祠の…
初のオリジナルなので、大目に見てください。
『ド』が付くほどの田舎の町には、恐ろしい言い伝えがある。それは、三丁目にある祠に、夜中の二〜三時に近づくと、祠から分厚い男の手が伸びて来、近づいたものの足を祠に引きずり込むという、恐ろしい噂が存在する。
この噂は、この町に住む者なら、誰でも知っている事で、子供のころから、近づいてはいけないという教育がしっかりと出来ている。
しかし、むさ苦しい熱帯夜の夜、高校二年生の春樹、夏海、秋久、冬香の四人が、その禁忌を破ろうと、三丁目に続く道を進んでいた。
「やっぱ、やめようよ。」
春樹は、禁忌を破る事に罪悪感を感じ、やめるように促す。
「何言ってるの、春?あなたが、言い出したのよ。」
夏海は、弱気の春樹を叱咤する。
「まあまあ、でも、あんな噂じみた事、嘘に決まってるって。昼間に行っても何も起こらないだろう?ホントにお化けが出るなら、昼間にも、出てくるはずだろ?大丈夫だって。」
秋久が、正論なのか判断し辛い論理を述べ、春樹を納得させようとする。
「え〜でもな…怒られたりしないかな…?」
「もう!覚悟決めなって、ホラもうすぐ着くから。」
「う〜…じゃあ頑張るよ…」
三人の集中砲火を浴び、前を行く三人の半歩後ろをトボトボと着いていく。五分ほどで、三丁目の祠に到着する。この時に、帰っていれば、彼らの結末は、代わっていただろう…。
秋久が、賽銭入れの所に百円玉を入れると、ほっとした表情を浮かべる。それは、他の三人も同じだった。
「な、なんだぁ…やっぱり、何もなかったじゃないか。」
その時だった。秋久が安堵した瞬間、祠の扉が急に開き、秋久の首を無骨な手が掴み、そのまま、祠に引きずり込んだ。あまりの早技に秋久は、声を上げる間もなかった。
バリ、ゴキュ、ブシャといった、人を喰らう生々しい音が春樹、夏海、冬香の耳にしっかりと届く。
「ヒッ!!」
「や、やだ…秋?」
「キャアアアアアア!!」
三人は、すっかり腰を抜かしている。そこに追い打ちをかけるかのように、肉の部分が一切なく、ほぼ無傷の人骨が祠から、はじき出される。それが、誰の骨かは、言わずとも分かるように、秋久の物だ。さらに、ヒューヒューという呼吸をするような、音が聞こえてくる。
「な、なんだよ…おい、やっぱりやめときゃよかったんだよぉ!」
春樹は、完全にパニック状態に陥っている。
次の瞬間、祠が吹き飛んだ。比喩ではなく、吹き飛んだのだ。そして、現れたのは禍々しい黒い、ナニカだった。それは、この世のものとは、思えないものでナニカとしか、形容できなかった。
ちなみに、この言い伝えには続きが存在し、町長の家にある古文書には、こう記されている。
『三の祠に、邪神を封印したり、百の人を喰いしとき、その封印は、解かれよう。故に近づくべからず。』
このナニカとは、邪神だったのだ。封印が解けたという事は、秋久が百人目と言う事。
手始めに、邪神は残った三人を喰らうと、三丁目の家々を潰しに行った。
次の日の新聞の見出しは、
『田舎の町の町民、全員、約千人が消えた!?』だった。
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