Q:十三歳の実力の程は? A:そこそこ強いんじゃないですかね
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もう洞窟に潜って半年くらい経つのかな?
この谷に落ちてからの累計をしたら、三年くらい潜った事になるだろう。全魔眼の記憶能力で洞窟全体のマップも出来上がってしまった。まあ、忘れる時はあるらしいけどさ
でも、出口と思わしき場所の特定も完了済み
俺は十三歳になった。谷に落ちてもう、七年が経過した。俺の身長も大分伸びた。百五十後半くらいかな? いつの間にかビオの身長を超えてしまった。髪も伸びて、今では耳が隠れる程だ。後頭部で一つに束ねているが、本当にエルフのイケメン要素がなければ日本人なんだよなあ
流石にそれほどのその歳月で、俺自身に幾つかのスキルを手に入れる事が出来ました!
なんと言っても最高のスキルはこれ『自動洗浄』
水浴びをしなくても、俺の身体、俺の身体に触れている物に、洗浄の効果がつくという優れ物なのです
人生初スキルにしてお手軽スキル。魔力の消費なんて物はない!
〈主。遠回しに私の事を貶してませんか?〉
「とんでもない。自動先勝は確かにお手軽だが、お前程の究極スキルじゃない」
〈そんな……褒められても主に出せる物は全て出すつもりですよ〉
ちょろいな
全魔眼は照れてる時だけは俺の心を読まなくなる。究極とか超絶とか言っておけば大体照れるので扱いやすい奴になった。と思う
ええ、実はこんな会話をしているが、今も絶賛魔物の群れに襲撃されている最中なのだ
ぶっちゃけ、ここらの魔物は戦い慣れし過ぎて知覚強化スキルを使うまでもない。だから暗視スキルを使っている。見やすくていいね
魔物は力任せに魔核のある急所を殴ったり、蹴ったりして倒せる様になった
今世の父が龍だというのに、俺の身体能力が低すぎると思ったのだ。筋トレも馬鹿にはできない。いつの間にか素手で魔物を狩るほど、野蛮になってしまったぜ
この魔核という石? みたいな物。どんな物かと一度生きたまま取り出してみたのだが、村で見た事がある。父の友人達が集まって遊びの掛け金として使っていた物だ。麻雀してた時は本当に俺も混ざりたかった
しかし、この魔核がないとやる資格はない! そういわれたのを覚えている
村に戻った時ギャンブルに混ぜてもらう為に必要なので、綺麗で大きな物だけ取っておいている
そうそう、村といえばだ。俺が落ちて来てから一年に一度。荷物が落ちてくる様になった
谷底では何年かに一度ある程度だったのに、毎年とは珍しい。といっていた
理由は去年解った。谷底に落ちてくる食料の中に手紙が一つ入っていたのだ。俺宛だった。読んでビックリ
村では俺は死んだ事になっていた
うん。だろうね。俺もこの谷に落ちた人を見たら間違いなく死んだと思う。速いとこ村に戻らないと、どんどん帰りづらくなる。急がねば
〈もう手遅れでは?〉
「だとしても、手紙にあった。ユリアーナがキメラを討ちに旅に出た。なんて読んだら焦りもしよう」
〈話に出てきた妹君ですか。あの時は私も覚醒中だったのでハッキリとは覚えていませんが、主の代わりに友人の敵を討ってくれるのでは?〉
「本当に出来そうだから困る」
それにしても、魔物どもは本当に歯ごたえがない
なので万全の準備を整えて、六歳の頃洞窟で危機感知に引っかかった化け物の元へ向かう。ヤバかったら荷物をエサに逃げよう
荷物は六歳の頃のリュックだ。え、半年も何食ってたかって? 魔物ですが?
これが意外と美味しいのだ。生で食せば確かに危ない。毒があるのだ。しかし、火を通せば食えない物なんてない。自然の摂理だ!
〈主。主は産まれた頃より龍の胃袋を有していますので、毒等は効きません〉
刺身でもいけるらしい
だからそういうのは先に言えっての! 知らんかったよ!
全魔眼とのくだらない会話を続けていると、ひと際開けた場所に出た
足場はない。広い湖の様な場所だ。洞窟の壁の至る所から、微かな光と水が足れて来ている。迷路の様な洞窟内の水がこの湖に集まっているのかもしれないな
暗視スキルは必要無さそうなので切る。小さな光だが、光のもれる場所の数が多い為に洞窟内だとは思えないほど明るい
うん。いる。この湖の中に俺の危機感知に引っかかる奴が。キメラぶりのメーターぶっちぎりの強敵だ
〈おや?〉
「どした」
〈はい。主。この湖を鑑定した結果。魔法の使用が可能な様です〉
暗視スキルを使わなくていい朗報に次ぐ、朗報
「ほお、そいつはラッキーだ」
俺は湖に一歩踏み出す。踏み出したのだ。入水する訳ではない
七年間で知覚強化スキルだけを極めただけじゃない。魔法だって必死に研究した。今では木だって生やせる。谷底の深刻な植物不足は今やない。まあ、木が生やせるからなんだって話なが。馬鹿にしちゃいけない。家を一瞬で建てれるのだから便利だろう?
