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Q:アナタが魔王様ですか? A:ああ、ボクは魔王だ


 俺は領主の脇に抱えられたまま家へと招かれ、拉致られた

 領主の家としては小さかったが、いかにもお屋敷! 的な家だ。屋根もこの街に多い赤色で、屋根も鋭角に尖っている。屋敷の前には強そうなマッチョの男が一人、門番として立っていた

 迷路の様な屋敷の中を俺は領主から降ろされること無く移動する


「レティ、マール、ソフィー。この子を着替えさせたら仕事部屋に行くから先に言っててくれるか?」

「主様。その子をお部屋に?」

「ああ、なんか問題あるか?」


 「いえ、ありません」そうレティと呼ばれたメイド服の女性が他の二人を連れて反対側へと歩いていく

 以前と俺が降ろされる気配はない


「えっと、領主様。一体なんで俺なのでしょう。他にも一杯子供はいたはずですが」

「面白い事を聞くなあ。ボクの演説中ずっと見てただろ?」

「いや、皆見てましたよ」

「スキルを使ってか?」


 全魔眼。千里眼ってバレる様なもんなのか?


〈普通はあり得ませんが、異常に感覚の鋭い種族は視線を感じ取れます。例えば、龍族とか〉


 それ父じゃないか?


〈ご明察通りです〉

「その右目は千里眼の魔眼なのかな? いいスキルを持ってる。しかし、最期にボクを直接見たのは良くなかったね。どこから見てるのかすぐに解ったよ」

「ええ、これからは気をつけるとします」

「ははは! そうだな。ついたぞここがボクの部屋だ」


 領主が部屋に入る。ここで俺はやっと降ろしてもらえた

 部屋は綺麗な物で誇り一つない。さっきのメイドさんが掃除してるのかな

 ベットが一つにクローゼットが二つ、小さな机に椅子が一つずつ。飾りとして緑の花が生けてある花瓶が一つ


 なんとも質素な部屋だ。本当に領主か? 領主ってのは金にがめつい変態ばっかりだと思ってたけど、イメージ違うなあ


「君。こっちだ」


 領主がこまねくので黙って従う


「服を脱ぎたまえ」


 あれ? この人もしかして変態なんじゃないの?

 冷静に考えてみたら、今の俺って十三歳の子供だろ? それを家に拉致って、服を脱がせる


 権力を持ったショタコンの変態野郎じゃないか!

 逃げよう


「おいおい、どこ行く」


 ムリで〜す。そりゃそうだな。あり得ない距離を一瞬で詰める事が出来る化け物の目の前からエスケープできるとは思えない。身体能力だけ見たら魔王そのものだ

 でも、こんな所で俺の貞操を破られるわけにはいかない! 十三で貫かれたら引篭になっちゃう。外界との接触を断ちたくなる様なトラウマを持ってしまううううう!


「そんな暴れんなよ。何も取って食おうなんて思っちゃいない。お前さんの服がボロボロだからボクの子供の頃の服をやろうってだけだ」


 なに? 服をくれるだけ?

 暴れるのやめて領主の顔を見る


「いや、そんな怯えた顔すんなよ。ボクは子供に興味はない。好みはボクより強い男だけだ」


 いや、ガチホモじゃねえか!


「同じ服しか無いが我慢してくれ」

「なんで同じ服しか無いんですか?」

「おお、親戚がボクに似合う服っていって同じのを大量に送りつけて来たんだ。半分くらいは頑張って着たんだが、もう半分は余ってね。捨てるのも勿体ないし、こうして半専用のクローゼットがあるってわけ」


 領主がクローゼットを開ける。開けると同時に頭に何かが落ちて来た。なんだ?

 手に取って拡げてみる。うん? あれ? なんだっけこれ。どっかで見たことある


「あ、あれ? 領主様これは?」

「ん? ああ、すまん。ボクのブラだ。このクローゼット。ボクの下着と肌着も入っていてね」

〈ん? ってことは〉


 女だと!?


