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三題噺  作者: 夕暮 帷
16/23

フェミニスト サディスト マゾヒスト

ずいぶんと書くのが遅くなってしまった・・・。


1月以上あいだがあかなくてよかった

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「お前らさ、そこに困っている女性がいたらどうするよ?」

 放課後、帰る準備をだらだらと話しながらしていたらそいつは俺の前の席に座り込むなりそう聞いてきた。

 「は? 何言ってんだ?」

 俺が怪訝な顔をして聞き返すと、特に気を悪くした風もなくもう一度聞いてくる。

 「だからさ、そこに困っている女性がいたらどうするよ?」

 「どうするよって言われてもなぁ・・・。そんなの普通に助けようとするんじゃね? いや、美人かどうかによるな」

 「正直だなお前。美人じゃなくても助けるとか言えよな・・・。まぁ今回は美人って設定でいいや」

 そいつはため息をつくと、仕方ないなこいつという感じで条件を付けたす。

 「美人なら・・・。普通に助けるんじゃないかなぁ?」

 ちょっとそのシーンを思い浮かべてみて、素直に言ってみる。女性とは容姿次第で回りからの扱いが変わる。美人ってホント得だよなぁ。

 それを聞くと、そいつは当然とばかりに頷いていた。

 「そうだろうそうだろう。やっぱり女性は助けるもんだよなぁ。」

 そういってぽんと俺の方を叩く。まぁ、その考えは割と一般的な気がするけどさ・・・。

 「何言ってんだよお前ら。そんなシチュがあったらとりあえず傍観してその美人が困ってるところを堪能するべきだろ」

 そういきなり横から割り込んできたのは、さっきまで片付けをしながら話していた友人だ。

 「もしくは、一緒にそれを探してやった後、それをしばらく返さずに困った顔を堪能する・・・なんだよお前ら。そんな見たことない生き物を見たような目で見るなって」

 いつの間にかそんな顔をしていたらしい。とりあえず軽く愛想笑いをして場の空気を少し和ませる。

 「ははは・・・。でも知らなかったよ。お前ってSだったんだなぁ・・・」

 そう言うと隣にいるサドは、必死で頭を横に振って否定する。

 「いやいやいやいやいやいやいや! 俺Sじゃねぇから! 本物のSはもっとえぐいから! 絶対困ってるのを知って更に困らせるくらいの悪事はやってのけるから!」

 サド野郎の弁明を聞き流していたら、俺の前に座っている奴が立ち上がって机を叩いた。

 バン! と結構な音がして周りにいたやつが少しだけ煩わしそうに視線を向ける。

 「な、なんだ? いきなりどうした?」

 俺とサドは目を白黒させながら問いかける。そいつは少しの間体をプルプルさせながら少し堪えているようだったが、注目の視線がだいたい離れたころに結局爆発した。

 「てめぇ、女性なら美人だろうとブスだろうと助けるのが男ってもんだろう! それなのに! 美人だけを助けるならまだしも嫌がらせだぁ? バカなのかこの野郎!」

 いきなりの豹変ぶりに俺とサドはついていけず、サドに至っては両肩をつかまれて揺さぶられるがままにされている。

 しばらく揺さぶられるがままになっていたサドだが、やがて気分が悪くなってきたのか手を振り払って声を上げた。

 「んだよお前! さっきっから女性女性とうるっせぇ! お前アレか! えーと・・・。なんていうんだっけ? 女性主義者みたいなやつのこと」

 そう途中で言いよどんだサド野郎は、俺の方を向いてくる。そこでこっちに話を振るなよ。

 俺が知らない、と声をかける前に、もう一人がわざとらしく咳をした。そっちを見ていると、よくぞ聞いてくれました! という感じのドヤ顔で胸を張っていた。

 「そうさ! 俺こそ世の女性に尽くす運命の元生まれてきた紳士! フェミニストと呼んでくれて構わんよ」

 すごく期待のこもったまなざしを向けてきた。呼んでくれってことか? ならそうだな・・・。

 「一、紳士へんたい。二、変態。三、変態紳士。四、フェミ。のうちどれがいい?」

 「・・・。なぁ、選択肢一個しかなくね?」

 「失礼な。四つも提示したじゃないか」

 「初めの三つを選ぶやつがあるか!」

 「仕方がないなぁ・・・。それじゃあ俺が選んでやるよ。お前は変態紳士な」

 「ちょ、待てよおい。せめて最後の奴でお願いします!」

 ぐずぐず悩んでいたようだったので、俺の方で決めてやる。俺ってなんて友達思い…。

 変態紳士の方は俺の机に突っ伏してさめざめと何か言っていたようだが、友達思いな自分に酔いしれていたので聞こえなかった。

 「そんなことよりもだ。やっぱり美人の困った顔は可愛いだろ! もっと困らせたくなるだろ!?」

 「そんな事とはなんだ! 女性は笑顔が一番だ! 困らせるんじゃない!」

 ふとトリップから見事現実に帰ってくると、なにやらサドと変態紳士のデッドヒートが繰り広げられていた。あたりを見回しても誰もいない。もうみんな帰ったようだ。

 「お前らさぁ・・・。女性をいじめるにしろ助けるにしろ何がしたくてそんなことするの?」

 二人の終わりそうにない平行線な言い合いを聞きながらぼやく。

 「そこに女性が困っているというのに、お礼などいらんわ!」と変態紳士。

 「しばらく困っている顔を見せてくれたら、別にお礼はいらないかな。というか、お礼がもらえるならそれだけで十分です。」

 そのサドに変態がお礼目当てで人助けをするのか!とつっかかるが、お礼をもらえるのは普通にいいと思う。

 「それならお前は何が欲しいんだよ」

 「ぇ・・・。特にないなぁ」

 「そんなことねぇだろ。絶対何かあるはずだ。ほら、言ってみ」

 サド野郎がどんどん迫ってくる。顔が近い。離れてくれ。

 「言ったら離れてやるって、ほら」

 こうなるとこいつはこっちが折れるまで折れることはない。諦めて言うほうが速いだろうか。

 「ぇー・・・。俺は・・・。なんだったら責めてくれたら嬉しい・・・。かな」

 「「えぇぇぇえええええーーーー」」

 二人の絶叫が重なる。この後、俺のあだ名がマゾ、どMになるまでにそう時間はかからなかった。

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