表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

めいみの短編集シリーズ

ある女の独白

作者: 本堂 迷美

短編なので、すぐに読めるとおもいます。


ある女は独白する。

この世は残酷で恐ろしい。

けれど、生きていかなければならないのだ。




高橋 ゆかり、31歳。

短大を卒業後、怒涛の就職活動のなかでなんとか滑り込んだ会社に勤めてここにいる。

社内には中年の役職から新人までの男が18名、女が9名働く中規模なWeb系の委託印刷会社だ。

容姿は不細工を化粧で誤魔化して、いまどきのポチャ女子と呼ばれるよりもまだ体重がのった残念体型。

それが今言える自分のスペックの全て。


アルコールを片手につぶやく、なんてことはないただの独り言。

あなたは、聞いてくれるだろうか?




………



ふざけんな。


まず最初に吐いた言葉。


学生時代に味わった、自分は姫にはなれない事実。

親からは可愛い可愛いとおだてられ、ぷくぷくと元気に平和に育った挙げ句、学校という小さな社会で学んだことは容赦の無いカーストと明るく振る舞う道化の自分。

そしてそれは、会社の中に組み込まれても同じだった。


それなりに楽しくやっていたわけよ。

チームで仕事をする時にはみんなを盛り上げて、作業はコツコツと取り組んで。

社内での評価は、気のいいやつ、面白いやつという地位を築き上げてきたわけだ。


雲行きが怪しくなってきたのは、確か去年の今頃のことだ。

コツコツと積み上げてきた努力が実ったのか、お鉢がまわってきただけなのか、チームプロデューサーと言う肩書きの昇進が言い渡された時のころ。

…陰湿ないじめが始まった。


声を大にして訴えきれない、ちまちまとした嫌がらせに合う場面が出てきたのだ。


そうだね、あなたが想像するような出来事の数々。


日々、出勤するのが嫌になる小さなタイプから仕事に支障が出るタイプまで。

もちろんSNS絡みの嫌がらせは、群を抜いて巧妙で、その情熱をもっと他のことに使えよ…と、感心する程だ。



そんなに妬ましいか。

おつまみの枝豆を噛み締めながら言葉を吐いた。



社内全員がいじめに加担していない所がミソだ。

社内全体、というよりも気付く人は気付く程度の盛り上がり。

今まで道化として笑っていた同期が、少し上の先輩が、加担する。

見下していた相手が上に立つ。



評価されるべき僕が、私が、あんな奴より下なわけがない。

嫌がらせをして少し困らせてやれよ。

立場をわきまえろ、ブサイクのくせに。

1人じゃない、みんな嫌ってんだ。

人を堕とすって、気持ちいいよね。

笑われるのが得意なんだろ?上司に豚とか、シャレになんねーだろ。



ええ、ええ。

最近のいじめは怖いですね。

普段通りに会話はするし、わざとらしいミスは後から謝るフォローを入れてくる。

ただ、漂う空気が違うのだ。

一度でも理不尽ないじめを体験した人ならわかるだろう。

雰囲気と会話の間。

誰がいじめの加担者で、誰が本当の事を言ってくれているのかわからなくなる疑心暗鬼の人間不信を生み出してくれる不思議な空間。


それがまかり通る社会の不思議。



今さら転職なんてする気は無い。

職がいつ決まるか保証もないままで生活できるほど裕福でもないし、第一、悔しいではないか。




だからじゃないけど、賢くならざるを得なかった。

時間の確認は人に頼らずクライアントと上に確認を取り、さらに念を押す。

最終チェックは、自分が確実にできるように構成を考えて仕事を割り振る。

社会人として当たり前な事をきっちりできるようになった。

嫌われていることがわかってきたところで、仕事をすることには変わりない。

ここはサークルでもない、格付けし合う昼下がりのサロンでもない。


働いてお金を稼ぐ場所だ。


腹に毒を抱えるメンバーには、しょうもないいじめを考え付く暇もないほどに仕事を割り振ったりもした。

その高そうなプライドをくすぶりおだて、自分がいくらでも鬼になることが出来たことにビックリする。

新しい自分開発に、胸が踊ったことは秘密にしよう。




すると、自分をいろんな場面で評価する人が現れた。

以前のように冗談で笑いあってくれる人、声をかけてくれる人、新しい交流。

そんな時、道化だったころの自分が顔を出した。

まあ、それも自分の一部であるし、それは変わらないだろう。

もちろん離れていく人もいる。

捨てる神あれば拾う神あり。

昔の人はいい事を言う。





………



ふざけんな。


汚い言葉から始まった独白も、最後は綺麗に締めたい。

グラスを肩口まで掲げると、乾杯のポーズを模してから一気に中身を煽る。

様にはなっていないけれど。



そこのあなた、ある女の独白を聞いてくれて………ありがとう。

残酷で恐ろしいこの世の中で、めいいっぱい生きてやりましょ。



END














読んでいただいてありがとうございます。

いかがだったでしょうか?

思いつきでザクザク書いたものですが、なろうで何ジャンルのなに書いているんだろうと思いながら、楽しく書いてみました(笑)

若干年齢層高めですが、酒を飲みながらつぶやいている悩み多きOLさんが大好きです。

しかしながら、いじめって本当に考えさせられますよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >残酷で恐ろしいこの世の中で、めいいっぱい生きてやりましょ。 世知辛い世の中ですけど、人間そうやって成長していくもの。 先々は絶対、ヒロインさんの糧になると思います。 上に上がるためには…
[一言] イジメって、今や世の中どこにいてもついて来るものですね。大人も子供も、理不尽ないじめのなんとも多い事か。 この主人公は、とても偉いと思います。 応援したくなります。 これからも辛いことはたく…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