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第七章 * 橋での対決 〜一戦目〜


 一戦目は・ギルムード・VS・ディーナ・




     どうして、みんな同じことを言うんだろう。


     ――奪ったとか。野放しに出来ないとか。


     ・・・・・・私も獣たちも、みんな。自由なのに。


 * : * : * : * : * : * : *


 ギルムードの差し出した右手と、男の浮かべた笑みとを見比べながら――。少女の表情が全てを物語っていた。

 せっかくの可愛らしい顔を険しくさせて、何とも煩わしそうだった。

 そのうろんげに見下ろす様子から、答えは聞くまでもなさそうだと思った。そして実際その通りだった。

「――・・・・・・イヤだって、言ったら?」

「なぜです?悪くない話だとは思いませんか?」

「気が乗らないわね」

「そうですか。残念です。それなら、仕方がありません――」

 

 手を引っ込めると、己の目の前で拳を握り締めた。左手で剣を持ち上げ、腰帯に掛ける。

 そして立ち上がり、頭を深く下げたまま告げる。

 

「――ならば、無理にでもご招待するまで」

 

 告げたと同時に伸ばした腕を、少女は油断無く見極めていたらしい。飛び退いてかわしたのには、正直驚いた。

 仮にも訓練を積んだ軍人の動きをかわすとは。思ったよりも身軽で、勘もいいようだ。

 

「そういうの!世間じゃ、誘拐っていうのよ!!」

 

 ギルムードはディーナを捕まえ損ね、空を切った勢いのままに、剣の柄に手を掛けた。

 少女に刃を向けるためでは、無論ない。

 獣を()なすためだ。ディーナ嬢お気に入りのご様子の、銀の獣。

 コイツを聖句で縛れれば、彼女もまた大人しく言う事を聞く気にもなるだろう。そう踏んだ。

「はは。あなたの立場じゃ断れないのに、断るからいけないんですよ」

「何よ、ソレ!?ワケが判らないわよ」

 ギルムードの動きに、ディーナは体を強張らせて叫んだ。

 

(怯えても(すく)まぬか、ディーナ嬢)

 

 ディーナは上体をやや前に構えて、両脇を引き締めいつでもかわせるように、膝を曲げて立っている。

 男から、柄にかけられた手から、視線を外さない。ギルムードは感心した。

 素人ならば剣をちらつかせただけで、竦みあがってしまう。そうなれば、自分の思うツボだ。

 いっそ、そうあってくれたら扱いやすいのだが。この少女には当てはまらないらしい。

 空色の瞳に、鋭利なものと同じ輝きが宿る。――面白い。そう目を細めた。

 

 ギルムードは斜めに体を構えると、左の親指でわずかに剣を浮かせた。

 ・・・カチン・・ン・・と、剣が鞘から顔を出すときの、乾いた音が響く。一気に場が張り詰めたものとなった。

 鞘から覗き鈍く放たれる光に、流石のディーナ嬢も凍りついたようだ。

 

「次々と獣を術者から奪う貴女を、誰が野放しにしたまま――放置すると思いますか?」

「奪った!?とんでもない言いがかりは、何を根拠に言ってくれるのよ!?」

 身に覚えなんてないね、と言い切るディーナにギルムードは改めて、少女の能力のタチの悪さを見た気がした。

 自覚がない(・・・・・)のだ。それは意識せずに、能力を振るっている証でもある。

 それはすなわち、自然と身に備わっているという事。

 

(・・・・・・『天才』型か。厄介だな)

 

 我々を(おびや)かす、最強の術者に成りうる少女が――。今、目の前にいる。

 

(これはこれは。ますます、意地でも我々の手を取っていただきますよ。ディーナ嬢)

 

「では、レドは?ダグレスは?このギルムードの聖句の徒であった獣たちの、

 今のこの状況は何と説明下さるおつもりですかな」

「獣たちは最初から、誰のものでもないでしょう。それを奪ったと言うのならば、あんた等の聖句とやらがそうでしょうよ」

「ディーナ嬢は、勘違いされていらっしゃるようだ。聖句は獣たちと【共存】して行くにあたって、欠かせないものですよ」

 

 言葉を交わす毎に、ギルムードは慎重に剣を抜いていった。もう半分以上、刃はむき出しになっている。

 

「共存?そのために必要だったら、自由を奪ってもいいの?」

「知りたいですか?神殿に上がっていただいた後で、納得行くまで詳しく――。このギルムードがご説明致しましょう!!」

 

 * : * : * : * : * : * : * 

 

 言い終えたのとほぼ同時に、一気に剣を抜いた。大きく足を踏み込む――。

 

 ・ガキィ・・ィ・・・ンン・・・!!

 

 辺りいっぱいに、金属とそれに負けない何かがぶつかった音が響き渡った。

 

 

 



・・・みんな=『フィルガ殿』ですね。ディーナさんの中では。ルゼも含まれますが、怒りはフィルガ行きです★


ギルムードもフィルガと同じ見解のようですね。術者として、ディーナを見ると。


かわいそうに(どっちが)ギルもフィルガも・・・ひとくくり、ですか。

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