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     * 橋での対決 〜二戦目〜


 二戦目は、・ギルムード・VS・銀の獣・

 

 

 この身の誇る跳躍力。何者にも屈する事のない牙。

 

 湧き上がってくる、抑えようのない躍動感は獣たるものの本性。

 

 その醜態を晒してでも、彼女は渡さない。

 

 * : * : * : * : * : * : *

 

 ――ギルムードの刃と、銀の獣の牙とがぶつかり合う。

 

 辺りに響き渡った不協和音が、余韻を引きずる・・・・・・。ディーナは思わず閉じていた目を開けた。

 

「なっ・・・・・・!?やめてよっ!!」

 

 てっきり刃は、己に向けられたものと思っていた。

(かわしきれない!!)

 そう体が告げた。だから、両腕で守勢を取りその時を――覚悟したのだが。

 

 一瞬後――。瞳を開けると獣に庇われている己に気がつき、絶叫した。

 

「何やってるの!アナタ、避けなさいっ!!」

 

 獣は退こうとはしない。

 

 * : * : * : * : * : * : *

 

 ギルムードは剣を引き抜いたと同時に、銀の獣の牙を受けていた。

 巨体の勢いある重みが、獣の牙一点に集中した一撃だった。

 獣に押し倒される前に、振り払う。ギルムードは不覚にも、よろめいてしまった。

 右手に響き伝わった衝撃に痺れ、剣も落としそうになった。だが、どうにか堪える。

 

 対して銀の獣はギルムードから、顎に一撃を喰らっても体勢を崩さず、身を翻し少女の前に着地していた。

 鼻に深くシワを刻み、牙をむき出したまま低く唸り声を上げている。獣の牙と牙の間から覗く舌が、嫌に赤くて気に障った。

 

 獣の発する殺意むき出しの敵意に、容赦の入り込む隙など無いのは明確だった。

 ディーナに触れるもの全てに、向けられるであろう感情にギルムードはあざ笑う。

 

「――獣めが!四つ足風情が、ディーナ嬢をどうしようというのだ?身の程を知れケダモノ」

 “・・・・・・・・・・・・。”

 

 吐き捨てながらも、(にら)み合いは続く。

 

 少女に庇われながら、この獣はずっとギルムードの動きを眼で追っていた――。

 いつ躍り出てくるやらと、互いに睨み合っていたのだ。

 はじめにディーナの腕をつかみ損なった時点で、次に手を伸ばした途端に獣が割り込んでくるだろうと、

 予想は付いていた。

 

「ちょっと、何てこと言うのよ!貴方・・・いいから!避けなさい!」

 ディーナ嬢は抗議の声を張り上げた。なぜ、ここまで四つ足風情(・・・・・)に肩入れするのか。

 ギルムードには理解できない。その上、自分の存在の方が下に見られている気がする。

 ますます余計に、この獣を配下に置きたくなった。多分コレは、嫉妬というものだ。自覚はあるが、止められない。

 

「そうだ。退け獣。騎士(ナイト)気取りじゃ、命を落とすぞ?――身の程をわきまえるんだな」

 

 ギルムードは右腕を目線の高さにまで上げ、引き構えて狙いを定めた。左手は剣刃に添え置く。

 視線は剣の切っ先の延長上、銀のケダモノへと定めた。

 あれだけの距離を、一蹴りで縮めてきた脚力だ。さっきよりも近い分、より一層の負荷がかかるだろう・・・・・・。

 手振れを起こしたら、敗者はギルムードに決まる。ここまで自分にさせる獣には、腹立ちは隠せないが事実だ。

 

 それなりの対処で迎え撃つしかない。

 

「掛かって来い、ケダモノ・・・・・・。」

 

 ギルムードは挑発する――。

 

 * : * : * : * : * : * : *

 

「・・・・・・。」

 

 “・・・・・・。”

 

 獣は挑発には乗らず、ただギルムードの向けた刃に集中していた。

 そうだ。忘れてはならない。

 

(・・・・・・ディーナを渡さない。それが目的だ。男をしとめるのではない)

 

 例え・・・二度とディーナにいらぬ手出しが出来ぬように、闇に葬りたい相手であってもだ。

 獣であっても、ケダモノに成り果ててはならない。なるつもりも無い。この身は、ディーナを守る為のみに使う。

 

 ましてや、ディーナの目の前だ。殺戮じみた戦いを、繰り広げるつもりはない。 

 

「掛かってこぬのか?獣よ、オマエの牙はただの飾りか?」

 

 挑発には乗らない。

 

「――どちらがディーナ嬢に相応しいか。獣の身であっては、推し量る事もできぬお(つむ)か?」

 

 言葉には耳を貸さず、男の動きが発する音のみに耳を傾ける。

 勝負は一瞬で決まる。男の刃を奪ってしまえれば、こちらの勝ちだ。

 獣は狙いを定め続ける。互いに睨み合ったままの、間合い取りは続く。

 

『――・ ・ ・ ・ ・ ・我、ギルムード・ランス・ロウニアが眼前の地に伏す【銀のケダモノ】よりも高見に立つ――』

 

 男が先手を打って、詠唱を開始した。銀の獣(じぶん)は挑発には乗らない。そう判断し、煮え切らなくなったのだろう。

 獣は四肢をより一層、後方へと引いた。後ろ足に体重を掛ける。

 ギルムードはそれを見逃してはおらず、自身も重心をやや後方へと構えた。体勢を整えながら、詠唱を慎重に紡ぎ始める――。

 

(さあ、どうくるか・・・・・・。俺の属性は読めたか、ギルムード?)

 

 ギルムードの狙い。おそらくそれは、物体と精神の両方から自分を弱らせようという考えだろう。

 聖句で心を縛りつつ、剣でこの身の勢いを削ぐ――。あるいは刃で身をいなしつつ、聖句で心を屈させようといった所か。

 

 面白い。そう思う。この俺を縛れるものがあるとしたら、それはディーナ。彼女だけだからだ。

(だからな、ギルムード!俺は縛れぬぞ。オマエのちゃちな聖句ごときではな!)

 言ってやれないのが癪に障る。だが、獣は心の中で罵声を浴びせた。

 

『我は暗闇を称え――その全ての闇をもって包み込む――。包むは身体では無く、その魂の在り処』

 

 ――闇の章の聖句!

 

(そう来たか、ギルムード!)

 

 獣は全身の毛が逆立つのを感じた。


 

 お互い一歩たりとも譲りません。


 ディーナがからんでいるのですから、当然です。


 でもちょっと、ギルも銀(仮名)もわくわくしてやいませんか?――してますね。


 戦うのが本質的にお好きなのでしょう。二人(←?)とも。バレバレですね。銀の彼の正体★

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