〈驚きです。まあ、確かによく見れば胸もありますね。女性としてみれば、確かに女性だ〉

「女性だったんですか」


 あまりの驚きで口に出てしまった


「ははは! よくいわれるよ。寧ろ男じゃない方が不思議とまでいわれた事があるね」

〈ふむ、まあ。個人差があるとはいえ、魔族の肌は濃い方が多いですし、私たちからみたら外人みたいなもんですか〉


 全魔眼。そんな事はどうでもいいだろ


〈どういう意味ですか?〉

「領主様! お名前をお聞きしても?」

「ん、名前? アビゲイルだけど」

 

 

 

「アビゲイル様! 俺はキリルといいます! 結婚を前提に俺とお付き合いしてください」

「は?」〈は?〉

「素晴らしい! 綺麗に割れた腹筋。柔らかさと硬さ、矛盾を一つに出来た腕。それを支える長い足。どれも男が持ってたら価値はありませんが、女性の貴女が持つ事でその価値は計り知れない

 内面も街の人達から信頼される美しい人だ。お友達からでも結構です!」


 ハアハアハアハア、筋肉って素晴らしい! 女性が持てば、格好良さと可愛らしさ。その両方を兼ね備える!

 ああ、筋繊維の一本一本から愛せる


〈きめえ〉


 黙れ眼球。外眼筋のどれか一つでも動かしてみろ


〈カチンときましたよ!? どうせ私は自分じゃ動けませんよ!〉

「はははははは! 君は面白いことを言うな! さっき言ったばかりじゃないか。ボクは、ボクより強い男が好みなんだよ

 まあ、君は将来有望そうではあるけどね。ふふ、まあ。頑張りたまえよ。ボクは不老種だからね。ゆっくりと待つさ」

「待っててくれるんですか」

「ああ、勿論。生憎ボクにも貰い手がいなくてね。あと、これが服だ。急いで着替えな。長すぎるとボクの従者達が怒る」


 自分の角の横で指を立てる。既に角があるのに。可愛い。筋肉のある女性だと解れば全てが許せる


〈マジきめえ〉


 はっ黙れよ

 それにしても不老種ってなんだろ?


〈寿命の概念がない者の事を総称して『不老種』って呼ぶんです。確か個人差はある物の、不老種本人の肉体がピークになると成長が止まるのだとか。それ以降は病にも掛からなくなったはずです〉


 マジでか。死ねないなんて可哀想だな


〈死ねますよ。寿命がないだけです〉


 命は一つって訳か


〈そうですね。でも、長く生きた不老種の力は凄まじいらしいですよ〉


 その情報はどこから?


〈今の父様からですよ。主のお爺さまは不老種だとか言ってました〉


 へえ、知らなかった。ぶっちゃけ、もうアビゲイルさんの年齢とか気にならない。死ぬまで生きる種族なら気にしてもしょうがないしね

 それよりもさ。……着替えたいんだけどさ。アビゲイルさんめっちゃ見てんだけれど。どうしたらいい?


〈うえええ? キモい告白はOKなのに、着替えは駄目なんですか。ヘタレのベクトルが間違ってますよ〉

「どうした少年。着替えないのか? それともサイズが合わなかったか?」

「いえ、まさかそんな事はありません。ただ、じっと見られてると、なんと言うか恥ずかしいというか」

「さっきの告白はOKなのに、着替えは駄目なのか。変な所でへタレだな」


 全魔眼と内容が変わらないのですけんど?


〈わあ! とっても気の合いそうな女性です〉


 仕方がない。着替えよう。今の俺は子供今の俺は子供今の俺は子供。よし、いける


〈いや、アウトだと思いますよ? さっきの告白にしても、筋肉の素晴らしさを語る子供がいると思います〉


 そりゃいるだろ。着替えてる奴とか


〈ツッコむとでも?〉


 濃い緑の服に袖を通す

 七部の袖先は着物の様に大きく開いていた。少々丈が短く、腕を上げればへそが見える。これを作ったというアビゲイルさんの親戚はきっと変態だろう

 ズボンは黒くて丈夫そうな造りだった。足の大きさもちょうど良かったのでブーツも貰った

 う〜ん。新品同様の服は心地いい。ボロボロの擦り切れた服とはもうおさらばだ。捨てないけど


 着替えをすませた俺は、アビゲイルさんの仕事部屋に向かう。ちょっとこの屋敷で迷子になったら大変そうだ


〈主〉


 はいはい?


