漫画 小説 本
すこし読み返していた思った。
ちょっと描写が足りなかったかもしれない。
まぁ、意味ワカンネ。っていう感想がきたら直すかもしれません。
…時間があったら。たぶん。
誤字と表現をちょいと修正
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それを見つけたのは、まったくの偶然だった。
何故か英語だけ別の教室でやるという、よくわからない移動教室で割り当てられた俺の席。
茹だりそうな暑さの中、冷たさを求めて机に手を入れたら、机特有の金属の冷たい感触ではなく、紙特有の暖かい感触が伝わってきた。
俺、ノートなんて入れた覚えなかったけどな…。
そう思いながら取り出したそれは、どこにでもある大学ノートだった。
名前も書かれていない。
退屈な授業を受けるよりはと、何か書かれていないか適当にめくってみる。
始めの数ページには何も書かれていなかったが、ちょうど十ページほど捲ったあたりで何かが目に入った。
勢いでめくりすぎたページを急いで戻すと、そこには何かしら小話が書かれているようだった。軽く読んでみると、それは男女の物語のようだった。
なんともなしにそれを読み始める。英語の授業なのだ。先生の話など右から左に抜けていくだけだ。
しかし、話はまだ短く、冒頭部分しか描かれていなかったらしい。男の子が女の子に出会ったところで、その続きはまだ書かれていなかった。
予想以上に短かった小説は、残念ながら授業すべてを潰す暇つぶしには成り得なかった。
しかし、すでに始めの部分を無視した英語の授業はなお意味が分からなくなっている。今から聞いたって理解できるとは思えない。
やることがなくなった俺は、その小説のページを使って、絵を書いていく。
特に書くことも思い浮かばなかったので、書いていくのは小説のワンシーン。男子が女子に話しかけられるところだ。
といっても、俺はそこまでしっかり絵が描けるわけではない。まぁ、どんなシーンかは理解できる程度まで仕上げて、ついでだからと、女の子の言葉までふきだしをつけて書き加えていく。
そこまで描いたところで、授業が終わり、それはノートをそのまま机の中に放り込んで、次の授業のために移動を始めた。
数日後。
再び英語の授業で同じ教室までやってきた俺は、再び机の中に例のノートがいれてあることに気がついた。
こういうのって人に読まれたくないんじゃないかな、なんて思いながら授業の暇つぶしがてらノートを開く。
意外というか予想通りというか、ノートに書いた俺の落書きは健在だった。
持ち主がこれを見たら消すだろうからな、なんて思い、やっぱり書き進められていないだろう小説は、しかし、書き進めれていた。
ちょっと読んでみて、混乱した。場面が飛んでいるのだ。
この前は下駄箱のところで男の子と女の子が合ったところで終わっていたはずなのに、今回はいきなり教室の中から話が進んでいる。
しばらくどういう事かと考え続けて、やっとわかった。
どうやら俺が描いた絵の続きから書かれているようだった。たしかに簡単な漫画のようにしたが、それをそのまま採用するとは思わなかった。
そして、今度の話は下校するところで終わっていた。そして、さっきは気づかなかったが、『あなたはどうしますか?』の文字。
丸い文字で、女子が書いたのかもしれない。
主語もなにも合ったものではない問いかけだが、不思議と自分に向かって言われているのがわかった。もちろん。続きを描いていく。『なんで俺の絵をそのまま使ったんだ?』という文字と共に。
その次の英語の授業。
英語の授業が始まったと見るや、すぐに机の中からノートを取り出す。見てみると、また少しの小説の続きと返事が書かれていた。やはり、
『もちろん。そのほうが面白そうだからです。』
よくわからない返事に、俺は顔をしかめる。
『は? 意味わかんねぇよ。』
とりあえず小説の続きを描いて、ノートを机に入れた。
これに対する解答は、はぐらかされたままだ。
そんな、小説と漫画で描かれる不思議な話のやりとりは、数カ月にわたり、テストを何回かまたぎ、さらには長期休みさえもまたいで行われた。さすがに長期休みの後は何を言っているのかわからなくなって、今まで書いた会話と小説を全部読み返すはめになってしまったが。
話の内容としては、趣味の話、小説のこれから。これは、あえて話し合わないことにすることにしたが。お互いに趣味が読書と分かってからは、ノートと一緒に本を忍ばせて、借り貸しすることもあった。予想外だったのが、意外とアニメや漫画の話もわかることだった。
そして、長期休みが終わった頃には、英語の授業の時に描く漫画と一言のやりとりがずいぶん楽しみになっていた。そんなとある日のこと。
英語の前の授業が早く終わった俺は、あのノートを早く見たいと、授業が終わり次第足早に英語の教室へと向かっていた。
しかし、俺の授業が早めに終わっても、他のクラスの授業が早く終わるわけではないのである。英語の教室の前まで来た俺は、まだ沢山の生徒が席についているのを見て、おっと、とすぐに廊下に引っ込む。
そっと中を窺ってみると、俺の席のところには、前髪を切りそろえ、背中の方に垂らした女子が座っていた。そして、例のノートを開いている。
――イィエス!! どストライク!! バッターアウト!
つい、ガッツポーズをしそうなほどタイプだった。これはお近づきにならざるを得ない!
その時から、とりあえずアタックをすることにした。
――まではよかった。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
何が、といえば、どう切り出せば実際に会えるようになるかわからないのだ。
会えれば後はこっちのもののような気もするが、いかんせん、彼女いない歴=年齢なのだ。どうすればいいのかさっぱりわからない。
悩みに悩んで、授業の終わりかけ、結局ストレートに行ってみることにした。
『実際にあって話してみねぇ? 意外と話が合いそうな気がするんだけど。』
『いいですよ。』
返事はこれだけ、では無かった。
なんと、連絡先、とメアドが書いてあったのだ。
すぐさま机の下で携帯を開くと、俺はメアドを猛烈な勢いで打ち込み、メールを送信する。内容は、もちろんどこで、どうやって会うか、だった。
さすがに付き合う気があるわけでもない――俺は割とあるが――男女が高校なんてところで二人っきりであったらそりゃもう噂がひろがりんぐで大惨事になることうけ合いである。ちょっと混乱した。深呼吸。
返事はすぐに帰ってきた。週末、学校近くの少し小洒落た喫茶店で会うことになった。
この際に本名も初めて知った。 可愛らしい名前だと思った。
週末。
この日のために美容室に行って髪を整えて、ワックスの使い方を研究し、自分の中で一番センスのいい服を選んで着てきた。まぁ、素がイケメンじゃないのが残念なところだが、可もなく不可もなくといったところではあると思う。
待ち合わせ場所で、携帯でメールのやり取りをしながら相手を待つ。デートの時の気分とはこういう物なのだろうか、非常に落ち着かない。
少なくとも、今日の頑張り次第では俺にも春がくるかもしれないのだ。
「あの、すいません。もしかして、〇〇くんですか?」
ほんと、頑張ろうと思う。
気付かれないように深呼吸して、顔を上げた。
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