」
それが最終通告となった。
※※※※※※※※※
今夜だけは特別、病院に泊めてもらえることになったから、と茉莉花が言うので少し安心しつつ、周は姉と、刑事達と一緒に病室を後にした。
そして周にはどうしても気になることがあった。
廊下を歩きながら、どちらにともなく話しかける。
「あ、あの……」
2人が同時に振り返る。
「和泉さんは……?」
すると。北条はニヤリと嫌な笑顔を浮かべ、周の肩に太くてごっつい腕を巻きつけてきた。
下手に逆らうと首を絞められるような気がしたので大人しくしておく。
「気になるの?」
「だ、だって……和泉さんに電話したのに、あいつが出たから……」
「あいつ?」
「……あいつだよ、駿河……葵って奴」
「実はねぇ……有休とって、2人で旅行に出かけたのよ」
「えっ?!」
周は思わず足を止めてしまった。
「なんで……?」
すると北条はおかしそうに、
「か~わいい!! ねぇ、聡ちゃん。この子を家に持って帰っていい?」
「……」
「冗談よ。じゃ、アタシはちょっと出かけるから。ここでさよならね?」
変な人だ……和泉の知り合いだけある。
「なぁ、周君。君は彼女から詳しいことを聞いていないか?」
聡介から不意に訊ねられ、そう言われてみれば……と思い起こしてみる。
彼が到着するのを待つ間、茉莉花と母親の間でいくらかあった遣り取りを一から十まで聞いていた訳ではないが、なんとなく覚えている範囲で答えることにする。
『まさか、あの先生のせいなんじゃないの……?!』
『やめなさい』
『きっとそうよ! だって、あの先生がママの言うこと聞かないで……!!』
『やめなさいって言ってるでしょう?!』
「あの先生……?」
「名前はわかりませんでした。けど、なんとなく狙われる理由に心当たりがあるような感じがしなくもなかったかな」




