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三題噺  作者: 夕暮 帷
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alone iPod チョッパー

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――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 放り投げられたかばんが、文句を言いたげにどしゃっと音を立てて落ちる。

 俺は制服から着替えることもせず、そのままベッドに横になる。

 下校時からつけていたiPodが、有名歌手の歌をイヤホンから吐き出し続ける。

 ――今日も、一人きりだった。

 一ヶ月前、ちょっとしたことからクラスで孤立して、誰からも近寄られなくなった。そして、その日から、何をするにも独りだった。

 昼食をたべるのはもちろん。クラスで何人人組で別れてください、なんて先生が行った日には、必ず最後まで残った。そして、先生が俺をどこかのグループに入れるために苦労するのだ。過激な人にいたっては拒否するからな。

 ただ何をするでもなく見上げる天井は、円状の蛍光灯がぼんやりと光っており、部屋に唯一ある窓は数年前から大きなマンションが建ってまともに光が入らないから、カーテンが閉め切られている。この薄暗さが、俺の日々の生活から余計に現実感をなくしていた。

 ――どうしてこうなったんだろう。

 ぼーっとしたままそんなことが頭をかすめる。そうして、思考は一ヶ月前のあの事件へと向けられていく。しかし、それが形になる前に、俺は頭を振って、その思考を追い払う。

 ――いまさら考えたって、どうしようもないだろう?

 だって、何回やり直したって自分は同じ選択をして、同じ行動を取るだろうから。そして、それならばクラスメイトだって同じ行動しか取らないだろうから。それこそ、クラスメイトが受け入れてくれたあったかもしれない未来を想像するほうが馬鹿げている。

 どのくらいぼんやりとし続けていただろうか、ただ横になっているだけのこの状態は、俺からさらに現実感をなくさせ、だんだんと今自分がいるのが夢なのか現実なのかもわからなくなっていった。

 その時、窓を叩く音が聞こえたような気がした。

 コンコン。コンコン。

 数年前にはほぼ毎日のように聴き続けていた音だ。とても懐かしい。これもこの現実感がない状態が作り出す夢うつつな状態なのだろうか、ととりとめもなく考えを巡らせる。特に動くこともなく、ただぼーっとしていると、しかし、ノック音は止むことがなかった。

