たぶん、剣と魔法の世界④
どうぞ、と返すと一人のメイドと一人のお医者様が入ってきた。
白うさぎ……もとい、レティちゃんは、少し心配そうな顔を浮かべている。
ロップイヤーにも見えるツインテールは先ほどよりも少し乱れ、ふわふわになっていた。
「お待たせしました。レティちゃんを連れてきました。」
「お嬢様、大丈夫ですか?」
美形と白うさぎが近づいてくる。まるでおとぎ話のようだ。きっとこの世界はおとぎ話がテーマの乙女ゲームに違いない。
「お医者様、先ほどはみっともない姿を見せてしまいすみませんでした。レティちゃんを連れてきてくれてありがとうございます。お二人とも、私の話を聞いてくれますか?」
自分が悪役令嬢という立場であることを忘れ、私自身として対応する。
二人は顔を見合わせると、もちろんですと返事をし、椅子に腰掛けた。
「何から話せばいいのか、どこまで話していいのか、正直言って分かりません。信じてもらえるかも分かりません。ーー私は、カリーナさんではありません。えっと……正確には、身体はカリーナさん本人のものだと思います。でも魂というか中身として、私はカリーナさんとは別の人格、別の世界で別の人生を生きた記憶があります。」
真っ直ぐに二人の顔を見ることができず、視線を下げて話をする。二人はどんな顔をしているのだろう。
不安に思いながら、次に発する言葉を考えていると、「はい。」とレティちゃんが応えた。
「お嬢様が、カリーナお嬢様であってカリーナお嬢様でないことは、把握しております。ですが、私に取ってお嬢様はお嬢様でございます。大丈夫です、お嬢様。」
止まったはずの涙がまた溢れてくる。
よかった。レティちゃんは味方でいてくれるんだ。よかった。
レティちゃんが続けて口にする。
「おそらく、カリーナお嬢様は無事に妖精になられたのだと思います。心配しないでくださいませ、お嬢様。」
?????
「妖精に……?なられた……?」
溢れた涙がキュッと止まる。今日の蛇口はとても忙しい。冷たい涙にあたたかい涙、果ては困惑の涙が出てもおかしくはない。
「お嬢様はカリーナお嬢様の日記をご覧になられましたか?」
レティちゃんは手のひらを上に向けてサイドテーブルをさした。
困惑したまま頷くと、レティちゃんが続ける。
「ご自身と似ている、と思われましたか。」
「なんでそれを……?」
まさに、そう思っていた。というか、レティちゃんは一体何の話をしているのか。困惑が悪化し思考が停止し始める。
「落ち着いて聞いてくださいませ、お嬢様。実は、カリーナお嬢様から先にお嬢様を大切に扱うよう申しつけられておりました。お嬢様は、自分は妖精になりたいから、この身体を自分と似た魂に委ねるつもりだ。いつになるか分からないがその時が来たら自分を大切にしてくれた以上にその相手を大切にするように。と。」




