KYと言われようがなんだろうが
今、このタイミングはどうかとも思ったが、チャンスだと思った。
「悪いが、先に行っててくれ。ちょっとだけこいつと話があるんだ」
駿河は何の疑問も挟まずに靴を履いて、先に外へ出る。
「なぁ、志乃。お前……【蓮】っていう名前のホストを知ってるか?」
もちろん、と彼女はあっさり答えてくれた。
「だってあたし、いつも指名してたもん。でもねぇ~……蓮って人気者だったから、なかなか長い時間は無理だったなぁ」
「だった……って、もうホストはやめたのか?」
そうじゃないよ、と志乃はパーマの取れかけた髪をいじりながら言う。
「彼、亡くなったもの。自殺したって聞いた」
そうだった。
あの日、智哉に話しかけてきた女性は確か『死んだなんて嘘だったのか』と言っていたことを思い出す。
「自殺の原因を知ってるか?」
さぁ、と志乃は首を傾げる。
「すっごく明るい子だったよ。あの子と話してると、なんかいつの間にか日頃の不満とか、忘れちゃえたんだ。聞き上手っていうのかな? 天性のホストだったと思うよ」
へぇ、と相槌を打ちながら胸の内で思う。
顔は似ていても中身はかなり違うようだ。
とは言っても、一緒にいると癒されるという点では智哉と共通している。
あの子は静かで自己主張も控え目で、もっとワガママを言えばいいのにとも思うのだが。
「その、亡くなったのは何年ぐらい前の話だ?」
「えーと……2、3年前かな?」
「何が原因だったのか、噂でもいいから教えてくれ」
志乃は怪訝そうな顔をし、それから心配そうに友永を見つめてくる。
「……なんだよ?」
「調べてどうするの?」
「そんなの……言える訳ねぇだろうが」
志乃はぬるくなったお茶を一気に飲み干した。
「あんまりいい噂、聞かないよ? あの子が亡くなった原因については」
「……ひょっとして、支倉絡みか?」
しばらく返事はなかった。
だが、彼女の表情を見ている限り、当たらずとも遠からずだろうと友永は考えた。
「詳しいことは知らないけど、以前、蓮の自殺の件でいろいろ調べ回っていた人がいたみたいなの。この界隈じゃ有名だったよ。でも一度怖いオジさん達に睨まれて、ボッコボコにされちゃったこともあったみたい。修ちゃんも気をつけてね?」
「どんな人間だ? 男か、女か?」
「だから、詳しいことは知らないって」
嘘をついているのかどうか、判断はつかない。
そろそろ引き揚げよう。
友永はドアノブに手をかけた。
修ちゃん、と志乃が見上げてくる。
「気をつけてよ。この世界、ほんとに危険なんだからね……」
心配するな、と友永は答えたが、少なからず不安もあった。




