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うどんに食べられた男の話

作者: 宗田スイ

 ある暖かい晴れた日である。

 男は久し振りの休日を満喫するべく、自宅でゴロゴロとしていた。

 男には金も彼女もないため、休日といってもTSUTAYAのDVDを見ながらスナック菓子をむさぼり食うくらいしかやることもやりたいこともない。


 そんな男は、昼になってようやく自分の人生のむなしさに気いた。

「俺は一体、何をやっているんだ!?」

 大体の人は、中学から高校にかけて、人生とは?生きる意味とは?など哲学的かつ「中二病」と呼ばれるようなことを考えたりしたと思う。

 男の場合、30になるこの年に、ようやく中二をむかえたのである。

「俺は何故こんなボロアパートにいる!?何故女の子と映画を見に行ったり、同僚と飲みに行ったりしていない!?」

 男はそこで考える。自分がこうなってしまった原因を。

 しかし男には心当たりがありすぎた。

 それこそむなしい行為だと思った男は、考えるのを止めた。

「腹が減っては戦ができぬ。」


 そう、今は昼だ。締め切ったカーテンの向こう側では雲一つのない青空が広がっている。


 男はとりあえず外に出ることにしたが、行く宛もなく、結局コンビニで昼ご飯のカップうどんを買って帰ってきた。

 自分の情けなさに絶望しながら、彼はカップうどんを食べ始める。

 今日は天気がすこぶる宜しいので気温も高く、男は額に汗を滲ませながら食べ続けた。


 しばらく無心にうどんを啜っていた。しかしカップの底は見えない。

 まだ見えない。

 まだ見えない。

 まだ見えない。


 不審に思った男は、丼を持ってきてカップを逆さにひっくり返し、中身を丼に移した。

 勿論、たくさんに見えるのは錯覚で、実際にはそんな大した量ではない。と男はふんでいた。


 カップ逆さにしてから10分程経った。

 うどんは今尚、カップから溢れ続けている。


 当然丼などには入りきらず、今、男の部屋の床はうどんで埋められていた。

 最初は驚いた男だったが、今や完全に開き直り、出し尽くすまで粘ってやる、などという変な対抗心をカップうどんに対して燃やしていた。


 残念ながら、男は阿呆なのであった。


 翌日、男の会社から「同僚と連絡がとれなくなった」と警察が通報を受けた。

 警官がアパートに踏み込むと、ドアを開けた瞬間に大量のうどんが雪崩のように大家と警官を襲った。


 男は死しても尚、カップを逆さに持ち続けていた。



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