相変わらず火や雷はよく解らん。多分一生使えないと思う
水の上に立つ。この魔法の原理は、前にも説明した水鉄砲と同じだ。魔法を調節。俺の体重を支えてられる威力で、足の裏を水で押し上げているのだ
七年で俺はできる事を全てやった。アダフさんのもと剣術を習い。洞窟に入ってない日は毎日水鉄砲飛びで魔力を空にした。洞窟に潜る前の更に三倍の魔力量を有している
〈それなにの崖を登り切れない事には驚きましたね〉
「全くそのとおりです!」
全魔眼のツッコミに返事をすると、察知していた危機が迫ってくる
湖の中心が盛り上がる。まず出てきたのは首だ。湖のある洞窟の天井の三分の一程の長さ。約三十メートルはあろう首。
長い首の先にある頭はキラキラと光る、直径七十センチほどの石がついている。あれさ。魔核じゃね?
そして最期に、首の後ろには浮き島の様な魔物の背中が出てくる。背中にも頭と同じ様にキラキラとした石が乗っている。こっちは八十センチはある。……あれも魔核だよね!?
こ、これは!!
〈ネッ◯ーみたいですね〉
「首だけでその長さは、水中から出てくるだけでツラいだろうに……じゃないじゃない。あの魔核を二つ壊せばいいのか?」
〈二つも魔核を持った魔物がいるとは知りませんでした〉
観察をしていると、三秒ほど耳の奥で何かを引き裂く様な鳴き声を聞かされた。鳴き声だけで洞窟内が揺れてるぞ。崩れたらどうするんだ!
〈どんだけ掘ろうにも傷がつかなかったじゃないですか〉
「ああ、ならどんだけ暴れても安心か」
俺は鉄剣を作り出し、右手で握る。勿論、一からこんな物は作れない。知識も足りなければ、剣の材料なんて物も知らない。訓練中折ってしまったアダフさんの剣のかけらを加工して身体に忍ばしているのだ
剣を握った瞬間ネッ◯ーの魔物が頭突きをして来た。長さにモノをいわせ、遠心力が十二分に乗った強力な一撃だ
でも、チャンス。この頭突きに合わせて剣を魔核に突き立てる。狙い通り、剣は魔核にぶつかり、砕け散った
剣の方がね
っておいいいい! なんつう硬い魔核だそれ!
全魔眼全魔眼! 知覚強化スキルをマックスで!
〈既に〉
七年で知覚強化スキルの最高倍率は百倍まで伸びている。この状態では一瞬だけ、全力を出せば動ける。なので無様に横に飛んで避けます。ああ、ユリアーナありがとう。この避け方を、濡れるとか思わないで出来るのは君のおかげだ
腹部を水に触れた時、俺の体重を支えられる力で水鉄砲の魔法を使う。そのあとは前方回転受け身をするように転がり立ち上がる
「六十倍まで下げろ」
〈了解いたしました〉
さっきよりも幾分速い世界で、魔物は自分の頭を鞭の様にしならせながら攻撃を行ってくる。速い。この遅い世界で魔物の攻撃がユリアーナの直進攻撃並みに速い
見てじゃ避けれない。危機感知の警鐘が大きな奴から逃れる様に避ける。的確に俺を狙ってくるって事はアイツ見えてんのか? 凄い動体視力だ
「やっぱり八十倍!」
〈ですよね〉
「うっさいお前! 黙りんしゃい!」
八十倍までが、俺の身体が自然に動ける範囲だ。百倍は一日一回やったらもう使いたくない。筋肉痛が酷いんよ
見て回避が出来る様になればもう安心だ。もう一度鉄剣を作り出し、今度は背中の魔核を狙おう
俺、大きく振りかぶって、投げた!
〈おおっと! キリル選手暴投だあ〉
いやいや、完璧なコースです! 八十倍の世界の中、良く形を保って飛ぶな。あの鉄剣。流石は何時から谷底にあるのか解らない骨董品。頑丈みたいです。さっきは折られたけど
弧を描く様に剣が魔核に突き刺さり、そして砕ける俺の剣
使えねえ
「なんだなんだ。ありゃどうやって倒せっちゅうんだ?」
〈既に鑑定眼を使用中少々お待ちください……解析終了。頭部と背部にある魔核と思わしき物体は魔力が通っていません。魔核である可能性は低いと思われます〉
「フェイクかよ」
魔物のくせに生意気な。という事は魔核はどこだ?
