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ガルダン  作者: 角筆夫
散歩
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12/35

あったかシチュー


「ほうら。あったかシチューですよ」

というと、割烹着を着たおばさんが、急に小さなお椀にシチューを入れて持ってきた。どうやら、新しいメニューに加わるのでサービスしてくれるらしい。

「ありがとうございます」

といって、私がシチューを受け取ると、夏生は、物欲しそうに見ている。

「えっ、欲しいの」

「欲しいけど、太っちゃうからなあ。だから、やめとくよ」

「いいじゃん。少しくらい太ったって」

「ダメダメ。このタイミングで、シチューをあと少しでも入れると、体重がとんでもないことになるから」

「そんな、とんでもないことになったことってあった?」

「あなたは無頓着だから、わかんないんだって」

「そうなのか」

「そーよ」

「っていうか、俺って無頓着かな」

「そうよ」

「そうか。そうかもしれないね」

なんとなく話題が途切れたので、夏生は、話を小説の方に戻した。

「そういえば、小説を書いているのだとか」

「うん。書いているよ」

「どんな小説を書いているの?」

「うーん、恋愛小説かな」

「へえ。面白そう。完成したら教えて」

「うん。でもねえ。自分、そんなに恋愛について知らないからさ。そこから、バトル物に舵を切ろうと思っているんだよね」

「バトル?恋愛ものだったのに」

「うん。面白いだろ。恋愛もののポエムみたいな空気を引きずりつつ、いきなりバトルという」

「ジャッキー・チェンみたいなものかね」

「ジャッキーかどうかは知らないけど、あの人のポリスストーリーとか少し青春ものを連想させるけどね」

「うん。あんまり知らないけど」

.「知らないのかい」

「うん」

こうして、話の腰がいったんボキボキに折られた後で、彼女はつぶやいた。

「実は大変なことが起きているの」

「え?何」

私は、何か彼女に起きたのなら、すぐに助けてあげる気持ちでいたが、しかし、それは地獄の入り口へと繋がる、いわゆる一種の罠のようなものであった。しかし、この時、私は気づかずに、コクのある美味しいシチューに舌鼓を打っていた。

 まさか、この後の私の行動が、地球平和に、否、宇宙平和にモロに響いてくるものだったというのことは、誰も知るまい。神のみぞ知る真実、いや、『神実』だった。会田鉄夫の言葉が頭をよぎる。


「パンドラの箱、開けちゃいな」


開けた途端に、鬼が出るか蛇が出るか。希望が出てくるまで、生き延びることができるのか。今日、そんなことが起きる、そんな予感が私にはあった。

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