眠い アイス テレビ
ネトゲ友人グループの癒し的存在に送る。
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「あつぃ~。しぬ~。溶ける~。」
とある昼下がり、一人しかいない私が扇風機に向かって話しかける。昨日からクーラーが壊れていて、まともに機能しないというのに、テレビが騒ぐのは今年の例年を遥かに超える猛暑、地球温暖化への危惧ばかりだ。そんなことより、もっと熱中症について注意しろよ。昨日も友人が倒れたと聞いた。
クーラーが壊れているだけではなく、私の部屋にはわずかな風も入ってこない。風上の方に最近新しいビルが立ち並び、風を遮っているのだ。室内は、サウナも顔負けなんじゃないかと思うくらい暑い。むしろ熱い。お風呂に入ってもすぐ汗びっしょりになってしまった。
「ぅあ~。」
だから私は、フローリングの床にそのまま横になり、扇風機の風を浴びながらひたすら少しでも冷たい場所を探してごろごろと床を転がり続けている。何もする気にならない。完璧な夏バテ状態だ。
そういえば、と。
冷凍庫にアイスがあった気がする。と思いだし、ゆったりとした動作で冷蔵庫の所へ向かう。
「あいすー。あいすぅ~。」
しかし、現実は非常で、アイスはそこには無かった。それどころか、氷さえまともになかった。
くっそぅ。
クラッとした体を何とか支え、とりあえず冷蔵庫から冷やしていた水があったとと思い冷蔵庫を開けるが、こちらも空っぽ。わずかも残っていない。昨日の私はいったい何をしていたのか、水くらい補充しておけばいいものを。
昨日の自分にむかって恨み言を吐きながら、再び扇風機の前に戻る。どんなに冷たいものを求めていても、買いに行くほど余力があるわけじゃない。と、その時携帯が鳴った。一昔前の夏メロだ。これを聞くと夏だなぁ、という気分にさせてくれる。そして、それが今は止めになりかねない。とりあえず、電話を手に取る。
「あついー。アイス―。みずー。じゅーすぅ~。」
電話を取るなり、相手が何かを言い出す前に言ってみる。
「・・・。せめて、電話とった直後くらいは相手の話を聞こうよ。ていうか、水くらい冷蔵庫にあるんじゃないの?」
おお、ちゃんと突っ込んでくれた。
「あったら言ってないわよ。それで、どうしたの?」
暑くて真面目に話す気力なんてわかないのだが、少し口調を直す。それでも、声に力がこもっていないのが自分でもわかる。
「うっっわ。声に覇気がないわねぇ。いつもウザったいくらいに元気なのに。」
相手の言葉に少しむかついたが、冗談交じりに舌打ちする気力もない。
「昨日からクーラーが壊れてるのよ。私のアパート風が入らなくて・・・。」
「あっちゃー。あんた暑いのだめだもんねー。それで、腐ってるわけか。」
相手の声に少しだけ同情が含まれる。
「同情するなら水をくれー。冷たいといい。アイスだとなおいい。」
「絶対言ってくると思った。」
そういって苦笑を漏らす。
「なぁ、テレビつけてみてよ。えっと、何チャンかな・・・。」
相手に指定されたチャンネルに合わせてみると、そこには海のリゾート特集が。青い空、白い雲。まったく、腹立たしいほどにみんな夏を満喫している。
「これがどうかしたの? こんなの見てても余計熱くなるだけ・・・。というかむかつくんだけど。」
「まぁまぁ、ここにさ、みんなで行こうって話が出てるのよ。今日。あっついでしょ?」
「いきますっ!」
「はやっ」
行くメンバーと準備するものを聞いたあと、アイスを買ってきてもらう約束をして、いったん電話を切った。どうやら迎えに来てくれるらしい。さぁ、夏を満喫しにゆこう!
……。準備だるいなぁ。
「天国やー。」
迎えに来てくれた友人の車内。クーラーがしっかりきいていて、そこで買ってきてもらったアイスを食べながら友人たちと話す。
私たちのグループは四人グループで、だいたい何でも四人でやっていた。高校時代からの友人たちだ。
彼女たちとの雑談を楽しみながら、車は渋滞にぶつかる。
進まねー。でもクーラーきいてるからいいじゃん。だねー。バイクの連中ざまぁ。彼氏と2ケツなんてするのが悪い。なんて会話を続ける友人たちの声をBGMに私の意識はゆっくりと沈み始めていく。
あまりの猛暑に昨日からあまり眠っていないからだ。
次に目を開くときには、青い海、白い砂浜、そしてリゾートホテルの素晴らしい食事なんか思い浮かべながら、私は瞼を開け続けるのを諦めて、エンジンのかかった車の心地よい揺れに揺られながら、意識を手放した。
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これを書いたあたりでなんか足りないものが気付いた気がする。
次のやつから頑張るんだぜ。