〈透過眼を使用してみます…………魔核の位置は、尾ですね〉
「尾っぽなんてあったんか。見えなかった」
〈頭部頸部を合わせて三十メートル。胴体三十メートル。尾三十メートル。全長九十メートルありますので致し方がないかと〉
「じゃあ、魔核は水深六十メーターの場所にあるの?」
〈オフコース〉
「潜りたくないから本気を出します」
〈……了解いたしました。共有眼、停止眼、麻痺眼を使用いたします。作成個数は二つ〉
全魔眼で使う事ができる魔眼とスキルは一つずつ
例えば、全魔眼が、鑑定眼と知覚強化スキルを使っているとき、他の魔眼は使えない
しかし、その制約を無視する方法を発見した
共有眼の使用だ
共有眼・見た事のある眼球から視界を奪う。または盗み見する魔眼。というものだ
ここで重要なのは能力そのもの。でもあるが、最も重要なのは『どんな眼球でも良い』という事
お解りいただけただろうか?
俺の得意とする魔法は回復魔法。簡単な擦り傷は勿論、四肢欠損までも回復できる。他にも持っている知識として、耳や鼻、『目』の構造なんかも詳しい
俺は知識を使わず魔力だけで、両手に掌サイズの水球を二つ作り出す
これは谷に落ちてから解ったのだが、魔力だけの魔法は物理法則を無視できる。知識で補うと物理法則を無視できなくなるのはなんでだ
強膜、強膜前方の角膜、脈絡網、毛様体、虹彩、網膜
瞳孔、眼球結膜、網膜の鋸状縁、中心窩、視神経乳頭、網膜中心動脈、視神経
眼房水、水晶体、硝子体
知識的にはこれで補う。そして水球の中に眼球を作り出した
〈共有眼・リンク
成功。停止眼発動。麻痺眼発動〉
停止眼・この魔眼に見られた者は視線が動かなくなる。という何とも地味な魔眼
視線は動かないが身体は動くので戦いづらくなるだけだ。つらくなるというのも凄いと思うけどね
麻痺眼・視線が合っている間、相手を麻痺させる。というこれまた使いづらい魔眼
目をそらされたら効果はない。魔眼で身体を見ても発動なんかしない
しかし、この地味な二つの魔眼を併用すれば?
そう、動きを止められない生物はいない
一つの水球の中にある眼球が視線を固定し、一つの水球は魔物の目前に移動し、目を合わせ身体を麻痺させた
突如として身体が動かなくなった魔物は理解する事もできないだろう。俺の全魔眼は使い方次第で、宝にもゴミにもなるんだぜ?
〈ゴミってなんですか? ゴミって〉
「俺が使わなきゃって意味さ。相棒! この世界で誰が眼球作り出せるよ」
〈な、なるほど。納得です主〉
全魔眼は相棒という言葉にも弱い。この話すという部分がゴミなんだよなあ。口うるさいし
まあ、辛気臭くならない所はありがたいけどさ
「じゃあ、終わりといこう」
水球を残しその場に残し俺は湖に潜る
と思ったが、元々潜りたくないから本気を出したのであって。今から潜ったら本末転倒。それに、あの深さを潜っていくのはツラい
考えた結果。魔力だけで俺の半径五メートルに薄い水の膜を張る。右手を湖に着け、湖の水を代理魔法を用い水流を作った
これで苦しくない水中移動が可能になる。酸素が足りなくなって来たら、二酸化炭素を膜の外に捨ててその分酸素を作る。窒素は……頭痛くなって来たら増やそう。呼吸で窒素まで減るのかは俺の与り知らぬ事よ
魔物の尾っぽの深さまで潜った。水流を作るのをやめて、魔核の前で止まる
魔核デカい。バスケットボールくらいデカいぞ。今まで見た最大の大きさは小指の爪くらいだ
おお、この大きさは珍しいから壊さず、採取しよう。ウォーターカッターで尾っぽを結構ながめにちょん切り、膜の中に入れる。魔物の肉を綺麗に削いで採取成功だ
長めに切ったのは、この珍しい魔物が美味しいか確認する為。美味しかったらちょっと持って帰る
〈主、目的はこの洞窟を抜けて海に行く事では?〉
「ああ、そうだ。あれ? これどうする。ボスっぽいの倒したけど、これで終わり?」
〈さあ?〉
さあ、ってお前もう少し考えようぜ?
そう言おうとした瞬間だった。湖が渦を巻き始めたのだ
な、なんだなんだ!? すっごい回転してる。気持ち悪い気持ち悪い。目が回るよ
今は懐かしい洋式便器の中を泳いでるみたいだ
〈はっはっは。上手い事を言いますね〉
飛んだ思いつきは正解だったようで湖の水は、底に空いた穴に吸い込まれていった
勿論。俺らごとだ
勉強しても強膜と角膜の差が位置という認識しか出来ないです
プロがこれをお読みになられたら、教えてください
2017年5月15日 誤字脱字修正。戦闘描写に手を加えました。まだまだ募集してますので報告待ってます