〈主は忘れている様なのでお話ししますが、ここには拉致されたんですよ〉


 ……おお、そうだったっけ? 確かに流れはそんな感じだったかも。でも、アビゲイルさんなら許せるよね?


〈いやあ、主だけだと思いますよ。ああ、嫌な予感がします〉


 考え過ぎだろ


「少年。この部屋だ」


 ひと際大きな扉の前で止まり、中に入る

 奥には窓が見えた。その前に大きな机があり、分厚い紙の束が置いてある。入り口側の左右の壁には本棚が一つずつ置いてあり、びっしりと本が詰め込まれていた。どれも難しそうだ

 面接会場の様に大きな机の前にはポツンと小さな椅子がある。その横には肘掛けかと思う位、小さな机も見える


 窓に腰かける様に二頭身の小さな魔族

 入り口から見て右側。机に近い所にメイドさんのレティという魔族が立っている。

 逆に左側には剣を腰から吊るした後頭部が肩甲骨まで伸びたタイプの魔族が立っている

 どっちがマールでどっちがソフィーだろうか


「では少年。真ん中の椅子にかけたまえ」

「はい。ちなみに何をするのかお聞きしても?」


 俺の質問にアビゲイルさんは窓の前に立って笑う


「簡単な質問さ。時に少年。君は紅茶がいいか? それともコーヒー?」

「え、ああ。じゃあ、紅茶で」


 俺は紅茶が大好きだ。コーヒーは飲まない


〈前世でも苦くて飲めなかったじゃないですか。何カッコつけてるんです?〉


 だまらっしゃい


「さて少年。幾つか聞きたい事がーー」

「主様。先ほど速達で届いた手紙にお目通しを」

「おっと、レティ。ボク今話してるんだけど?」

「大丈夫です。重要度で言ってしまうと、そこの子供は後回しでも構わないので」

「それ決めるのボクう!」

「いいから読んでください。急を要します」


 アビゲイルさんは立場の低い領主様なのかもしれない

 子供の様に小さな声で文句をいいながら手紙を受け取り、封を切ろうとする。そこでピタリと手が止まった


「あ、れ? 帝国印だ。……あ、魔王会議来月じゃね?

 やっべ。忘れてた。ソフィー。街の事任せてもいいか?」

「問題ありませ〜ん」


 窓に腰かける魔族が答えた。という事は彼女がソフィーで、剣を持った彼女がマールか


「支度しないと行けないけど。まあ、明日にでも出れば間に合うでしょ。最悪走る」

「ええ! また!?」


 また。ああ、結構日常茶飯事なのかな

 文句を言われながらもマールとソフィーに指示を出している。おお、領主様っぽい

 いつの間に用意したのか。レティさんが紅茶を肘掛けの様な机に置いてくれた。あ、いい香り


「ありがとうございます。レティさん」

「コレットです。申し訳ありません。ここまでお連れしてしまって」

「いえいえ! こっちこそすいません。服まで貰っちゃって」


 コレットって名乗ったって事は、愛称で呼ばないでくれって事なんだろうなあ。まあ、親しくもない相手からいきなり愛称で呼ばれたくはないか


「コレットさん。さっき、魔王って聞こえたんですけど。アビ、領主様って魔王様なんですか?」


 多分だけど、アビゲイルさんって呼んだら。この人怒る気がする。アビって言った瞬間の目つきがマジで恐かった


〈主。このメイド服の女性。鑑定できません。というよりこの部屋にいる方、誰も鑑定できません〉


 その心は?


〈全員化け物です。誰一人として勝てる気がいたしません〉


 剣を持ってる魔族ならまだしも、まさかメイド服と二頭身に負けるとは


「知らなかったんですか? 主様は第三魔王です」

「すいません。第三って?」

「この国には六人の魔王、二人の大魔王、それを統べる大魔帝王様がいる事はご存知で?」


 大魔帝王ってなに!? ごてごてしすぎでは?

 てか、魔王って六人もいんの!?

 あ、もうツッコミが追いつかない





 成長が止まったのは二十五歳くらいで、現在二百二十歳です

 魔王になって百年くらい


 思った三倍話が進まないけど、一旦区切らないと私が持たない

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