 もしかしたら、懐かしいやつの幻覚も見れるかもしれない。そう思った俺は、のろのろと、カーテンを閉めたまま窓の鍵を開けた。

 「――――おっせぇよバカ!! 凍死したらどうしてくれる!」

 カーテンを引きちぎるように力任せに開けながら、怒鳴りつける声が聞こえてきた。俺は、はっと顔を上げる。

 「ぇ…。お前…。…誰だよ。」

 顔を上げた先には、青っ鼻の妙に人っぽい、二足歩行できる変身トナカイのぬいぐるみがいた。

 「やぁ、俺はチョッパー!」

 そいつは言う。いや、名前は知ってる。

 「妙に上手いな。練習でもしてたのか?」

 「何言ってんだ。俺はもともとこんな声だぞ?」

 チョッパーの手を動かして頑張って頭に当てようとしている。…と思う。だって、手が短すぎて手を上げてるようにしか見えないんだが。

 「そうだな、チョッパーはそんな声だな。んで、何しに来たんだ?」

 後ろのやつにさらに声をかける。

 「…なんだよ。面白くないな。もうちょっと乗ってくれたっていいだろう? 昔のお前は何処に行った!」

 ようやくぬいぐるみを下ろしてそいつが顔を見せる。記憶にあるのよりわずかに髪が長いようだ。

 「ならもうちょっとおもしろいネタを持ってくるんだな。」

 俺が冷たく言い放つと、あいつは項垂れた。自信作だったのに。とかつぶやいている。

 「それで、久しぶりだな。何しに来たんだ?」

 ベッドまで戻ってあいつに向かって座ると、そのまま問いかける。

 「おいおいなんだよ。挨拶だな。友人宅に何か用がないと来ちゃいけないのか?」

 あいつはおどけたように言うと、靴を脱いで部屋に上がってくる。

 「いや、そういうわけじゃないけどさ。お前、ずいぶん長い間こなかったじゃん。」

 あいつが来たのは大体半年ぶりくらいだろうか。別の高校に上がってからめっきり来なくなったのだ。

 「しかたがないじゃん? 忙しかったんだからさ。そんなことよりゲームしようぜゲーム。今日こそお前をぷよぷよで泣かしてくれる。」

 まるで自分の部屋のように俺の部屋を漁り始める。そして、引っ張り出したPS2をこれまた当たり前のように準備し、俺にコントローラーをさし出してくる。

 「お前…。ぷよぷよとか、何年前の作品だよ。」

 コントローラーを受け取りながら、床に座り込んだあいつの隣りに座る。

 「第一お前、俺にぷよぷよで勝てると思ってんの?」

 ぷよぷよには自信がある。ぷよぷよ歴は長いが、まだ一回も負けたことがない。どんな状況でも連鎖を作れる俺を恐れて最終的には誰も対戦してくれなくなったが。

 「なら今日こそ泣かす…。まぁ、負かせてやろうって言ってるんじゃないか。お前、俺がこの半年でただ日常を過ごしてたと思うなよ?」

 「まさかお前、ずっと練習してたの…?」

 んな馬鹿なことするわけねぇじゃん。と言って、対戦を始める。

 俺達の対戦は、大体十回勝負で行う。多く買った方が勝ち。同じだったら引き分けって感じだ。

 ちなみに、ぷよぷよ対戦は何回もやったが、今まで負けたことはない。

 今回も負けることはないだろうと、でも油断しないように、全力を持って潰しにかかった。


 「あぁー。また負けたー。」

 九回戦目、異常な粘りを見せて30分以上の集中を続けたあいつも俺も、二人で床に寝そべった。

 「お前、強くなったなぁ。なんだよあの粘り。むしろきもいぜ。」

 俺の言葉には疲れきった笑いを。

 「だろ? けど、惜しかったなぁ、一回だけ追い詰めたと思ったんだが。」

 「たしかにアレは危なかった。でも、まだまだだなぁ。」

 「ちぇ。偉そうに良いやがって。なんであの極限状態の集中で10以上の連鎖を何回も飛ばしてくるんだよお前。お前もきめぇよ。」

 「上三段だけで十分以上粘ったお前のほうがおかしいと思うが。」

 二人して褒めてるのか罵り合ってるのかわからない言葉の押収をしばらく繰り返した後、どちらからとも静かになる。二人して天井を眺める。

 「…なぁ。お前、さ」

 あいつがゆったりと口を開く。

 「ん~?」

 俺は気だるげに生返事をする。あいつは、しばらく言いにくそうに口を開け閉めしていたが、やがて。意を決したように口を開く。

 「お前、最近浮いてるらしいじゃん?」

 あいつのその発言に、息が止まりそうになった。あいつも、アレについてのことを聞きたいのだろうか。

 「その…。なんだ。こんな事言うのも俺のキャラじゃないと思うんだが。」

 あいつは一度言葉を切ると、大きく深呼吸をする。

 「学校に友人がいないのは暇かもしれないけどさ、誘ってくれれば俺はいつでも遊びにくっから、別に、必ずしも学校に友人を作らないといけないっていうわけじゃないと思うぜ。そこで作りづらいなら、俺の所に来いよな。友人を紹介してやるよ。」

 んで、いつかぷよぷよで負かせしてやる。覚悟しとけ! といって、逃げるように靴を持って向かいにあるマンションのベランダに飛び乗る。

 残された俺は、再びイヤホンを耳に突っ込み、流れっぱなしだったiPodの音楽を聞く。そして、置いたまま放置されていたチョッパーのぬいぐるみを抱え込む。

 どこから耳に入ったのかはわからないが、あいつに心配されていたらしい。

 友人も紹介してくれるとか言っていたが、心配だけで十分だ。

 明日から、もうちょっとみんなと打ち解けられるように努力してみよう。どうせ、失うものは何も無いのだから。

 今は、自分で付けた手錠を外すときなんだろう。とつい流れていた歌の歌詞に返してしまった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

なんだか書いてて文章というか話が変な感じが否めねぇ。

何とかしたいなぁ…。文才が欲しい

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