表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/303

オジさん達も、少ないお小遣いで頑張ってるんだよ。

「しかし、まさかお前がデカとはなあ」

 小橋はビールジョッキ片手に笑った。


「……俺だって、未だにピンとこねぇよ」

 サラリーマンの味方を看板に掲げている居酒屋で、友永はかつての仲間とカウンター席に並んで座り、ビールで乾杯した。


生安こっちに戻ってこい。どうせ今年の春にも異動があるだろ? 憐れなガキどもが、お前に頭を撫でてもらうのを待ってるぞ」


 友永はそれには答えず、ポケットから智哉の写真を取り出した。


「……なぁ、こいつを流川で見たことがあるか?」

「誰だ? これ」

「俺の息子」


 小橋は笑った。

「嘘つけ、お前の息子がこんな美少年の訳ないだろ」


 ちょっといいか? と、写真をしばらく見つめていた小橋はボールペンを取り出して智哉の顔に黒い点を書き足した。


「……やっぱりな、こいつは(れん)だ」

「蓮?」

「流川ナンバーワンホスト。今から5年前の話だけどな」


「今はどこの店に?」


「どこにもいない。死んじまったからな……」


「原因はなんだ?」


 小橋は運ばれてきた刺身に箸をつけ、

「自殺だよ。首を吊ってな」


「……遺書は?」

「なかった。だが、いくらか考えられる原因は……って、なんでお前はそんなことを知りたがるんだ?」

 そう訊かれたら友永としても具体的な理由を説明できない。


「なんとなくな、刑事の勘ってやつだ」


 小橋は一気にビールを飲み干してお代りを注文すると、


「笑わせるなよ、おい。なんかあったんだろ」

 油断ならない眼つきでこちらを見つめてきた。


 彼は昔から勘が鋭く、隠し事をしても見透かされることが多かった。


 友永は半分ほどに減った生ビールのグラスを傾けた。

「……まだ何も起きていないが、これから起きるかもしれん」

 言っていて何か、とてつもなく嫌な予感がしてきた。


「そういやお前、あの話、聞いたか?」

「なんだよ、あの話って」


 小橋はちらり、とテレビの方に視線を向けた。

 ちょうどニュースの時間だった。


「この頃、立て続けに医者や看護師、果ては薬剤師に至るまで、医療関係者ばかりが狙われる事件が起きてるって話」

 それは友永も聞いている。

 報道されている情報以外のことは知らないが。


「……そうらしいな。で、まさか……」


 小橋が話題にするということは、暴力団関係者というよりも未成年の不良グループによる犯行の可能性が高い。


「そのまさか、だ。あいつら最近、やたらに暴れ回ってんだよ。マンガか映画の影響受けてんのかどうか知らないが、チーム名なんかをつけて抗争してるらしい」

 昭和くせぇよな、と小橋は笑う。


「医療関係者ばかりが狙われるっていうのは、偶然なのか? それとも……」


「まだわからん。今のところ、把握できてるだけで3件だ。その内1人は医者、1人は看護師、1人は薬剤師……と。その内、産婆さんだとか、製薬会社の社員まで狙われたりしてな」


 その可能性は否定できない。


 友永はふと、とある男の顔を思い出した。


「いずれにしろ、やっぱり生活安全課少年係うちにはお前が必要だよ。今年の春にはかならず、人事が動く。俺からも上にかけ合っておくから、よーく考えとけ」


 小橋と別れてから友永は携帯電話をチェックした。


 昨日までストーカーよろしくかかってきていた【鶏ガラ】からの着信は、すっかり途絶えてしまった。


 こちらから何度かかけ直したが、つながらない。

 何かあったのかもしれないが、深くは考えたくない。


 友永は携帯電話の電源を切った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