表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/37

20 ④ご主人様っ!? 4/5

「ふぁああ」

青年ーー高宮夢路はあくびをかみ殺す。原因は色々考えられるが、まあ、それはまた別の物語である。


彼らの主君である『邪神』ロキーー少年の姿をしているーーが、机の上に広げた地図に駒をいくつか、置く。


「今回は、目障りなヘルの軍勢を何とかしようと思ってな。貴様らには、ニヴルヘイムへと『食糧』を輸送する部隊を襲撃してもらいたい」


「武士が、そんな卑怯な真似ができるか。」


ぼそりと言うユメジの頬を、隣の席のワルキューレが、思いきり引っ張る。

「あるじ様。勇敢さだけで戦に勝てたら苦労は致しません。一騎打ちで勝敗がつくのは、物語の中だけですわ。」

「ひゃ、ひひゃひ」


「わかればよろしいのです」

ワルキューレが、白い指を離す。

一瞬、その手にみとれながら、こんな美しい手にならあと一時間くらいは引っ張られていたかった、と、愚にもつかないことを考える青年。


   ◇


というわけで彼らは今、雪の降りしきるニヴルヘイム近くの山道に潜んでいた。


「さ、さ、寒いでござるぅ」

「あたしも歯の根が合ってないぃ」

ガチガチと歯をならしつつ、身を寄せ合う乙女たち。そちらを見ていたユメジの視線を、どう解釈したのかーー

「ますたぁも、あったまりたい?」

変温動物であるドラゴンが、こんな寒冷地で活動できる秘訣は謎であるが、彼女らは、ドラゴンが丸くなった中に寄り集まっている。

「……遠慮する。」

「ぶーっ! なんでよぉ! こぉんな、美少女があっためたげるって言ってんのにぃ!」

竜騎士がむくれる。

「まあ、まあ。お館様にはお館様の考えがあるのでござろう。お館様はハリネズミなのでござるよ」

「……ハリネズミ??」

首をひねる竜騎士。彼女の髪にも肩にも、かすかに雪片が積もっている。


「……ダレがハリネズミだ、こら」


ふたりーー 一対のゴーレムたちが、くすくすと彼の傍らで笑う。

「「ユメジはハリネズミなのですか? だったら私は、籠に入れて飼いたいです」」


「ーーう」

照れるユメジの傍らで、針葉樹の枝から、どさどさと雪が落ちた。

白い雪片が、粉のように舞い上がる。

そのときーー


「来た!」

雪の上に身を伏せる一同。

大分遠いが、毛の長い大型獣の牽く車が、雪道を進んでくるのが見えた。


二台、三台ーー五台。

幌もない荷台には、大きな籠ーー檻というべきだろうかーーが乗っている。

くして、ニヴルヘイムへ運ばれる食糧とは。


「人間っ!?」

「ーーいや、『エルフ』でござる」

竜騎士の驚きに対し、『もののふ』が目を細めて言う。

「エルフ? 妖精のこと?」


彼らのお喋りの内にも獣車は進み、ついに彼らの前を通りかかる。


「行くぞッ!!」

ユメジが叫ぶのと同時ーーいや、一瞬速く。

真白い鱗の飛竜が飛び立つ。

空からの強襲エアレイド

御者は空を指差し、後続に警告する。

護衛、なのだろう。御者の隣にいた幾名かの戦士たちが、大剣を構える。

金属鎧は寒冷地では、体温を奪うただの邪魔物だ。彼らは、分厚い毛皮だけを身につけていた。


「『邪神』ロキが配下、高宮夢路だ! ーー降伏しろ! 命は保証するッ!」


ーー降伏勧告は、有って無きが如し。

ようやく最後のひとりになって、武器を投げ捨てた。


彼の投げ出した剣が、重みで雪に沈む。


   ◇


彼らの懐を探り、檻の鍵を見つけ出す。扉をあけると、薄い布の服一枚だけをまとったエルフたちが、次々に降りてきた。

「ありがとうございます」

「何とお礼を言ったらいいか……」

「これで森に帰れます」

白一色の中に、ふいにほかの色彩を見つけ、ユメジの目はそれをとらえた。

小さな子供だ。

浅黒い肌。尖った耳。アーモンド型の、黒い瞳。他のエルフの半分ほどの身長しかない。


「……ごしゅじんさま……?」


彼女が振り向いた。


雪の上を、素足のまま走ると、ユメジの胸元へ飛び込んだ。


「ご主人様ぁっ! あいたかったのです!!」

「ーーえ?」


戸惑うユメジへ、乙女たちの視線が突き刺さる。

「ますたぁ、女の子を調教してご主人様ぁ☆ とか呼ばせたりしてたの?」

「サイテーでござるな。人間としてどうかと」


「違うからっ!? そんなことするかよっ!!」


「えー? もう何も信じられないよ」

「おいえを取り潰されても文句は言えないでござる」


白いエルフの大人たちに混じって、一人だけのダークエルフの子供。彼女は、ユメジの服を掴んで話さない。


「……ご主人様にもらった首輪、落としてしまったのです。あの、鞭で叩いていいですから」

潤んだ黒い瞳が訴えかける。

「叩かないしっ!? 鞭って、何が起きてんだよ!!」

「……そうですよね。リィがいけないんです。首輪、探してきます」

ユメジは、慌てて彼女の手を掴む。

「そんなん探さなくていいって!」


彼女は驚いてーー次に、泣き出す。

「……でも、でもあの首輪には、リィとご主人様の楽しい思い出がいっぱい詰まっているんです……。リィがご主人様の帰りを待ちきれなくて自分でしちゃった時も……ご主人様は優しく叱ってくれて……」

頬を染め、潤んだ目で青年にすがりつくダークエルフ。

彼の耳には、後ろからの、ふたりの乙女のひそひそ声が聞こえる。

(何をしちゃたんだろ?)

(……竜騎士殿にはきっとまだ早いでござる)

(早くないもん!)


「その子は……」

ひとりのエルフが、遠慮がちに話す。「どこから来たか、分からないんです。私たちの森のエルフではありませんし」

「ご主人様~」

すりすり、とユメジに頬ずりするダークエルフ娘。


「……ええと、これ、どうすれば……」

うめくユメジに、竜騎士と武士の声が重なった。

「「責任取りなさいっ」るでござる」

Thanks for Reading !

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~ぱんつの明日を考える。~
※ この小説は、KINOグループの提供で製作されています。※

1アクセスあたり、一円相当のパンツを、地球温暖化で危機に瀕する北極熊のために寄付しています。もちろん、ウソです。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