ツンデレって可愛いよね!※
割烹で宣言したことを、ここで実行……!!
マッスルは描くのが難しいのだ。
生活安全課には古い知り合いの警官が何人かいる。
昔、友永が事件を起こしてマスコミを大騒ぎさせる……実際は罠にかけられただけなのだが……があって以来、ほとんどの仲間は関わり合いになるのを避けていた中で、ただ一人変わらずに接してくれた男がいた。それが小橋だ。
その小橋は今、県警本部にいると聞いている。
その日の朝一番で、友永は上司に断りを入れてから席を立ち、2階にある生活安全課に向かった。
鶏ガラの方はともかく、智哉にそっくりだと言われる人物のことが気になる。
気になることはさっさと片付けておきたい。
友永が部屋の入り口で小橋を探していると、
「何の用だ?」と、後ろから声をかけられた。
振り返るとかつての上司だった。
「……あんたにゃ関係ありませんよ」
昔の上司はふん、と鼻を鳴らして大股で部屋の中へ入って行く。
「おっ! 友永じゃないか。どうした? めずらしいな」
こちらに気付いた小橋が、昔と変わらない態度で近づいてきてくれる。
「ちょっと聞きたい事があってな。久しぶりに、一緒に飯食いに行こうぜ。昼か夜だったらどっちがいい?」
「何言ってんだよ、夜に決まってんだろ、夜に。いつもの店、予約入れておくからな?」
※※※※※※※※※
「あのー……どうして、ついてこられるんでしょうか?」
和泉はなるべく目を合わせないようにして、隣を歩く背の高い男に問いかけた。
「何か文句ある?」
「あるから訊いてるんですよ。僕の部屋探しですよ?! 北条警視にはこっから先も関係な……」
「ふぅん、先輩に対してそういう言い方するんだ?」
「……すみませんでした……」
「わかればいいのよ。あと、外で『警視』って呼ぶのやめて」
「はい……」
和泉は肩を落として、とぼとぼと目的地を目指して歩いた。
いい加減独立……というか、いつまでも聡介の世話になれない。
本格的な部屋探しを決意した和泉が、不動産屋に行って幾つか適当な物件を紹介してもらったのは、つい昨日の話である。
今日は担当者と共に内覧に行く約束をしている。
早めに仕事を終わらせ、少し不機嫌そうな父に挨拶をしてから、外に出たところで捕まったのである。
特殊捜査班隊長、北条雪村警視に。
「彰ちゃん、そんなに急いでどこに行くの~?」
「……ちょっと、いろいろありまして……」
この人は昔からこうだ。
若い頃、和泉はこの警視と同じ特殊捜査班に所属していたことがあった。
北条の方が2年先輩である。
彼はその当時からずっと、こちらの気分などにはまったく頓着せず、何かと和泉のことをかまってくる人だった。
ただ。
不思議なことに、時々うっとおしいと思うのだが、不愉快だと思ったことは一度もない。
「あら、アタシには言えないようなこと?」
とりあえず無視。
和泉はさっさと歩きだした。が……すぐに捕まる。
仕方ないので、部屋の内覧に行く予定であることを白状した。
すると。
「アタシも一緒に見に行きたい~」と、なったのである……。
「なんでですか?!」
「興味あるから」
という訳で。
不動産屋の担当者からはどこか不審な目で見られつつ、和泉は何軒か部屋を見せてもらった。
帯に短し襷に長し、というが、そう簡単にピッタリくる部屋が見つかる訳ではない。
何か一つ気に入れば、何か一つは我慢しなければならないことが出てくる。
結局、その日はどこにも決められなかった。
その後。夕飯でも食べて帰ろうか、と言う話になり、2人は商店街を歩いていた。
「ねぇ。アタシがマンション買うから、いっそ2人で暮らさない?」
言うと思った。
「申し訳ありませんが、僕には心に決めた人が他にいるので」
すると。北条はニヤリと嫌な笑顔を浮かべて言った。
「聡ちゃんに聞いたわよ。片想いなんでしょ?」
なんでそんな余計なことを教えるんだ!!
和泉は一瞬だけ、父を恨んだ。
「今は、です。その内に絶対、両想いになりますから!! なんて言ったって周君は、ツンデレを絵に描いた……」
「何よ?」
その『ツンデレ』な周が、向かいから歩いてくる。
1人ではなかった。例の【彼女】が一緒ではないか。
そのことに気付いた北条が、可笑しそうに腹を抱えて笑いだした。
「ちょ、ちょっと、あんた、アタシを笑い死にさせるつもり……?! あの子でしょ?! 今、向かいから女の子を連れて歩いてくる……!!」
「……」
周がこちらに気付く。
ぎょっとした表情を見せ、やや躊躇している様子だ。
一緒に歩いているのは先日【彼女】だ、と紹介された女性に違いない。
和泉はスタスタと周に近づいて行った。
「あーまーねーくーん」
周は一瞬だけ逃げ出しそうなそぶりを見せた。
が、和泉は素早く彼の前に回り込んで肩をつかんだ。
「今日はずいぶん、帰りが遅いんだねぇ?」
「何してんの? 和泉さん……」
周は目を逸らす。
「いろいろね。それよりも周君こそ、何してるの?」
「俺も、いろいろ……」
和泉は探るように周の瞳を覗きこんだ。
連れの女性は、誰? と言う顔で周を見つめている。
「可愛い彼女とデートの途中? いいなぁ、僕も周君とデートしたいなぁ……」
「そういう自分だって、元カレとデートの最中だろ?」
「元カレ?」
誰のことだ? まさか……。
その時、きゃあっという悲鳴が響いた。
周の『彼女』を名乗る女性が青い顔をして蹲っている。
「どうしたんだ?!」
「カバン、カバンが……!!」
彼女の指さす方向を見ると、少年の2人組が走って行くのが見えた。
手には女性物のバッグ。ひったくりだ。
和泉は急いで方向転換し、少年達の後を追いかけた。




