総員突入せよ!!!!!
津田は完全に動きを止めている。
思いがけない人物に武器が渡ったことで、賊たちも戸惑っている。
全員が同じことを考えている。智哉のような素人が扱い慣れない銃を万が一、発砲したりしたら。下手をすれば大けがをさせられるのは自分かもしれない、と。
和泉は動けるだろうか。
この中で確実に銃が扱えそうな人間は今のところ、彼しかいない。自分もさっぱり自信はない。
だが。先ほどから受けた暴行の末、和泉はダウンしてしまっている。
どうしたものか……。
「と、友永さん……あの」
声を潜め、話しかけて来たのは智哉の父親、渋沢である。
今それどころじゃねぇんだよ、と言いたいのを堪える。
「あんたも智哉を止めてくれ! 血をわけた息子だろうが?!」
「そ、それはそうなんですが……さっきから気になっていたんですが、あの、顔に傷のある男……」
「ああ、ジロウとか呼ばれてたチンピラだろ? どうかしたのか」
「思い出したんですよ、私と恵美と、あなたが襲われた時……あの男が確か、犯行グループを統率していました」
「それは、本当なのか……?」
「間違いありません。さっき、ちらっと手首の辺りを見たんですが……あの入れ墨は確かに、あの時の……」
友永は目を凝らし、記憶を探った。
あの時、確かに山中恵美を抱きかかえて車に連れ込んだのは、犯行グループに指示を出していた年かさの男だった。
抵抗する彼女に最初に乱暴を加えたのは、確かに……。
ジロウと呼ばれたチンピラは青い顔をし、ゆっくりと智哉に近づこうとする。
「な、なぁ……そんな物騒なもん……」
言いながら伸ばされた手、袖口から見えた肌には確かに刺青があった。
フラッシュバックと言うのだろうか。あの夜のことが写真に撮ったかのように思い出されてくる。
そうだ、間違いない。
「心配すんな、おい。てめぇは生かしたまま逮捕してやるよ。智哉、いいか? いま目の前にいるこのチンピラ野郎が、俺をこんな目に遭わせた挙げ句、人殺しまでしやがったんだぞ。きちんと法の裁きを受けさせるべきだ……わかるな?」
その時、ずーっと黙っていた犯人の一人が口を開いた。
確かマサトと呼ばれていたはずだ。
「今……恵美って言ったか……?」
「な……?」
「山中恵美を殺したのが、この男だと……?」
非常に危険な空気を感じた友永は黙っておこうと思い、渋沢にもそうするよう勧告するつもりだった。
「ああ、そうだ!! その、顔に傷のある男が恵美を殺したんだ!!」
しかし医師はそれよりも早く大きな声で答えてしまった。
バカな!!
「貴様が恵美を殺したのか?!」
友永は自分でも信じられなかったが、猛スピードで立ちあがると、智哉の身体を抱え込み、彼の手からライフルをもぎ取った。それを後方へと遠く投げ飛ばす。
それから咄嗟に彼の眼を塞いだ。
パン、パーンっ!!
発砲音が二発。
「……!!」
ぱっ、と血しぶきがあがった。
バタンっ!!
誰かが床の上に倒れる音が響く。それも2人分。
リノリウムの床に血だまりが広がる。
そして。
硝煙をぼんやりと見つめている男が1人。
状況が変わった。
それも、最悪な方向に。
北条は無線に向かって叫ぶ。
『総員、突入!!』
この後、まだけっこう続きます……(笑)




