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あれって、高いところは値段も高いんだよな。

 そんな遣り取りをしながら歩いていると、

「あ、旦那。おはようございます」

 不動産屋の玄関先で、掃き掃除をしている中年男性が友永に声をかけてきた。


 つるつるの頭に、出っ張った腹部。あまり顔に似合わないちょび髭をはやした、やや胡散臭い人物である。


「よぉ、久しぶり」

「ねぇ、マンション買いません? いい物件紹介しますよ~」

「悪いけど、それどころじゃねぇんだよ。昨夜……いや、一昨日か。そこであった事件のことで訊きたいんだ」


 男性はサスペンダーの紐をぱちん、と弾いてからキョロキョロと辺りを見回し、

「いや~……友永の旦那だからお話しますけどね。あの、亡くなった方……ちょっと変だなって思ってたんですよ」


「何が変なんだ?」

「まま、どうぞ中へ……」


 勧められるまま中に入る。

 革張りのソファに腰かけると、なんだかどっと疲労を感じた。


 少しお待ちを、と男性は奥へ引っ込む。


 駿河はなんとなく壁に貼られている賃貸マンションの間取り図を眺めた。


「いや~、お客さんのことどうこう言うのはあれなんですけどね……」

 不動産屋は緑茶の入った湯呑みを3つ、手ずから持ってきて向かいに腰かけた。


「最近、駅前に高層マンションが建ったじゃないですか。ビッグフロント広島ってやつですよ」


「ああ……」

「一階には何店か有名なお店が入っていて、東棟と西棟に別れてて、あれ実は県内で一番高いビルなんですよ? 今、駅の南側は再開発事業が始まっていて……あそこは新しいのと駅前だっていうので、なかなかにお値段が張るんですよね」

 どうも前置きの長い人だ。


 駿河がじっと相手の顔を見つめると、なぜかびくっと震えられた。


「あの亡くなった方、ご家族と一緒に住みたいから空きがないかって言ってこられたんですよ」


「……その、高層マンションにか?」

 友永がお茶を啜りながら訊ねる。


「ええ、そうなんです。正直言って最初ウチの店にいらした時は、身なりからしてちょっとねぇ……不安だったんですよ。そりゃ、貧相な格好をしている大金持ちがいない訳じゃありませんけど」

「で?」

「なんでも息子さんが2人いて、長男はお医者さん、次男は売れっ子の役者さんだと仰るんですよ。事情があって離ればなれになっていたけど、やっと再会できて……2人とも独身だから、しばらくは一緒に暮らそうって言う話になったそうなんです。仮に息子さんが所帯を持ったとしても、いずれは同居できるように広くて新しいマンションを買おうっていう話になったそうで」

「……ふーん……」


「その時は、時間がないからって内覧はまた後日ってことになったんです。で、確か2日後だったかなぁ……服装は相変わらずだったけど、カバンだけ立派なブランド物を提げて来られましてね。こっちが訊いてもいないのに、息子がプレゼントしてくれたんだって嬉しそうに話してましたよ。息子さんの話は案外、ガセでもないのかな……なんて、そんなことどうでもいいですね」

 しゃべり過ぎて喉が渇いたらしい不動産屋は、お茶を一口飲んだ。


「その挙げ句に、例の事件でしょう? たぶん、息子さんがお医者さんじゃっちゅう話は本当で……若いギャングに襲われたのを庇って殺されちゃったんじゃないかって、ウチらの間では噂になってるんですよ」


 礼を言って不動産屋を出る。


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